橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

『2022年問題』はソフトランディングするのか?

現在は活況を呈しているように見える不動産市場ですが、わが国の地価は、今後中長期的には下落していくと予測されています。
不動産価格は特に需給バランスの影響が大きく、一等地といわれる一部の商業地等を除き、特に地方や郊外での住宅地等の値下がりは続くでしょう。

さらに追い打ちをかけているのが、いわゆる『20××年問題』と言われる諸問題。

・2019年問題
日本の世帯数がピークとなる年。以降世帯数も減少に転じ、住宅需要を押し下げると予測。

・2020年問題
東京オリンピック開催年。 オリンピック以降景気の悪化と地価の下落が懸念されている。

・2025年問題
団塊の世代が全て後期高齢者となる年。日本では多死時代が進み、大量の売り地や空き家が生まれると予測。

など、いずれも不動産市場に対してネガティブな影響を与えるトピックスです。
その中で最近メディアでも取り上げられているのが『2022年問題』
詳細は、以前本コラムでもご紹介したのでお読みいただければと思いますが、おさらいのために、簡潔に解説します。

1992年に施行された改正生産緑地法により、主として三大都市圏等の農家は、特定市街化区域内に所有する農地を、以下のどちらかにするよう選択を強いられました。

(1)『宅地化すべき農地』=特定市街化区域内農地
建築や売却は自由にできる代わりに、固定資産税等を宅地並課税として大幅に引き上げ
相続税の納税猶予も適用なし。

(2)『保全すべき農地』=生産緑地
30年間の営農を条件に、固定資産税等を著しく低く課税
相続税の納税猶予も適用あり。

その結果、生産緑地に指定された農地は、現在も全国に約13,442ヘクタール(東京ドーム約2,860個分)あると言われています。(国土交通省 平成27全国都市計画現況調査)

そして2022年、数年後には前回の改正から30年目の年がやってきます。
前回生産緑地を選んだ農家は、その時点で再度上記(1)か(2)の選択をしなければいけません。

しかし現時点では、自らも高齢になり後継者もいないために、宅地化を選択する農家が増えるだろうと予測されています。そして税金が跳ね上がった土地は、そのままでは維持できず、売却不動産が市場に大量に放出され、その結果不動産価格にも大きな影響を与えるだろうと推測されているのです。

というのが前回の法律改正の概要と予測される影響でした。

しかし国も影響の大きさを重視し、今年になり新たな手を打ちました。
農地に関わる法律を一部改正したのです。

4月28日に成立、6月15日に施行されたのが、「都市緑地法等の一部改正」です。
その中で生産緑地に関わる主な改正の内容は、

(1)都市緑地法の緑地に農地が含まれることに。生産緑地を市民緑地として無償貸与も可能に。
(2)市区町村が生産緑地の最低面積を300㎡に引き下げ可能に。
(3)生産緑地地区内に農産物加工所、直売所、農家レストラン等の設置が可能に。
(4)特定生産緑地制度が創設。新たな期限を10年とし、再指定も可能とする。

この改正では、従来の都市農地に対する考え方が180度変わっています
以前は、特定市街化農地は「宅地化すべき」と捉えられていましたが、今回の改正で特定市街化農地は「保全すべき農地」へ転換したのです。
つまり、今までは、特定市街化区域に農地は不要であり、すべて宅地として活用しようという考え方だったのに対し、改正により、特定市街化区域にも公園や緑地が必要であり、農地を緑豊かなまちづくりや防災に活かそうという考え方になったのです。

そうなると、現在生産緑地を所有する農家の選択肢は以下の4通りとなります。

(1)生産緑地を継続する。
(2)生産緑地の買取り申出を行い、宅地化した上で土地の有効活用や売却をする。
  (これが2022年問題で最も深刻な影響が出ると言われている選択)
(3)特定生産緑地の指定申請を行い、10年間引き続き生産緑地とする。
(4)特定生産緑地の指定を受け、市民緑地として緑地管理機構に貸与する。

従来は(1)と(2)の選択肢しかありませんでしたが、今回さらに(3)と(4)の選択肢が増えました。
つまり、今回の改正により、10年間の特定生産緑地という新しい道が生まれたのです。
農家は30年間の営農に縛られず、まずは10年間農業を続けながら、次の手を考えることができるようになります。
(3)を選択する農家が多ければ、2022年以降も生産緑地の宅地化は徐々に進行するため、心配されている宅地の一斉大量供給もある程度緩和されるでしょう。
また(4)の選択が増えれば、住む人にとって潤いのある緑豊かな環境を提供でき、大きな社会貢献にもなります。

国は2022年問題のソフトランディングを図っています。
確かに今回の改正により、2022年問題の衝撃は当初より緩和されることが期待できます。

しかし今後不動産価格の下落傾向が止まる訳ではありません。
不動産投資にあたっても大切なのは、常に新しく正しい情報を入手し、それを基に正しい選択をし、行動することです。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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