寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の事業化計画

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

6.自己資本比率を上げる方法

前回のコラムで、事業者として融資を受け続けていくために大切な「自己資本比率」についてお話しました。普通の会社に求められている自己資本比率の基準は、サラリーマン投資家として規模を拡大していく過程において満たすには難しく、ある程度の規模まで増やした後で改善をしていくことが多い・・というところまで説明したと思います。
前回の記事を読む

今回は自己資本比率編の後半ということで、実際に数値を上げていくための工夫についてお話します。

◆物件を買うと自己資本比率は下がる

自己資本比率は「買い続けていくと下がる」ということを、前提知識として知っておく必要があります。
逆に新しい物件を買わないで返済だけをしていれば、通常は債務が減ってキャッシュフローが現預金として貯まっていくので、自己資本比率は上がります。

コラムを読まれているほとんどの方は、物件をどんどん増やしていきたいと考えているでしょうから、
自己資本比率は意図的に上げていかないといけませんね。
例を挙げて説明してみましょう。

自己資金2千万円を持っている人が、そのうち1,000万円を投じて1億円の不動産を購入したとします。
1億円の借入は金利2%の30年返済。
拠出した1,000円は諸費用として全額経費化したものとすると、購入直後の資産と負債のバランスは以下のようになります

資産現預金 1,000万円
不動産 1億円
負債長期借入金 1億円
純資産1,000万円
自己資本比率10%

自己資本比率10%は普通の会社でいうと「ちょっと危ういな」という水準ですが、
これ以下のバランスで投資をされている方も多いでしょう。
この物件からは、年間200万円のキャッシュフローが得られるとすると、5年後の資産と負債は以下のように変動している予定です。

資産現預金 2,000万円
不動産 8,500万円
負債長期借入金 8,720万円
純資産1,780万円
自己資本比率16.95%

不動産資産が減少しているのは減価償却のためで、築年数や構造によってこの数値は異なってきますが、5年経過しても自己資本比率は約7%増加しただけでした。
普通の投資家さんであれば既に物件を買い増しているはずですが、仮に5年経過したこの時点で同じような投資を行ったとします。

資産現預金 1,000万円
不動産 1億8,500万円
負債長期借入金 1億8,720万円
純資産780万円
自己資本比率4.0%

一棟買っただけで、劇的に自己資本比率が減りました。サラリーマンのうちは、
このような水準でも一定規模までは買い続けることができますが、事業者であれば難しいでしょう。
自己資本比率の自然回復を待つだけでは、規模の拡大は難しいということがご理解いただけたかと思います。

◆含み益を引き出すための「売却」

自己資本比率を改善するための、一番良い手段が物件の売却です。
上記の事例で、新しい物件を購入した直後に1棟目の物件を売却した場合を考えてみましょう。
しっかり管理運営を行ってきたことと低金利の環境が幸いして、売却時の諸費用を差し引いた手残りが1.1億円となる価格で売却できたとします。
売却価格から当該物件の残債務を一括返済したあとの資産と負債は、以下のように変化しました。

資産現預金 3,280万円
不動産 1億円
負債長期借入金 1億円
純資産3,280万円
自己資本比率24.7%

BSに掲載される、資産としての不動産は単純に買値と償却(資本的支出があればそれが追加)で計算されます。
割安な不動産を購入しても、逆に買った瞬間損をするような割高なものをつかまされてしまっても、保有している間は「買値=帳簿上の資産」です。

キャッシュで買えば不動産資産が増えた分だけ現預金が減少しますし、
融資を受ければ不動産資産が増えた分だけ負債が増加します。
不動産を購入する行為によって、BS上の純資産がその場で増えるということはあり得ないのです。

ですから、キャッシュフローを潤沢に生んでいる不動産であっても、
適切な時期に売却をしていくことは決算書上での大きなメリットとなります。
含み益が本当の利益となることで自己資本比率が増加し、債務と現預金の比率も著しく改善しますので、金融機関から見た自社の評価は売却前とは大きく異なるものになります。

銀行は定期的に、融資先が保有している不動産資産を再査定しているのですが、「決算書を中心に査定をする」というのは、金融庁が決めたことなので、どの銀行も絶対に守らなければなりません。
相場をきちんと把握している専門の人が、
「持っている不動産を売ったらいくら残るのか」という査定をしてくれたらいいのですが、
実際には自分で不動産鑑定士を雇って査定をしてもらい、その結果を融資の審査資料として添付する程度のことしかできません。

◆何でも経費化が良い訳ではない

太陽光パネルを購入しての節税対策がここ数年流行っています。確かに納税額は減るものの、
決算書の見栄えは悪くなってしまうので注意が必要です。

融資を受けてパネルを購入すると、その分の負債が増加します。
この場合の借入やリースは「資産を買う」ためのものであり、諸費用的な支出を除けば
「現預金が減ったり、借入が増えた分」=「資産が増えた分」となるので、普通の不動産物件を購入した時と大きな違いはありません。
しかし、今年の3月まではパネル代金の100%、その後も50%を一括で償却することが認められています。
一括償却とは、要するに「資産と利益を減らす行為」なので、自己資本比率を大きく下げる行為となります。

1.現預金が増えたり、借入が増えたりした。
2.1とほぼ同額の資産が増加したのでBSバランスに本来は変化がない。
3.しかし、一括償却で資産は消えてしまい負債のみが残る。

ということですね。節税も大事ですし、ぼくも太陽光パネルは複数所有していますが、
圧倒的に良い決算書を武器に融資を受け続けるのでしたら、過度な取り組みは危険かもしれません。

次回は、自己資本比率のほかに決算書上で重要な指標について解説します。

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

他のコラム著者も見てみる

不動産投資家によっても違いは様々。
LIFULL HOME'Sが厳選した不動産投資家や専門家のコラムから色々な不動産投資スタイルを吸収してライバルに差をつけよう!

金井規雄

シリーズ連載: アメリカ不動産投資のすべて

最新コラム: なぜ、アメリカ不動産投資なのか?

橋本秋人

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

最新コラム: 『2022年問題』はソフトランディングするのか?

LIFULL HOME'S PRESS

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

最新コラム: 新たに始まる「住宅ストック循環支援事業」は特色のある制度に

田中圭介

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

最新コラム: 【No.20】 各国の不動産投資の現状 〜ベトナム編 その 4 ホーチミンの不動産で狙うべき場所は?

佐藤益弘

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

最新コラム: 未公開物件・掘り出し物件の不思議

菅井敏之

シリーズ連載: 誰も教えてくれなかった「銀行」~その傾向と対策~

最新コラム: 【第四回】必ず行っておきたい、銀行との「コミュニケーション」

LIFULL HOME'S不動産投資フェア

シリーズ連載: 2017/9/23 LIFULL HOME'S不動産投資フェア出展企業インタビュー

各出展企業インタビュー記事はこちら

LIFULL HOME'S マーケティング部 データ編集担当

シリーズ連載: ユーザーの本音から探る不動産投資

最新コラム: 将来性を秘めた街 『都心』エリア

鈴木 学

シリーズ連載: 海外物件の管理

最新コラム: 第一回「海外では管理しやすい物件を選ぶのが鉄則」

石渡 浩

シリーズ連載: 不動産投資に有益な融資を受けるための知識

最新コラム: 第4回 税引後キャッシュフロー偏重の盲点 銀行は決算書のここを見る(後編)

北野 琴奈

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

最新コラム: 民法改正と賃貸経営、ここに注意!

猪俣淳

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

最新コラム: 土地値の大型物件は出口で儲かるか?

右手 康登

シリーズ連載: CPM®流「相続・不動産経営 実践術」 右手 康登のコンサル「みぎからひだりへ」

最新コラム: 島国の中での常識 VS グローバルスタンダードを知ることの重要性

末永 照雄

シリーズ連載: 失敗しない不動産投資の法則

最新コラム: 新興国の将来利回りに期待する。ベトナム不動産投資(3)

伊藤 英昭

シリーズ連載: 伊東英昭氏の不動産投資コラム

最新コラム: vol.13 マンションと高級車

不動産投資・収益物件を検索するなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】賃貸経営[マンション経営・アパート経営]をお考えなら、まずは掲載中の投資物件[投資用マンション・売りアパート・一棟売りマンション]を地域や価格帯、会社で検索して、価格や想定利回りで絞り込み!気になる投資物件を見つけたら物件の周辺情報を調べたり、収益シミュレーションを使って実際の運用をイメージ出来ます。不動産会社へはメールか電話でお問い合わせ・相談が可能です(無料)。不動産投資による資産運用をお考えなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】

ページトップへ