伊藤 英昭の不動産投資コラム

シリーズ連載: 伊東英昭氏の不動産投資コラム

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

vol.9 「共有」の理想と現実

「共有」とは共同所有のこと。これの反対は「単有」すなわち単独所有の事である。

「単有」の最大の特徴は、その所有物の使用(自ら利用すること)、収益(人に貸して収益を得ること)処分(売却や処分すること)が単独の意思決定でできることである。その代わり、すべて自分単独でリスクを背負うことになる。

「共有」は複数で所有しており、複数でリスクを分散することになる。また共同でお金を出し合うことにより、単独では得られないスケールメリットを得られる場合もある。要は相互に助け合えるのが特徴である。

不動産に例えると、一戸建て住宅の所有は単有(共有の場合もあるが)マンションは共有(区分所有法により独立した住居を単独で所有できることになっているが)と考えるとわかりやすい。
一戸建て住宅はすべて一家の大黒柱により意思決定できる。
マンションの場合、住んでいる居住空間は自分のものだが、建物は皆くっついており、物理的に切り離すことができない。廊下・階段・エントランスなど皆の共同所有なので、自分の部屋以外のことは何事も「皆のものなので皆で決めましょう。皆でお金を出し合いましょう。」ということになる。いずれも新築当初はほとんど何も問題がないのだが、年数が経過し、修繕、建替えとなってくると不具合が生じてくる。
一戸建ての場合、修繕、建替えなどは一家の大黒柱の「よし、我が家も建替えよう」という鶴の一声と、その一家の懐勘定で決定する。

img09_1マンションの場合は「古くなってきたけど皆でどうするか話し合いと多数決で決めよう」という事になる。修繕の費用はマンション所有者全員で将来に備え、積み立てを行っているが、多くの場合、それで大規模な修繕や、建替えの費用は賄いきれないのが現状である。賄えない費用は所有者皆で割り勘となる。そこで問題が生じる。皆、それぞれ懐事情や考え方が異なるのだ、蓄えの多い人、所得の多い人、反対に蓄えのない人、所得の少ない人、住宅ローンの残っている人、完済した人、また、自分で使用している人、他人に貸している人、関心のある人、ない人、若夫婦からお年寄りまで皆運命共同体である。このようなことから、マンションは、なかなか意思統一が図りづらい事が多い。本来、共有である不動産のマンションの一部屋に所有権を認めた「区分所有法」が、結果的に権利関係を複雑にしているのだろう。

現在、社会問題となっているマンションの耐震偽装問題。当然ながら許してはならないことであり、一日も早いマンション購入者への対応、解決が望まれるが、建替えという選択肢を考えると、問題の根は複雑であり非常に深い。

【このコラムの著者】

伊藤 英昭

ナレッジバンク株式会社 代表取締役
CPC認定者・FP協会認定講師/一級ファイナンシャルプランニング技能士/宅地建物取引主任者/不動産コンサルティング技能登録者

■略歴
昭和44年 青森県出身
平成6年
公認会計士・税理士、山田淳一郎事務所(現税理士法人山田&パートナーズ)入所後、グループ会社である株式会社ユーマック(現TFP不動産コンサルティング)に出向。
おもに土地資産家に対する相続対策、底地借地の権利調整、物納、不動産投資、収用に伴う行政との交渉、買換え、土地活用、空室相談、固定資産税の軽減など、土地資産家の持つ、ありとあらゆる問題解決のコンサルティングを行う。また日本特有の借地、底地の問題に着目し、底地専門に投資する私募ファンドの組成に携わり、ファンドマネージャーの一員として1年間に13%の高配当を実現。 コンサルティング業務の傍ら、中立公正な不動産知識情報を配信するサイト「ホームナレッジ」を作成、運営し、コンテンツの内容が評価され多くのポータルサイトにコンテンツを提供する。 実務経験を生かし、FPの講師や金融機関・不動産会社などに対するコンサルティングセミナーや勉強会を数多くこなした。 平成14年同社取締役就任、平成16年8月同社退社平成16年11月ナレッジバンク株式会社を設立、代表取締役に就任

■講演
りそな銀行、埼玉りそな銀行、三井住友銀行、野村證券、いちよし証券、東京海上火災保険、積水ハウス、兵庫県宅建協会、日税不動産、NPO法人日本地主家主協会 など

■著書
大和證券資産管理読本、税会計法務の羅針盤(大蔵財務協会)共著、FPマニュアル96~98年(きんざい)共著 など

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