寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の「失敗」を分析する。

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

4.経費率15%という、“超”適当な予測。

予定通り行けば、このコラムは年明けすぐに掲載されるそうです。
新年あけましておめでとうございます。引き続き「失敗コラム」をよろしくお願いします。

第1回のコラムで「不動産投資の失敗」とは何かということについて書いておりまして、失敗の定義を「想定していたより悪い結果になること」としました。自分の予測のもとに物件を購入・運用し、予測通りの収益が得られてこそ、不動産投資が成功したと言えます。
株式や為替よりも確実性が高いのが不動産投資の良いところですから、予測より悪い結果になっていたとしたら、債務不履行や破産にならなくても失敗だと思うのです。

そこで今回のコラムは「想定していたより・・・」の代表格である「経費の読み誤り」をテーマにしてみました。

■経費を読み誤るのは、無知の証明。

経費と同じように読み誤りやすいものとして、「入居率」や「家賃相場」があります。
これらの数字は不動産投資の成否に直結しますし、サブリースなどを利用しない限りは購入前に確定していることがありません。もちろん事前に入念な調査をしますが、時には読みが外れることもあるでしょう。
もし入居率や家賃相場を読み誤ってしまった場合は、低予算で物件の価値を高めていったり、前の所有者以上の営業活動を行うことで何とかリカバリーをしていく訳です。

以上のことから入居率や家賃相場は


・購入前に確定している訳ではないので、予測が外れることがある。
・予測が外れた場合、リカバリーできる可能性がある。

ということが分かると思います。

一方、経費率を読み誤ってしまうケースはどうでしょうか。
不動産投資における経費としては、以下のようなものがあります。


・退去時の原状回復費用 ・共用部や受水槽の清掃費 ・管理手数料 ・入居時の広告費
・共用部の水道光熱費 ・エレベータのメンテナンス料 ・消防点検などの法定費用
・固定資産税 ・都市計画税 ・除草や除雪など環境を維持するための費用

結構たくさんありますが、これらの経費は物件を購入する前から支払うことが確定している上に、ほとんどの費目でだいたいの費用も決まっています。
税金以外はある程度の工夫と努力で減らすことができるかもしれませんが、過度な削減が物件の競争力を低下させる結果につながることはお分かりかと思います。

従って経費については、


・購入前から費目や金額が決まっており、正確な予測が可能。
・費目の見落としや読み誤りがあっても、リカバリーするのは難しい。

という、入居率や家賃相場とは逆の特徴であることが分かります。

最初から分かっている費用でしたら、しっかり把握した上で購入判断をすべきですね。
こういうところで失敗してしまうのは本当にバカらしく、要するに「不動産投資について知識が足りませんでした」と認めていることに他なりません。

■オーナーは消費者ではない。

「支払が決まっている経費なら、購入前に全てオープンにするべきだ」という意見もあると思いますが、現在の日本ではこういった経費は固都税など一部の費目を除いて「重要事項説明」の対象ではありません。
聞かれなければ開示しなくても良いという訳ですが、これは不公正でしょうか。

例えば自動車を購入する際に、販売店の人から「この自動車を購入すると、毎年の自動車税が●万円と、3年ごとに車検費用と自賠責保険の更新に重量税、さらに駐車場を借りた場合はその料金と、運転された場合はガソリン代が掛かります」というような説明を聞くことはありません。
「そんなの常識的に分かっていますよね」というのが世の中の共通認識なのでしょう。守られるべき「消費者」という立場でも、知っていて当然という常識はあるのです。

ましてや、「投資家」「事業者」として自らがお金を儲けるために購入する不動産において、発生する費用を全て(聞かれてもいないのに)開示してもらえると考えるのは、甘いと言わざるを得ません。

■費目と相場を知っていることが大切。

とはいうものの、良い物件ほど足が速いものです。

「昨年発生した全ての経費を、月別・費目別に一覧にした資料をいただけますか」なんていう要求をしていては、他の投資家に物件を取られてしまいますので、実際の現場では「こういった費用がこれくらい掛かるだろう」という予測のもとに、収支シミュレーションを行うことになります。

ただ、不動産投資本などを読んでいると「経費率は15%程度を想定しておく」なんていう、アバウトなだけでなく不正確な情報が書かれていたりしますので注意が必要です。経費というのは、業種に関わらず「思ったよりも掛かるもの」ですから、書籍の情報を鵜呑みにしてはいけません。

経費の読み誤りが起こりやすい費目について、いくつか説明しておきたいと思います。

1.固都税 
これは重要事項説明や評価証明を見れば一目瞭然ですので、読み誤りは基本的に発生しないはずですが、確認しないまま購入してしまうケースが後を絶ちません。
木造アパートばかり購入していた投資家さんが初めてRCマンションを購入したような場合などは特に、確認不足で痛い目を見ることがあります。賃料単価が安い地方の一棟RCマンションでは、固都税「だけ」で年間家賃収入の10%を超えるような物件も珍しくないからです。

2.エレベータ
メンテナンス費用と作動のための電気料金で、毎月7~10万円程度の費用が掛かります。1~2部屋分の家賃は、エレベータにそのまま消えていくようなイメージです。戸数が少ないのに階数が高い物件だと、結構シャレにならない経費率です。

3.除雪
寒冷地の物件において、除雪費用は「通常のランニングコスト」です。1回あたり数万円の料金が発生して、それが年間何度あるかを把握して下さい。こういった情報は地域の賃貸管理会社に聞くと分かります。
また、豪雪地域では「ロードヒーティング」という、電気やガスで駐車場の雪を溶かすという驚異的な設備を備えている物件もあります。ロードヒーティングは光熱費が安かった時代に作られていることが多いので、これらの価格が高騰している時代には経営を大きく圧迫することになります。大型物件では、冬期4ヶ月で20万円以上の料金が掛かる場合もあります。車1台あたり、毎月数千円の経費は痛いですね。

4.広告費
賃貸仲介会社に支払う広告費。払わないでいることも可能ですが、この費用を削減することは大きな収入減を招く結果となるので、前オーナーと同じ基準で支払続けることになることが多いです。
現地確認の際、ちょっとだけ時間を使って近隣の不動産会社にヒアリングをするだけで、広告費の相場を正確に把握できます。このひと手間を惜しんではいけません。よく「家賃の●ヶ月分」のような言い方をしますが、月数よりも絶対額を重視されますので、賃料が安い物件ほど、相対的に多くの広告費が掛かることになります。

賃料単価は低く、築年数が比較的浅いRCマンションの場合、大きな修繕がなくても経費率が30%を超えるような物件もあります。
冒頭でお話した通り、経費は買う前でもかなり精度の高い予測ができる反面、買ってからは劇的に削減することができません。何となく利回りが高くて儲かりそうな物件ほど、経費率についてシビアに予測するクセを付けておくことを強くお奨めします。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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