橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

今度は「かぼちゃの馬車」から資金計画のあり方を考える

なぜ「かぼちゃの馬車」のオーナーはスルガ銀行を信用したのか

前回のコラムでは、スマートデイズが運営する「かぼちゃの馬車」問題から「サブリース」を取り上げましたが、その後3月16日に金融庁がスルガ銀行に対して融資の審査について報告徴求命令を出したとの報道がありました。
「かぼちゃの馬車」のオーナー約700人のほとんどがスルガ銀行から融資を受けていました。1月からスマートデイズからの賃料支払いがストップし、返済に窮するオーナーも出ているようです。

前回も書きましたが、ここでスルガ銀行が良いとか悪いとかについて論ずる気はありません。
なぜなら、スルガ銀行の融資スタンスは、スマートデイズの物件だから特別の計らいをしたわけではなく、以前から全くぶれていないからです。これはあくまでも同行の通常の事業スタイルです。
今回の問題においてスルガ銀行に落ち度や不正等があったかどうかは、今後自主検査や金融庁の調査が進めばはっきりするでしょう。

ただし、「かぼちゃの馬車」のオーナーが、スルガ銀行の融資で不動産投資を始めた要因についてはひとつ思い当たることがあります。
昨年5月、金融庁の森長官が講演の中で、他行に先駆けてニッチな分野を開拓し、収益を上げているビジネスモデルを持っているとしてスルガ銀行を評価したという報道がありました。実はその報道を聞いたときに、私も含め不動産の専門家の多くは首をかしげていました。

スルガ銀行のビジネスモデルとは、まさに今回問題になっている「かぼちゃの馬車」への融資と同じだからです。今は高い収益性があっても、将来このモデルは崩れるのではないかと危惧しており、それが思ったよりも早い段階で問題になってしまったというのが感想です。
当然、他の地銀もよく分かっていて、スルガ銀行の後を追わなかったのは当然のことと思います。
ただ憶測ですが、実態を知らないオーナーが検討の段階で、「金融庁が評価している銀行」ということを聞かせられれば、当然スルガ銀行のことを信用したのではないでしょうか。
その意味で、スルガ銀行に自信を与え、そのビジネスモデルを更に推し進めさせてしまった金融庁にも道義的な責任はあるのではと考えます。

さて前置きが長くなりましたが、今回のコラムでは、「かぼちゃの馬車」の事業計画を分析しながら、より安全な資金計画の考え方についてお伝えします。

融資金利は収支を大きく左右する

資金計画の中で重要なのは、自己資金と融資金利です。
このふたつの条件により、不動産投資の収益性や安心感が大きく変わります。

ここで2つの融資金利を比較して考えてみましょう。

〔設定〕不動産投資物件を1億円で購入。借入額 1億円 借入期間 30年

【ケース1】 融資金利2.0%
【ケース2】 融資金利4.5%
ケース1は条件の良い事案の融資金利です。実際には1%を切るケースも少なくありませんが融資後の金利上昇も考慮しています。
ケース2はスルガ銀行の一般的な融資金利です。実際の融資金利は案件により異なることもあります。

それぞれの返済額は以下の通りです。
【ケース1】 毎月返済額 36万9,619円 年間返済額 443万5,428円 総返済額 約1憶3,306万円
【ケース2】 毎月返済額 50万6,685円 年間返済額 608万0,550円 総返済額 約1憶8,240万円      
ケース2がケース1よりも毎月返済額は約13.7万円、総返済額は約4,934万円も多くなります。
また、ケース2の場合、借入額を毎月返済額で割ると197.4カ月=約16年5カ月。
銀行側から見ると、ざっくりとではありますが、約16年5カ月で元本の1億円を回収できる計算になります。30年のうち16年5カ月分をきちんと返済してくれれば、 その後は万が一回収できなくても、銀行は元が取れているということです。(実際には諸経費等があるので更に回収期間はかかりますが、2つのケースの比較のため簡易的に考えます)
対して、ケース1の場合は約22年6カ月と6年以上長くかかることになります。
金利の低い銀行は、オーナーにはそれだけ長く健全な経営を継続してもらわなければならないので、審査が厳しくなるのは当然です。
しかし、オーナー側も低金利で借入ができれば、手取り額の増加や繰上げ返済の余力につながり、双方にとって好ましい経営になります。

返済比率の目安を検証する

不動産投資の判断基準として、返済比率があります。これは賃料に対する返済額の割合のことですが、望ましい返済比率は50%以下と考えています。

上記のケースで返済比率を50%に抑えるための必要賃料を逆算すると、ケース1では約69万円以上、ケース2では約101万円以上となります。賃料がこの水準以上であれば賃貸事業を進める条件を満たしていると言えます。

ところが「かぼちゃの馬車」の利回りは約8%であったといいますから、仮に1億円を投資した場合、年間賃料は800万円、月額賃料は約66.6万円となります。
ケース1の場合でも必要賃料69万円に足りません。返済比率は36.9万円/66.6万円→55.4%となり、自己資金投入の検討等を行う必要があります。

そうなるとケース2はたいへん危険なレベルと言えます。
返済比率は50.6万円/66.6万円→76%にもなります。
これでは、スマートデイズが破綻しなくても賃貸事業としてはまず成り立ちません。維持経費、将来の賃料下落、修繕費支出等により、早い段階で返済に支障をきたす恐れがあります。

なお、「かぼちゃの馬車」の利回りは約8%だったということですが、利回りを高く見せるために相場より相当高額な賃料を設定している悪質なケースもあります。
オーナー側としては、提示された利回りや賃料設定を鵜呑みにするのではなく、それらが本当に適正な水準かどうかを自ら調べることが重要です。

不動産投資に重要なこと

確かに今回の「かぼちゃの馬車」問題については、さまざまな報道を見ると、詐欺的で酷い話だと思います。
それでも銀行の立場では、たとえオーナーの利益が0になっても返済さえしてくれれば問題ないのです。
つまりオーナーが「収入-ローン返済を含む支出=0」の状態を30年間続けたとしても返済さえ滞らなければ銀行にとっては何ら問題ないのです。
反対に不動産投資を考えている方は、銀行や不動産会社のためではなく、自己のために投資を行わなければなりません。そのためには、ただ返済できれば良いということではなく、いかにキャッシュフローを残せるかを真剣に検討する必要があります。
なぜならキャッシュフローを残すことが不動産投資を行う大きな目的だからです。

資金計画のポイントを確認しましょう。

■返済比率は50%以下を原則とする
■審査は厳しくても金利が低い銀行を選ぶ
■賃料相場は自らも調べる

不動産投資は、不安を感じながら行うものではなく、リスクを少しでも減らし、ゆったりとした気持ちで行うべきものです。
そのためには計画段階で専門家のアドバイスも入れながら事業計画を検証することが大切です。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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