橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

FP的不動産投資の基本的考え方③~落とし穴にはまらないために~

前回の「FP的不動産投資の基本的考え方②~不動産投資を始めるためのポイント~」に予想外の反響があり、他のポイントも知りたいとのリクエストも多くいただきました。

そこで今回から不動産投資基本的な考え方を、実際に物件購入にあたってのノウハウを中心にお伝えしたいと思います。

不動産投資にはさまざまなセールストークがあり、どれも魅力的に聞こえます。
でも本当に信じ切っても大丈夫でしょうか?

これらを実際の賃貸経営ではどのように捉えれば良いかを解説し、これから不動産投資を考えている皆さんにとって、少しでも参考にしていただきたいと思います。

必要な自己資金の目安は?

「頭金0からのマンション経営」というフレーズ、よく聞きませんか?

不動産投資はレバレッジが利用できるスキームという理屈は正しいです。
ただし、当たり前のことですが、借りたお金は返さなければいけません。

ここで押さえておきたいのは、返済比率です。
家賃に対する返済の割合のことで、例えば毎月の家賃収入が50万円、毎月返済額が30万円なら返済比率は60%です。
返済比率が低いほど、当然安全性は高くなります。

それでは返済比率は何%以下にすべきでしょうか?
私は、返済比率は原則50%以下が理想と考えています。

50%以下なら、単純計算で入居者が半分でもローンを返済できるので、赤字になりません。

実際はローン返済以外に、管理費(またはサブリース費用)、光熱費、租税公課、修繕費、その他維持費(消防、自治会、消耗品費など)などの支出があるので、ローン返済比率が50%に収まっていても、残りが全て手残り額にはなりません。
これらの諸費用は通常、賃料の25~30%を見込みます。

計算式では
手取り額=賃料-(ローン返済+諸費用)

返済比率が50%、諸費用30%の場合
手取り額=賃料-(50%+30%)=20%
となり、賃料の20%が手取り額になります。

さらに、空室、賃料下落、金利上昇、予想外の修繕費なども収入を押し下げます。
その中でも年間の収支を赤字にしないためには、このくらいの余裕は欲しいところです。

そのためにはどうすれば良いか?
それは、借入額を返済比率が50%に収まる額に抑え、そこから必要な自己資金を割り出すことになります。
計算式で表すと
必要な自己資金=総事業予算(物件価格+諸費用)-借入額(=返済比率が50%以下になる額)

なお、ここでは借入年数も考慮しなければいけません。

同じ借入額でも、返済年数が長ければ返済額が少なくなるので返済比率も下がりますが、物件に見合った返済年数を考慮する必要があります。

新築物件で返済年数30年ならともかく、築25年の中古物件で返済年数25年では返済年数が明らかに長すぎます。

仮に築25年の物件の場合は、物件の状態をみながら、返済年数を10年~15年として返済比率を計算し、適正な借入額を割り出します。(※実際の借入れ時の返済年数は別の考え方も取り入れます)

そのように考えると、土地、建物を含め不動産投資をする場合、自己資金0で返済比率を50%に抑えることは不可能に近いはずです。

一般的に、頭金0(またはほとんど無し)で投資できるのは、元々土地を所有していて工事費のみを借入する場合です。

また、原則をはずれて返済比率が50%を超えても投資して良いのは、

・すでに健全な不動産投資を十分な規模で行っていて安定収入がある
・資産背景が十分で、リスクコントロールが容易にできる
・他の収入が十分にあり、節税をメインにして行う


など投資家個人の属性が極めて高い場合です。

もし必要な自己資金が足りなければ、その不動産投資は見合わせるべきと考えています。

まずは返済比率を50%以下にするための自己資金を確保しましょう。

借りやすい銀行よりも金利の低い銀行を選ぶ

相談者の中には、他の銀行に断られたけれど最後にOKが出たので物件が買えると喜んでいる人がいます。でも聞いてみると、金利は3%以上だといいます。中には4%以上の金利で借入れている人もいます。

ここで考えてください。

今は史上最低金利の時代です。属性や物件が良ければ1%を切る融資も可能で、低金利の融資を引き出している投資家もたくさんいます。
その中で、高い金利で貸出しする銀行は、その分リスクの高さを見ているのです。

金利の高い銀行は審査期間も短く、不動産会社も手っ取り早い(手離れが良いとも言います)ので勧めてきます。
反対に金利の低い銀行は、その分審査も厳しく時間もかかります。

しかし不動産投資は、長期の経営です。金利の差は経営の成否に必ず影響してきます。

まずは、極力低金利の融資を受けられるような条件を整え、物件購入に臨むことをお勧めします。
今の低金利時代は、やはりその恩恵を受けることに大きな意味があります。

そのためには、まず自分の属性を知り、それに見合った投資方法を見極めてからスタートする必要があります。

節税よりもキャッシュフローが優先

「不動産投資は損益通算による節税ができます」
これもセールストークとして良く使われていますね。

例えば、サラリーマンの不動産所得が赤字になれば、給与所得から赤字分を差し引くことができるので、確定申告をすると所得税の還付が受けられ、翌年納付する住民税も少なくなります。

ただし、人によりその効果は著しく異なります。

ここで、2人のサラリーマンの節税効果を比較してみましょう。

条件は2人とも同じで、家族は妻(専業主婦)と子供2人(一般扶養)、社会保険料は年収の10%、他の控除なしとして計算します。

不動産所得が100万円の赤字だった場合

Aさん 年収1,500万円   節税額…約43.6万円(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)
Bさん 年収500万円    節税額…約15.1万円(同上)

不動産所得が同じ赤字額でも、両者の節税額の差は3倍近くになります。
Bさんは不動産所得が大きく赤字でも、節税額は最高でも15.1万円で足切りです。
(※条件により翌年以降に繰り越しができる場合があります)

まずは、ご自身の源泉徴収票を見て、課税所得額と所得税額を確認しましょう。

翌年も年収や扶養などの条件が大きく変わらなければ、そこに記載されている所得税額が最大還付されるおおよその金額になります。(住民税は不動産所得の10%が目安)

特に節税のメリットが大きいのは、創業経費が多くかかる1年目です。
2年目からは不動産所得も赤字幅が小さくなり、節税額も思ったほどではありません。

さらにその後は申告所得が黒字に転換してしまうケースもあり、そうなると節税どころか、所得税率に応じて納税額が増大してしまいます。

対応策としては、事業計画は1年分だけではなく、長期の事業計画書を確認した上で投資判断をしましょう。

不動産投資はビジネスです。
肝心なのは、ビジネスとしてきちんと成り立つか、すなわち収支がきちんとプラスになっているかということです。
収支がトントンや赤字だけど税金の還付分だけ儲かりますというのは、ビジネスとしては最悪です。

株式投資でも、企業の業績は必ずチェックしますね。利益の出ない企業に投資をしようという人は稀です。
収支自体が危うい物件に投資はしない。まずはきちんとキャッシュフローが得られる物件を選び、キャッシュフローが得られる方法で投資をしましょう。

次回に続きます。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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