橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

20××年、ノストラダムスの大予言はあるのか?

「1999年7月、空から恐怖の魔王が下りてくる…」

この予言が記された『ノストラダムスの大予言』が日本で刊行され大ベストセラーになったのは1973年。
多くの方、特に現在50歳以上の世代の方は、この書のことを鮮明に記憶しているのではないでしょうか。
この「人類滅亡」の予言は大流行し、当時の社会状況と相まって、多くの日本人に不安や厭世思想をもたらしました。

結局1999年7月になっても、人類が滅亡することもなく、いつも通りの7月が過ぎていっただけでした。
あれだけ世の中を騒がした予言自体が初めからなかったかのように、人々の記憶から消え去っていきました。
それでも私たちにとっては今でも1999年=ノストラダムスというくらい強烈に記憶の残る年号となっています。

実は不動産投資に対しても、いくつかの年号が大きな影響を与えるキーワードとして話題になっています。
その年に起こる事象が、地価の動向や賃貸市場に大きな影響を与え、しかもこれらはいわゆる予言などではなく、根拠に基づく推測とされています。
そこで今回は、不動産投資を検討するにあたり抑えておきたいいくつかの年号について整理してみましょう。

2019年問題

この年をピークに、日本の総世帯数が減少に転じると予測されています。
総務省統計局の人口推計(2017年3月)によると、日本の人口はすでに2011年に本格的に減少に転じ、以降毎年減少を続けていますが、その間も世帯数は増加し続けていたので、賃貸需要としては楽観視されていた向きもあります。

ところが2019年を境に賃貸需要に直接影響を及ぼす世帯数が減少を始めます。そして世帯数は同年の5,307万世帯をピークに2035年には4,955万世帯まで減少すると予測されています(国立社会保障・人口問題研究所、2013年1月推計)
そうなると賃貸住宅の入居者数も減少し続け、今後ますます空室率が高まっていくのではと懸念されているのです。

2020年問題

言わずと知れた「東京オリンピック」開催の年。
いま建設業界ではオリンピック特需による地価の高騰や、深刻な人手不足・建設資材の値上げによる建築費の高騰が問題になっていますが、オリンピックが終わると一段落、建設景気も後退し、都市部を中心として地価も下落するのではと言われています。

2022年問題

私がいた建設不動産業界では以前からオリンピック以上に話題になっていましたが、その頃はあまり注目されていませんでした。しかし最近メディアでもこの2022年問題が取り上げられるようになってきています。

この問題の発端は今から25年前の1992年にさかのぼります。
この年、三大都市圏等の農地の所有者(ここでは農家と呼びます)にとって衝撃的な法律が施行されました。
いわゆる「改正生産緑地法(1991年改正、1992年施行)」です。

同法により国は、特定市街化区域(三大都市圏等において宅地化を推進する地域として指定)内の農家に対して、所有する農地を、保全すべき「生産緑地」にするか、宅地化すべき「特定市街化区域農地」にするか二者択一を迫ったのです。

そして、「生産緑地」に対しては、30年間の営農を条件に、固定資産税等を著しく低い課税額(一般的に特定市街化区域農地の100分の1以下)とし、また相続税の納税猶予も適用することとしました。

例えば今、世田谷区の一等地に大きな畑が残っているのは、その土地が生産緑地で税金が格安だからなのです。(通常生産緑地にはそれを示す標識が立っています) 

当初、生産緑地には、全国では対象の農地のうち30%、東京都では53%が指定されました。
その広さは、国土交通省平成26年都市計画現況調査によると、2014年3月時点で全国では13,653ヘクタール(東京ドーム2,968個分)、東京だけでも3,329ヘクタール(同723個分)にもなります。

一方、「特定市街化区域農地」に対しては、建築や売却は自由にできるようにする代わりに、固定資産税等を宅地並課税として大幅に引き上げ、相続税の納税猶予も認めませんでした。

その結果、特定市街化区域農地の税金が増大し、多くの農家が住宅地として売却したり、賃貸住宅等の建設を行ったのです。
1992年以降の数年間はバブル崩壊後にも関わらず、特定市街化区域においてアパートの建設ラッシュが起きました。その時の活況は、当時ハウスメーカーにいた私も鮮明に覚えています。

そして2022年
前回の生産緑地法改正からちょうど30年目の年がやって来ます。
農家はその時点で、市区町村に対して生産緑地の買取請求をすることができます。そして市区町村が買い取らない場合は一定の手続きを経た後、生産緑地は解除されます。そうなるとまた新たな住宅用地等が次々に生み出されることになります。

もちろん買取請求をせず生産緑地の継続を選択する農家もいるでしょう。

しかし30年前と異なり、農家の高齢化、後継者不足、農業所得の減少など、営農を継続することが難しくなっているため、前述の広大な生産緑地について次回は生産緑地を選択しない割合が増加するのではとの観測があります。

アパート建設業者もその時を見据え、夢よもう一度とすでに地主への攻勢を始めています。もしアパート建設ラッシュが再来することになると、賃貸住宅の供給過剰による空室率の上昇や賃料の下落が懸念されます。

2025年問題・2035年問題

2025年に、全ての団塊の世代が後期高齢者年齢(75歳)に達しますが、日本人の平均寿命から計算すると、その10年後の2035年頃から死亡数が急激に増える「多死社会」に突入すると予測されています。このことも不動産投資に対して大きな影響を与えていくと考えられます。

というのは、現在も空き家の増加が問題となっていますが、多死社会においては、空き家が加速度的に増加すると予測されているからです。そして、それらの賃貸への転換や売却により、供給過多による空室率の上昇や地価下落につながるというものです。

今回はいくつかの年号をご紹介してきましたが、もちろん20××年が来たからといっても、直ちに大きな影響が発生するという訳ではありません。

例えば2019年問題。その年をピークに世帯数は減少しますが、減少率は前述の推計から計算すると、2035年までの16年間でマイナス6.6%、1年平均ではマイナス0.4%です。しかも地域差も大きく、東京都の世帯数増加は2025年まで続くと推計されています(国立社会保障・人口問題研究所2013年・1月推計)

ただし、上記の年号をキーワードとして抑えておくことは重要です。
そこからじわじわと不動産投資への影響が大きくなっていくことは避けられないでしょう。

元々、投資は良いリターンを期待できる反面、一定のリスクは付きものです。

不動産投資も同様ですが、予めリスクを想定し、早期に効果的な対応することにより、リスクを軽減・回避することも可能です。

ヒステリックにすべてがダメと言い切るのではなく、リスクを軽減する対策をよく検討、実行しましょう。
今後の状況は不動産投資に対して厳しくなっていくと思われますが、マクロのトレンドを抑えながら、個別に最善の対応を図ることが大切です。
不動産投資が成功するか失敗するかはそこにかかっています。

そのために、常に新しくかつ正しい情報を入手し、データを正しく捉え、正しい判断をすることが大切です。

20××年、本当に魔王は下りてくるのでしょうか?それとも何事もなく過ぎ去っていくのでしょうか?
もちろん私はノストラダムスではないので、予言はできませんが。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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