橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

住宅メーカー秋の陣 大和ハウス VS 積水ハウス ~最新賃貸住宅見学会レポート~

今年も早いもので残り3カ月を切りました。
多くの企業も9月の中間決算期を通過し、これから後半戦に入っていきます。

この季節は、住宅メーカーの現場見学会が各地で開催され、今後の受注獲得に向けての顧客囲い込みが盛んに行われます。
特に賃貸住宅をリードする業界トップ2の大和ハウスと積水ハウスはこの時期、豊富な着工件数を活かし全国一斉の見学会を開催しています。

長年住宅業界に身を置いた筆者も、特に上位2社の動向は気になるところです。
今回、見学会を視察し、両社が提案する賃貸住宅のトレンドをお伝えします。今後の不動産投資のヒントにしていただければと思います。

今年の見学会は、大和ハウスが『賃貸住宅経営 全国一斉見学会』、積水ハウスが『シャーメゾンフェスタ2017』と銘打ち、両社とも同じ⑨月8~10日に全国で開催しました。
元々賃貸住宅の全国一斉開催の見学会は、積水ハウスがより早く開催していました。しかし近年は大和ハウスも賃貸住宅においても積水ハウスに対抗すべく、同様のイベントをぶつけるようになりました。
当初は両社の開催日程は異なっていましたが、ここ数年は開催日も合わせ、まさに雌雄激突といった状況です。

今回見学したのは埼玉西部にある4会場。
訪問順に
(1)大和ハウス 朝霞市 商品:セジュール・オッツ(3階建て賃貸住宅)
(2)積水ハウス 朝霞市 商品:べレオ3(3階建て賃貸住宅)
(3)積水ハウス 所沢市 商品:セレブリオ…(デイケア=通所介護施設)
(4)大和ハウス 所沢市 商品:セジュール・オッツ(3階建て賃貸住宅)

まず大和ハウスは?

大和ハウスは3階建て商品『セジュール・オッツ』の販売が好調です。今回も(1)、(4)の2会場とも同商品。(写真1・朝霞会場)

写真1

構造は軽量鉄骨造なので、耐震性は十分確保しているのですが、積水ハウスの重量鉄骨造と比較し、顧客の判断は分かれるところ。
以前はコスト重視の提案が多く、外観に物足りなさを感じていましたが、最近は外観とともにエクステリアにも力を入れ、全体のイメージアップも図っているようです。
特に(1)の会場は、エントランスはオートロックに加え、風除室も設けセカンドエントランスは自動ドア。エントランスの奥には植栽をデザインし落ち着きと高級感をうまく演出していました。(写真2)

写真2

ただし(1)と(4)の会場では、特にエクステリアの印象が大きく異なり、物件による提案の差を感じました。
細かいところでは、玄関ドアにはカード式キーを採用、洗面カウンターに4口コンセントはとても重宝、玄関のコートハンガー部分の壁にはパネルを貼り水滴対策をするなど、細かい配慮が入居者の心をくすぐります。ユニットバスも以前からファミリータイプには1616タイプを採用。広々として他物件との差別化になるでしょう。床仕上げはフローリングが標準。積水ハウスのクッションフロアと比較して高級感がありました。半面トイレ、キッチンはシンプルで若干物足りなさを感じました。

写真3

(1)の会場には宅配ボックスが設置してありました。(写真3)これからの時代、喜ばれるスペックですね。
また同社は、以前から警備会社との連携によるセキュリティシステムにも注力しており、やはり両会場とも備えられていました。

一方の積水ハウスは…

同社は現在3、4階建賃貸住宅に力を入れていますが、(2)の朝霞会場は3階建の売れ筋商品『べレオ3』
外観のデザインは重厚感もあり、高級賃貸住宅といったたたずまい。(写真4)

写真4

同社はシャーメゾンガーデンズという独自のエクステリアの基準を設けていて、賃貸住宅のブランディングを計るとともに、経年美化を目指しています。そのコンセプトは将来の賃貸住宅の差別化、競争力の維持という意味では素晴らしいと感じています。
ただし、一定の基準を満たす意識に囚われすぎて融通が利かないのか、個別事情に対する細かい配慮に欠けるケースが見受けられます。この会場でも全体の印象は素晴らしいものがあるにもかかわらず、エントランス横の1階入居者の洗濯物が丸見えなのが気になり残念でした。

なお外装のメンテナンスについては、積水ハウスに若干の分があると思われます。
同社は業界に先駆けて、外壁の30年メンテナンスフリーを実現し、修繕費支出の抑制を図っています。
外壁パネルについては、各社とも以前から塗料の改良等によりある程度長期的なメンテナンスフリーを実現していましたが、ネックになっていたのは外壁パネルの間の目地の劣化でした。積水ハウスは、外壁塗料の更なる高耐久化を進めるとともに高耐候シーリング目地を採用し、目地部分も含め長期のメンテナンスフリーを実現したところはさすがです。

設備では、キッチンにはIHヒータを採用。(写真5)ユニットバスは1418タイプに半円型のワイド浴槽。トイレにも手すりやスマホが置けるカウンターなど細かい配慮が。
ただ前掲の通り、高級賃貸住宅にしては床仕上げがクッションフロアだったので、ここはフローリングにして欲しかったところでした。

対面キッチン

写真5(会場と同タイプのIHヒータ搭載対面キッチン・積水ハウスカタログより)

(3)の会場は同社が注力している介護事業の物件でデイケア(通所介護)施設。(写真6)

写真6

比較的小規模な物件でしたが、立地も良く、事業者とのマッチングが上手く進められたようです。
ただ建物は完成していましたが、エクステリアが工事中で完成形が見られなかったのは残念でした。

今後の土地活用では、賃貸住宅だけでなく他の事業とのマッチングニーズも増加していくと考えられますので、各社の対応力も注目したいところです。

なお、両社とも床の遮音性能については優れていると言えます。
重量床衝撃音は同等(LH-50~55)、軽量床衝撃音は大和ハウスがより高い遮音性能床(LL-40、積水ハウスはLL-50)をラインナップに加えていますが、オプション仕様で金額がアップするので打合せが必要です。

今後の両社の受注競争が楽しみです。

不動産投資にも住宅メーカーのノウハウを

日頃から数多くの投資物件を見ている筆者も、やはり住宅メーカーの提案力や建物の品質は、総じて後発アパート専業会社や地場の建築会社を大きく超えていると改めて感じました。

不動産投資を考えている皆さんも、たとえ住宅メーカーで建築をしなくても、プランニングやレイアウトの考え方、デザインや設備の選択、また賃貸経営に対する考え方について参考になることは多いと思います。
これから不動産投資において生き残りを図るためにも、最新の情報を取り入れることをお勧めします。
次回は来春同様の見学会が開催されますのでご参考にしてください。

不動産投資に関しても両社の影響は小さくないと考えています。
今後も両社には、業界のリーディングカンパニーとしての牽引を期待しています。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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