橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

FP的不動産投資の基本的考え方④~不動産投資を成功に導くために~

前回は、物件の購入のノウハウとして、以下のテーマを取り上げました。
・必要な自己資金の目安は?
・借りやすい銀行よりも金利の低い銀行を選ぶ
・節税よりもキャッシュフローが優先

今回はその続きです。

預貯金と比べて高利回り?

「今は預金金利も最低水準の時代。銀行に100万円預けても金利が0.01%なら1年の利息はたったの100円。不動産投資で利回り7%なら定期預金の700倍の運用です!」
よく聞くセールストークで、確かに理屈は間違ってはいません。

ただし、ここには2つの落とし穴があります。
ひとつは前々回お伝えように、表示されているのは表面利回りということです。実質利回りで計算すると、ざっくりと1~2%ダウンします。またその利回りも、経年により徐々に低下していきます。

そしてもうひとつ忘れてはいけないのは、定期預金は必ず約束された利息がもらえますが、家賃は入居がないと入ってこないということです。1戸のマンション区分投資でその1戸が空いてしまったら収入は0。
ローン返済や維持費を差し引くと、かえって預貯金が減ってしまうことになります。

そもそも自己資金での投資を除けば、0.01%の定期預金と比べてもほとんど意味がありません。
比較するのでしたら、不動産以外の投資(株式、投資信託、保険等)と比較するべきです。

キャピタルゲインではなくインカムゲインを優先する

「出口戦略をうまくとってキャピタルゲインも確保しましょう」
今後値上がりしそうな魅力的なトークです。

投資物件の価格は、一般物件とは異なり、賃料から収益還元価格を計算して求めるケースが多く、昨今の東京中心部のように中古物件でも賃料が上昇すれば価格が上がることもあります。

ただ、不動産価格は水物です。上がるか下がるかは、たまたまのタイミングであることが多く、そのタイミングはプロでもなかなか掴めません。キャピタルゲインは多くの場合結果でしかありません。
不動産価格の読みはプロでも難しいのが実情なのです。

また今後賃貸物件の受給バランスの崩れにより、賃料はほとんどの地域で下落が予測されており、そうなると売却価格も下がることになり、ますます売却益を得ることは難しくなるでしょう。

さらに譲渡税の計算では、仮に購入価格よりも安く売却しても、所有期間中に建物の減価償却があり、その分取得価格が低くなるために、結果的に譲渡益が生じてしまう場合もあります。
つまり、損して売ったのに税金を払う、という泣きっ面に蜂のようなことが起こり得るのです。

キャピタルゲインを期待して売却で一喜一憂するよりも、賃貸物件は長く保有し上手に経営すれば、継続的な安定収入が期待できます。

利用価値は残るのですから、この際資産価値や売却益などということは副次的なものと捉え、出口戦略としては、キャッシュフロー累計が物件価格の下落幅をどの程度上回っているかを検討し投資判断をしましょう。

手取り額の目標を決め、適正な規模の計画で

賃料収入は、家計収支の安定や将来の資産形成に役立ちます。
不動産投資においては、ライフプランや自らの属性に見合った目標を立てることが大切です。

例えば、セカンドライフのために年金だけでは毎月8万円不足すると予測した場合、まずは賃貸経営で毎月8万円の手取り額を得ることを目標にします。
経営状況を確認しながら、そこで目標の変更があれば再設定し、次の計画に進みましょう。

誰もがメガ大家さんになれる訳でもないし、最初からメガ大家さんを目標にする必要もありません。
目的もはっきりしないまま規模の大きさだけを狙うと、本来の投資目的からも外れ、事業計画が破綻する危険性が高まります。
不動産投資以外にも言えることですが、何のために投資をするのか、今一度目的と目標の確認をし、それに見合った投資方法を検討しましょう。

不動産を取り巻く環境を理解しておく

わが国では2008年頃から人口減少は始まっており、世帯数も2019年をピークに減少に転じると予測されています。入居者数の減少が続くと入居競争も激しくなります。
このような環境下で賃貸経営を始めるわけですから、投資家もその覚悟を持つ必要があります。
ただし、私は、不動産投資は取り組み方によってはローリスク投資になると考えています。
それにはマクロのトレンドを理解しながら、個別に最善の対応を図ることが大切です。
安全志向、正しい知識と情報の入手、経営努力によりそれが実現します。

まずは本業で稼ぐ

まだ年齢も若いため、年収も低く自己資金もほとんどない方から、レバレッジを利用して不動産投資を始めたいという相談を受けることがあります。
そのような場合、まずは本業を頑張り、収入を増やすようお話をしています。
不動産投資相談を受けている私が言うのも違和感があるかもしれませんが、現実は、賃貸収入を増やすよりも、本業で収入を増やしていく方が容易なのです。

収入を上げ、預貯金を増やしてから、その中から必要な投資資金(種銭)を元に不動産投資を始めても遅くはありません。
というよりも、その方が不動産投資の成功率は高くなります。なぜなら、一般的に不動産投資は、融資と切り離せない事業だからです。そのため、金利などの融資条件はとても重要で、長期経営に大きく影響します。

金融機関は属性の高い人に対しては低金利でお金を貸しますが、属性の低い人にはリスクを見ます。属性を上げることは、金融機関等の交渉には当然有利な条件となり、結果的に不動産経営の安全性も高まります。
そのためにも、不動産経営をしなくてもきちんと生活ができる素地を作っておく必要があるのです。

また現役会社員やOLは、給与収入で生活が十分成り立てば、不動産のキャッシュフローを生活費に回す必要はありません。
そのキャッシュストックで繰上げ返済をすることにより、返済期間を短縮したり、返済額を低減することもできます。

そして、それがうまく回ると、下図のような正のスパイラルが生まれるのです。

まとめ

本来不動産投資はギャンブルではありません。
それでも世の中に不動産投資に失敗する人が後を絶たないというのは、不正確な情報のもとに思い込みで判断する人が多いのではないかと思います。

不動産投資を検討している方には、リスクを理解し、正しい情報を入手し、正しい判断で取り組み、ぜひ成功に導いていただきたいと強く思います。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

他のコラム著者も見てみる

不動産投資家によっても違いは様々。
LIFULL HOME'Sが厳選した不動産投資家や専門家のコラムから色々な不動産投資スタイルを吸収してライバルに差をつけよう!

金井規雄

シリーズ連載: アメリカ不動産投資のすべて

最新コラム: なぜ、アメリカ不動産投資なのか?

LIFULL HOME'S PRESS

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

最新コラム: 新たに始まる「住宅ストック循環支援事業」は特色のある制度に

田中圭介

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

最新コラム: 【No.20】 各国の不動産投資の現状 〜ベトナム編 その 4 ホーチミンの不動産で狙うべき場所は?

佐藤益弘

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

最新コラム: 未公開物件・掘り出し物件の不思議

菅井敏之

シリーズ連載: 誰も教えてくれなかった「銀行」~その傾向と対策~

最新コラム: 【第四回】必ず行っておきたい、銀行との「コミュニケーション」

LIFULL HOME'S不動産投資フェア

シリーズ連載: 2017/9/23 LIFULL HOME'S不動産投資フェア出展企業インタビュー

各出展企業インタビュー記事はこちら

LIFULL HOME'S マーケティング部 データ編集担当

シリーズ連載: ユーザーの本音から探る不動産投資

最新コラム: 将来性を秘めた街 『都心』エリア

鈴木 学

シリーズ連載: 海外物件の管理

最新コラム: 第一回「海外では管理しやすい物件を選ぶのが鉄則」

石渡 浩

シリーズ連載: 不動産投資に有益な融資を受けるための知識

最新コラム: 第4回 税引後キャッシュフロー偏重の盲点 銀行は決算書のここを見る(後編)

北野 琴奈

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

最新コラム: 民法改正と賃貸経営、ここに注意!

猪俣淳

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

最新コラム: 土地値の大型物件は出口で儲かるか?

右手 康登

シリーズ連載: CPM®流「相続・不動産経営 実践術」 右手 康登のコンサル「みぎからひだりへ」

最新コラム: 島国の中での常識 VS グローバルスタンダードを知ることの重要性

末永 照雄

シリーズ連載: 失敗しない不動産投資の法則

最新コラム: 新興国の将来利回りに期待する。ベトナム不動産投資(3)

寺尾 恵介

シリーズ連載: 悩める投資家への「目からウロコが落ちる」アドバイス 誌上チャレンジ面談

最新コラム: 7.不動産投資の「やめどき」はいつ?

伊藤 英昭

シリーズ連載: 伊東英昭氏の不動産投資コラム

最新コラム: vol.13 マンションと高級車

不動産投資・収益物件を検索するなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】賃貸経営[マンション経営・アパート経営]をお考えなら、まずは掲載中の投資物件[投資用マンション・売りアパート・一棟売りマンション]を地域や価格帯、会社で検索して、価格や想定利回りで絞り込み!気になる投資物件を見つけたら物件の周辺情報を調べたり、収益シミュレーションを使って実際の運用をイメージ出来ます。不動産会社へはメールか電話でお問い合わせ・相談が可能です(無料)。不動産投資による資産運用をお考えなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】

ページトップへ