橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

平成30年度の住宅政策から見えてくる不動産投資の方向性

1月22日に通常国会が召集されました。
安倍総理が施政方針演説で訴えた「働き方改革」「改憲」等が焦点となると言われていますが、今国会では、来年度の予算案の審議も行われます。
各省の要求がそのまま国会を通過するかが注目されますが、自民党圧勝、野党迷走の現在の状況では、予算案は早期に成立すると考えられます。

そこで、今回は来年度における住宅政策について、わかりやすく解説をします。
もちろん現段階では予算「案」なので、不測の事態等で100%通るかはまだわかりませんが、その内容を知ることにより今後の国の住宅政策の方向性を理解することができるのではないでしょうか。
そして不動産投資においても、国の住宅政策を押さえておくことは大切だと考えます。

まず住宅政策策定の前提として、わが国の住宅ストックの現状について確認しましょう。なお文章内の数字(データ)は、国土交通省が1月22日から3月にかけ全国で順次開催する「省エネ等良質な住宅・建築物の取得・改修に関する支援制度等説明会」の資料から用いています。

現在の住宅ストックの姿

全国で人が居住する住宅は、約5200万戸あります。住宅ストックの総数は約6,063万戸で、差引800万戸以上の住宅が空き家になっています。

それでは、住宅が800万戸以上も余っている日本では、これ以上住宅を新しく建てる必要はないのでしょうか。

その答えは、YESでもあり、NOでもあります。
確かに800万戸以上もの住宅が余っているくらいですから、住宅の量自体は充足しています。

しかし人が長期にわたって安心して居住できる住宅が足りているとは言えません。
住宅性能の基本的かつ重要な要素である
◎耐震性
◎バリアフリー
◎省エネ
の現状について見てみると下表の通りです。

住宅ストックの現状

約5,200万戸の内、何も手を加えなくても問題ない良質な住宅ストックは、わずか約200万戸しかありません。
残りの約5,000万戸の住宅については、上記の性能を満たすためには、何かしらの改善策が必要になります。

住宅生産行政の方向性

それには、主に建替えリフォーム2つの方法があげられます。
国は、耐震性のない約900万戸については建替え等による対応、それ以外の住宅についてはリフォーム等による性能の向上を推進しようとしています。

つまり、耐震性能のアップのためには建替えもやむなしとしながらも、従来の建替えにより古い住宅を品質や性能が高い新築住宅に置き換えてきた手法を、住宅余剰時代においてはリフォームによる既存住宅の性能の向上にシフトしようという考えです。

実は日本では他の先進国と比較して、リフォーム投資の割合が著しく低い水準にあります。
住宅投資に占めるリフォーム投資の割合の国際比較を見てみると、日本はわずか26.7%にすぎません。
この割合はイギリスでは55.7%、フランスは53.0%、ドイツに至っては78.9%を占めています。
他の先進国では、住宅はリフォームをしながら長く大切に使っていくという思想が根付いており、日本の住宅においてもフローからストックへの転換が図られていると言えるでしょう。

また、パリ協定を踏まえた地球温暖化対策として、住宅等建物の高い省エネ化は、我が国の必須の課題でもあり、リフォームによって既存住宅の性能を高めCO2削減を進めなくてはいけません。

3項目の取組み

以上のような現状を踏まえて、国土交通省は3項目の取組みを公表しました。ポイントは以下の通りですが、いずれも補助制度を設け、取組みの推進を図っています。

1.良質な住宅ストックによる新たな循環システムの構築
■長期優良化リフォーム推進事業による既存住宅の性能の向上と長寿命化の支援
■「安心R住宅」が4月にスタート(内容は前回のコラムをご参照ください)
■IoT技術を活用した次世代住宅の普及に向けた取組みをステナブル建築物等先導事業として推進

2.建築物の省エネ化の推進
■エネ法から建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)への移行(平成29年4月)による省エネ基準の明確かつ厳格化
■建築物の省エネ化に向けた取組み
・サステナブル建築物等先導事業
・既存建築物省エネ化推進事業
・ZEH(ゼロエネルギー住宅)の推進(経済産業省、環境省、国土交通省3省連携による)

3.木造住宅・建築物の振興
■良質な木造住宅等の供給促進に向けた取組み
・地域型住宅グリーン化事業
・サステナブル建築物等先導事業
■木造住宅等の施工技術体制強化・施工技術力強化向上を図る取組み
■合法伐採木材等の流通・利用の促進に向けた取組み
・グリーンウッド法

上記の取組みを簡単にまとめると、

1.今後住宅の性能はさらに高めていく必要がある
2.そのための手法として、新築住宅に対し高い基準を設けることはもちろん、リフォームによる性能向上も図っていく。
3.性能基準を満たす住宅については、補助制度の創設や拡充、税金の優遇等により支援をする。
ということになるでしょう。

不動産オーナーが考えるべきこと

このような住宅の性能向上に向けた取組みは、当然今後の賃貸住宅にも影響を及ぼしていくと考えています。
住宅の性能はどんどん上がっているのに、賃貸住宅は旧態依然とした低品質でお粗末ということでは入居者も離れていきます。
今後は、賃貸住宅も、大事に手入れをしながら、長く使っていくという流れになっていくと考えています。
そのため、不動産投資にあたっても高品質・高性能の建物を保有し経営することは、重要な経営計画の要素となるでしょう。
賃貸オーナーも、時代の方向性をきちんと把握し、また国の補助制度も上手に利用しながら、入居者ニーズを取り込んでいく努力が必要です。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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