寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の「失敗」を分析する。

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

12.それで営業活動のつもり??

HOME’Sさんの「失敗コラム」シリーズ。おかげさまで、連載1周年を迎えました。毎月お読みいただき、ありがとうございます。
1年(12回)の予定で書いていましたが、失敗のパターンというのは思ったより多いもので、もう少し続けさせていただく予定です。
今回のコラムは、しばらく購入系のお話が続いたので「運営面」について採り上げてみましょう。

■作れば売れる時代は終わった。

普段からブログなどをお読みいただいている方はご存じかと思いますが、ぼくは地方の一棟ものアパートやマンションを空室が多い状態で安く購入し、いろいろと工夫をして高稼働に持って行くという投資スタンスを採っています。
空室が多い原因はいろいろあります。立地や間取り、設備などの「ハード面」が原因になっていることもあれば、「埋まっていてもおかしくないのに、なぜか空きが続いている」といこともあります。

入居率を高めるためには、費用対効果の高い対策から進めていくのがセオリーです。
例えばTVモニター付きのインターホンやウォシュレットなどの洗浄便座は、単価の割には入居者の満足度が高いですし、キッチンパネルやアクセントクロスなど、「色」を売りにしてお部屋の魅力を高めるといった手法を実践されている方も多いでしょう。これも低コストで効果が高い施策です。

しかし、ほとんどコストが掛からない対策が他にもありまして、それが「管理会社や客付け会社に、しっかりとオススメしてもらう」ということです。
どんなに魅力的な物件になったとしても、何かの理由でオススメしづらかったり、印象が薄くてなかなか思い出してもらえなかったとしたら、全ての努力は水の泡。

そして、長いこと賃貸経営をやっていて分かったのですが、残念ながら自分のアパートやマンションが毎日しっかりと募集されている訳ではありません。面と向かってそう言われることはありませんが、「埋めなきゃいけない部屋は、他にもたくさんある」のです。

どんなに素晴らしい商品を作っている会社でも必ず営業部門があることからも分かるように、大家さんもしっかり営業活動をする必要があるということですね。良いものを作れば売れる・・というのは、高度経済成長期までの話です。

■進んだ他業界に見習う。

大家さんの営業活動といえば、マイソクを配ったりメールで空室情報を流したり、時々管理会社を訪問して入居付けのお願いをしたりといった活動をイメージされるかと思いますが、果たしてできることはそれだけでしょうか。

管理会社や仲介会社は、メーカーで言えば「販売代理店」のようなもの。
自動車のディーラーのようにひとつのメーカーのみを取り扱うのではなく、家電量販店のようにあらゆるメーカーの商品を扱っているお店に形態が似ています。メーカーの営業マンは、自社の商品を少しでも優先して販売してもらうために、量販店に対して様々なアプローチをしている訳ですね。
家電に限らず、スーパーマーケットなどの小売業と食品メーカーの関係や、病院と製薬会社の関係なども同じでしょう。

こういった営業マンのお仕事ぶりを研究することで、大家さんの営業活動のヒントになるのではないでしょうか。営業マンの仕事を大家さんに当てはめて考えてみましょう。

1.自社商品の説明

機能や使い方の説明だけでなく、「どのような点が他社の商品より優れているのか」「以前と変わったところはどこなのか」「想定される質問と、その回答」など、実際に商品を売る人の立場を理解した商品のPRをします。
お店の営業時間外に商品説明会のようなものを開催してもらうことが多いのですが、関係が薄い取引先の場合はその時間を取ってもらうこともできないので、担当者を一人ずつ捕まえて個別に説明したり、分かりやすい資料を自作して手渡すなどの努力が必要です。

どのメーカーのエアコンでも涼しくなるのと同じく、どのアパートにも人は住めます。
違いは微妙なところにしかありませんが、その微差が勝敗を分ける世の中です。しっかりと自分の物件の「微差」を伝え、ライバル物件に勝っていかなくてはなりません。

2.スムーズな商品供給

営業マンにとって、欠品による機会ロスは絶対に避けなければなりません。
せっかく販売店が売ろうとしてくれても、物理的にそれができないことで成果につながらなかった場合、その見込み客に商品が売れないというだけでなく、その後の販売活動にも悪影響を与えるであろうことは想像に難くありません。

大家さんの場合も同様。鍵の手配ができなかったために、大切な内見を逃してしまったり、条件交渉の連絡が付かなかったことで、せっかくの見込み客が他物件に流れてしまうような失態は許されません。
仲介会社の努力をムダにする行為は商品の欠品と同じで、「その部屋が決まらないだけでは済まない」のです。

3.販促活動

期間限定の割引や特典のプレゼントを企画したり、チラシやPOPなどの販促ツールを作成するのは、通常メーカー側の仕事です。
対顧客に対しての販促活動だけでなく、一定以上の売上に対してインセンティブ(販売奨励金)を提供するような提案も、メーカー営業マンの腕の見せどころです。
販促活動とは、「いかに売りやすい環境を作るか」ということでしょう。

賃貸業において、主体的に販促活動を行っている大家さんはまだ少数です。
優秀な管理会社さんの中には、POPやモデル家具の設置などをしてくれたり、コストパフォーマンスの良い販促活動の提案をしてくれるところもありますが、本来は商品を供給する側である大家さんの仕事であることは、他業界を見れば明らかです。

4.人的関係の強化

熱意と人柄を武器に、販売店の社員一人ひとりを自分の味方にしていく活動も、営業マンにとって大事なことです。現場に出ている社員だけでなく、販売店の方針を決める社長や店長にも食い込んでいかなければなりません。
営業をテーマにしたビジネス書を読んでみると「攻略先のキーマンに会ってニーズをつかむ」というくらいならまだしも、「本人より奥さんに気に入られる」「相手の趣味を聞き出し、プライベートで一緒に楽しむ」のような、ちょっとどうなの?と思うようなノウハウも見かけます(笑)

ただ、管理会社・仲介会社との関係を強めるために、一般の営業マンほどの行動をしている大家さんなど皆無です。山ほどあるノウハウの、ほんの一部を実践するだけで絶大な効果があるのではないかと思うのは、ぼくだけではないと思います。

■とてつもない改善の余地がある。

大家さんは、管理会社に対しては一定の管理報酬を毎月支払っているので、何となく「自分がお客さん」という意識でいるのが普通ですが、管理報酬は管理の対価として支払っているものであり、入居付けに限定すれば他業種と同じで完全な成果報酬であることを忘れてはいけません。
仲介させてあげているのではなく、「こちらが仲介をお願いしている」のです。

賃貸物件の共有元(=メーカー)でありながら、何の営業活動もしていない大家さんが大半。空室情報を流したりマイソクを配る程度で、そこそこ優秀な活動とされています。
でも、家電メーカーから突然、「新型4Kテレビの在庫があります」というFAXが1枚だけ送られて来てテレビが売れるか・・ということを考えれば、いかにレベルが低いか分かりますよね。

逆にいえば、大家さんの営業活動はとてつもない改善の余地があるということです。
他業種を見習い、自分にできそうな施策から採り入れて実践していくことで、劇的な入居率改善ができるでしょう。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

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