寺尾 恵介の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資の事業化計画

HOME'S不動産投資コラム

12.【最終回】事業化のQ&A

1年間続いたコラムシリーズ「大家さんの事業化計画」もいよいよ最終回になりました。今回は、読者さんから頂いた質問に回答していこうと思います。
思えば、「投資スタンス編」「失敗編」と続いてコラム連載も3年以上続きましたね。長い間お読みいただきありがとうございます。

Q:法人化のタイミングはいつがベストでしょうか。こちらは年収○○○万円のサラリーマンで、昨年の不動産所得が○○○円でした。税率を考えるとどのくらいの保有規模から、法人化のメリットがありますか?

A:大家さんの法人設立についての書籍やコラムのほとんどを、税理士さんが執筆されています。そのためメインの論点は「税金」になり、上記のようなご質問につながる訳ですが、ぼくの考える法人化は「事業化への最初のステップ」です。サラリーマン大家として構築できる資産規模以上のものを望むのであれば、税務的なメリットがなくても早めに法人を設立しておくべきかと思います。
ぼく自身が法人の設立タイミングが遅くて失敗した経緯については、コラム第7回に書かせていただいた通りです。

Q:自分の勤務する会社が副業を禁止しているので、法人を妻名義で作ろうと思うのですが問題ありませんでしょうか。

A:今から設立する法人は「資産管理法人」ですので、属性的には個人と同じです。おそらくは質問者さんの属性を使って不動産を購入されたいはずですので、代表者は奥様であっても出資はご自身がする(法人のオーナーとなる)ことが要件になるはずです。
問題がないかどうかを最終的に判断するのは融資を受ける銀行ですので、既に案件があるのでしたら取引銀行に確認しながら法人設立を進めていけば良いかと思います。

また、事業化を考えているのであれば、ご自身が代表者にならない形式はお薦めしません。奥様が形だけの代表者ということで事務所に出て来ることもないような会社を、事業者として扱ってもらえるかどうかというと、これはちょっと難しいのかなと思います。
事業者というのは、正々堂々と世の中に「私どもの会社は、賃貸業をしています」と宣言できるものではなくてはなりません。

Q:事業者として、普段から銀行との付き合いが必要だというお話がありましたが、具体的にはどのくらいの頻度で金融機関と接触をしているのでしょうか。

A:これについては自分以外の事例が分かりませんが、ぼくの場合は融資を受けている全ての金融機関に対して、年4回の会社概況報告をしています。年度初めは昨年度の決算書を提出して状況を説明、その後3ヶ月ごとに「試算表(決算の途中経過のようなもの)」を見せながら情報交換するような感じです。
ただ、ぼくの場合は区分マンションを頻繁に購入しているため、金消契約や決済で金融機関と接触する頻度が元々多いです。購入案件について打合せをしながら、自社の状況を説明したり銀行の方針や人事について伺うことが多いです。

Q:法人を設立するとなると税理士さんに経理面をお願いすることになると思いますが、良い税理士さんの選び方を教えて下さい。

A:ネットで何でも検索できる時代ですが、ぼくは「信頼できる人からの紹介」というのを重視していまして、今の顧問税理士さんも紹介いただいた方です。士業の方はもちろん職人さんから美味しいお店情報まで、やはり紹介ルートはハズレがありません。

また、ご自身にとっての税理士さんの役割が何かは明確にしておいた方がよいでしょう。1円でも多く節税がしたいのか、最新の情報を教えてほしいのか、自分の意向を酌み取ってフレキシブルな対応をしてほしいのかで、適任かどうかも変わってくるからです。
ぼくは過度な節税を望んでいないことと、そういった情報は日頃から自分で収集しているので、まさに「意向を酌み取ってくれる」タイプの税理士さんに顧問をお願いしています。

Q:個人で数棟を購入後に法人を設立しました。個人的な事情でしばらくは新規の物件購入ができないのですが、法人の売上規模を増やすためにも個人で持っている物件を法人に売却した方がいいでしょうか。

A:この話を結構簡単にされる方が多いですが、物件の法人移行はかなり難易度の高い作業です。物件を売却した際には新たに不動産取得税が発生しますし、金融機関も貸出先が個人から法人に変わるのです。新設法人に対して同条件で融資が付くかは、かなり怪しいところですよね。
個人の家賃収入の一部を法人に移す方法は、管理委託や家主代行、サブリースなどいくつか手法がありまして、法人へ移しても問題がないとされる金額割合も異なってきます。そういった手法や、第9回のコラムで説明したような「他のビジネス」などで売上を増やしていくことをお薦めします。

Q:不動産投資フェアで「全空のアパートを買って再生した」というようなお話をされていましたが、以前に空室が3割くらいあるマンションの融資が出なかったことがあります。どうすれば空室の多い物件でも融資を引けるのでしょうか。

A:これは「サラリーマン大家さんと事業者の違い」の良い事例ですね。サラリーマン大家さんの融資審査は事業者のそれに比べると画一的ですので、エリアや築年数などが一定の基準を満たしている必要があります。入居率も現状で判断することが多いので、空きが多い物件には融資が付きづらいのは事実です。

ぼくがこの物件で融資を受けられた(対外的には、融資を「引く」という言葉は使わない方がいいと思います)のは、簡単にいうとお金と実績があったからです。
4千万円の購入価格に対してリフォーム代も含めて5千万円の融資を受けたのですが、自分の法人には5千万円以上の現預金がありましたし、仮に全空の状態が改善しなくても、既に所有している物件のキャッシュフローで毎月の返済を続けることができました。さらに、過去何度も空室率の高い物件を満室にしています。
融資というのはテクニック的な要素は少なく、「通るべくして通る」ということです。

1月に開催された「HOME’S不動産投資フェア」で事例として採り上げた、
31戸全空アパート。(神奈川県秦野市)

ということで、質問として多いものについて回答させていただきました。

不動産投資の普段のご質問については、メールマガジン上で回答させていただいております。コラムに書けなかった役立つノウハウや最新情報を載せていますので、ぜひご購読ください。
http://www.mag2.com/m/0000254056.html

【このコラムの著者】

寺尾 恵介

不動産投資・アパート経営の人気ブログを運営する「投資家けーちゃん」
大家さん向けの情報誌「満室経営新聞」の編集長。

1973年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。1996年に住友海上火災保険株式会社(現:三井住友海上火災保険株式会社)に入社し12年間勤務。富山支店在任時代に不動産投資に目覚め、現在までに約110室、家賃年収は6千万円に達する。

一般的には空室リスクも高く、アパート経営に不向きと言われる北陸地方(石川県、富山県)で物件を購入しているにも関わらず、入居率は常に90%以上で推移。管理会社を中心とした「チーム」での運営を得意とするスタイル。

運営ブログ 投資家けーちゃん「ハッピー&リッチBLOG」 http://toushika-keichan.com
メルマガ 投資家けーちゃんの不動産投資メールマガジン(23,000部) http://www.mag2.com/m/0000254056.html
著作 満室チームで大成功! 全国どこでもアパート経営(筑摩書房) http://www.amazon.co.jp/dp/4480863885/
みんなが知らない 満室大家さんのヒミツ(ぱる出版) http://www.amazon.co.jp/dp/4827205612

講演/セミナー実績
 全国賃貸住宅新聞社(賃貸住宅フェア)
 東京都宅地建物取引業協会
 株式会社ビジネスブレークスルー
 日本ファイナンシャルアカデミー株式会社
 北陸電力株式会社
 中部電力株式会社
 株式会社ギブコム
 SBIホールディングス株式会社
 株式会社ネクスト(HOME'S不動産投資フェア)
 健美家株式会社
 株式会社ファーストロジック(お宝不動産セミナー)
 三和エステート株式会社

その他、全国の不動産管理会社様での講演多数

他のコラム著者も見てみる

不動産投資家によっても違いは様々。
HOME'Sが厳選した不動産投資家や専門家のコラムから色々な不動産投資スタイルを吸収してライバルに差をつけよう!

橋本秋人

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

最新コラム: 【自己紹介】会社員→サラリーマン大家→早期退職→独立への道

HOME'S PRESS

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

最新コラム: 新たに始まる「住宅ストック循環支援事業」は特色のある制度に

田中圭介

シリーズ連載: 答えは現地にあり!現地取材レポート

最新コラム: 【第4回】 現地取材レポート ~カンボジア プノンペン編~

佐藤益弘

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

最新コラム: 中古マンションが新築マンションを供給数で逆転! 変化し出したマンション市場

菅井敏之

シリーズ連載: 誰も教えてくれなかった「銀行」~その傾向と対策~

最新コラム: 【第四回】必ず行っておきたい、銀行との「コミュニケーション」

HOME'S不動産投資フェア 事務局

シリーズ連載: 2017/1/28 HOME'S不動産投資フェア出展企業インタビュー

各出展企業インタビュー記事はこちら

HOME'S マーケティング部 データ編集担当

シリーズ連載: ユーザーの本音から探る不動産投資

最新コラム: 将来性を秘めた街 『都心』エリア

鈴木 学

シリーズ連載: 海外不動産融資事情

最新コラム: 第五回:海外物件購入、日本で資金調達は可能か?

石渡 浩

シリーズ連載: 不動産投資に有益な融資を受けるための知識

最新コラム: 第4回 税引後キャッシュフロー偏重の盲点 銀行は決算書のここを見る(後編)

北野 琴奈

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

最新コラム: 海外不動産を活用した節税法の行方は?

猪俣淳

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

最新コラム: 健美家の年間レポート2016が発表されました

右手 康登

シリーズ連載: CPM®流「相続・不動産経営 実践術」 右手 康登のコンサル「みぎからひだりへ」

最新コラム: 島国の中での常識 VS グローバルスタンダードを知ることの重要性

末永 照雄

シリーズ連載: 失敗しない不動産投資の法則

最新コラム: 稼げない土地の活用術「トランクルーム」

伊藤 英昭

シリーズ連載: 伊東英昭氏の不動産投資コラム

最新コラム: vol.13 マンションと高級車

12.【最終回】事業化のQ&A。不動産投資家:寺尾 恵介の連載コラム。不動産投資に関するプロの投資家によるノウハウや失敗談、リスクヘッジの情報が盛り沢山。中古マンションの投資、アパート経営の失敗、マンション投資の失敗やマンション経営の失敗など不安を解消する情報も掲載しています。不動産投資の節税やローン、融資などのお金に関する情報も。あなたの不動産投資にお役立てください【HOME'S不動産投資】