橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

住宅メーカーの海外進出から見えてくる日本の不動産市場の将来

今回はオーストラリアで見た住宅メーカー進出の状況をお伝えするとともに、そこから見えてくる国内の不動産の将来について考えてみたいと思います。

最近オーストラリアに行ってきました。
もちろん観光も楽しみましたが、もうひとつの目的は、現地で住宅・不動産事情を垣間見ることでした。

実は積水ハウスのオーストラリア現地法人のCEO高柳さんは私の会社員時代の同期で、彼が丸一日現地視察のアテンドをしてくれました。

オーストラリアでの住宅メーカーの事業展開

写真1:ワンセントラルパーク


最初に案内してもらったのは、シドニー中心部で同社が共同事業を進めているセントラルパークプロジェクト。

5.8haのビッグプロジェクトの中でも一際目立つのが、既に完成済みの『ワンセントラルパーク』。

この壁面緑化と空中庭園、巨大な反射板が異彩を放つ高層ビルは「Best Tall Building」賞など世界的な建築賞を3度も受賞しています。(写真1)

他にも築100年以上の建物の外観をそのまま活かしたホテルや、学生用住宅などが完成を目指して着々と工事が進められていました。

次にシドニーから北西に約35キロ走り次の目的地ケリービルに。

ここには南半球最大と言われている住宅展示場があります。(写真2)

写真2:南半球最大と言われている住宅展示場

広大な敷地には約50社110棟ものモデルハウス。
日本と異なり特徴的なのは、1社で複数棟のモデルハウスを出展している会社が多いこと。

高柳さんの説明によれば、オーストラリアでは、日本の住宅メーカーのように一邸ごとに顧客の要望や敷地条件に合わせた細かい設計はせず、モデルハウスの中でどれを建てますか?というような選び方をするとのこと。
見学したモデルハウスも平屋と2階建てがそれぞれ3棟ずつ計6棟。

オーストラリアの新築住宅面積は約200㎡が平均のようですが、現地では1区画の敷地面積が500m2強
(注)もあるので、ほとんどのモデルハウスはそのまま建ってしまいます。(注:但し近年は地価上昇に伴い200㎡前半の区画も出てきているとのこと。)

住宅展示場のスケールもさることながら、そこで驚いたことがあります。
ケリービル展示場には、一条工務店と住友林業(実際には同社が資本出資している現地住宅会社)のモデルハウスがあるのです。(写真3)

またケリービルへの道中にはいくつかの積水ハウスの分譲予定地が。(写真4)
ゴルフ場に隣接した高級アパートメントや戸建て分譲の予定地とのこと。

更にオーストラリアには大和ハウスも事業展開していて、日本の住宅メーカーの進出を目の当たりにします。

写真3:一条工務店のモデルハウス


写真4:積水ハウス分譲予定地

海外へ進出する住宅メーカー

今、多くの住宅メーカーが海外で事業展開をしています。
私が住宅業界に就職した1980年代には、住宅産業は最もドメスティックな業界と言われ、原材料の調達は別として、海外に市場を求めることは想像もしていませんでした。

【表】住宅メーカー各社の海外進出状況

社名国名主な事業
大和ハウス米国、豪州、中国、ベトナム、メキシコ
インドネシアなど15か国
開発、分譲、賃貸、工業団地
流通施設など
積水ハウス米国、豪州、中国、シンガポール開発、分譲、新築請負、賃貸など
住友林業米国、豪州分譲、現地法人に資本参加
セキスイハイムタイJV事業にて新築請負
パナホーム台湾、マレーシア新築請負など
一条工務店米国、豪州分譲
大東建託マレーシア、米国ホテル、不動産ファンドに出資
※各社ホームページより筆者作成

ではなぜ今、多くの住宅メーカーが海外展開を進めているのでしょうか。

理由のひとつは国内の住宅市場の縮小。

平成元年に167万戸だった住宅着工戸数は平成27年には92万戸まで減少し、今後も人口減少は続き、住宅市場がますます先細りになるのは目に見えています。各社が新たな市場を求めて海外に目を向けるのは必然と言えます。

また海外には『人口の増加』と『人口ボーナス』の魅力があります。

労働力人口増加率が人口増加率よりも高くなる時期を人口ボーナス期といいます。

この時期には経済が成長し消費活動も活発になるため、住宅の購買意欲も高まるといわれています。
そのため人口ボーナス期にある国に進出することは、とても重要なことなのです。

当然人口の増加数、増加率も重要です。

ちなみにオーストラリアの人口増加率は約1.6%(OECD・2012年)で、OECD加盟国の中でも第2位。
アメリカ、中国、東南アジア諸国も人口増加は続いています。

さらに、海外の多くの国では不動産価格は上昇を続けているため、デベロッパーが土地を購入しても損切りする恐れは小さく、利益が確保できるだろうという安心感もあります。

住宅メーカーが進む道

今年は多くの住宅メーカーが最高益を更新しましたが、実際に売上の内訳を見ると、予想以上に国内の住宅事業離れが進んでいることが分かります。

上記のように各社は海外事業に力を入れたり、住宅以外の分野への展開を進めています。

業界最大手の大和ハウスは、29年3月期の売上、純利益をそれぞれ3兆5,129億円、2,935億円と発表しましたが、その内住宅メーカー本来のコア事業(戸建、賃貸、マンション、住宅ストック)の売上は49.4%と50%を切っており、その他の事業(商業施設、事業施設、ホームセンター、ホテル他)の売上が逆転しています。

また業界第2位の積水ハウスも売上2兆366億円の内、コア事業は約58%で、その他が約42%、特に国際事業は1,821億円と9%弱に達しています。

更に同社は30年1月期には国際事業の売上について前期の2倍以上である4,000億円を目指すとしています。

投資家も住宅メーカーの動向に注意を

もはやハウスメーカーは、事業の軸足が国内での住宅事業から海外事業や他分野・関連分野へとシフトしています。
この方向性は今後も続くでしょう。

また脱国内住宅事業に乗り遅れた企業は今後厳しい経営を余儀なくされると予測します。

私たち一般投資家も今後の国内市場を見極めるためには、大手住宅メーカーの事業展開に注目することが大切です。

そして不動産投資においても、現在よりもなお海外投資も視野に入れながら検討をしていく必要性が増していくのではないでしょうか。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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