猪俣淳の不動産投資コラム

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ワンルーム区分投資はNGか?

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不動産投資には様々な選択肢がありますが、新築VS築古、地方VS都心などそれぞれに主義主張があり、賛否両論があります。

なかでも、意見が分かれるのが「ワンルーム区分」投資。

先日、「新築・中古ともにワンルームマンションへの投資はNG」という方の記事をお見かけしまして、NG派の方の意見を上手に集約されていたので今回はそれに関して解説してみたいと思います。

NG派意見

1.管理費・修繕積立金を払うと手取りが残らず儲からない。

→ワンルームの区分マンションであれば、管理費と積立金を合わせて毎月1万円前後は取られます。

管理費は共用部の日常清掃やゴミ捨て場・自転車置き場の整理、エレベーターの点検やメンテナンスといった運営上かかる諸経費に充てられます。

修繕積立金は、十数年ごとに発生する外壁塗装や、それよりも頻度の高い防水工事や鉄部塗装、給排水管メンテのために積み立てられます。

では、これらの経費が一棟モノには必要ないのか?

否、これらの出費は物件オーナーのコントロール下にあり、やるやらないの判断は自分で下すことはできますが、もしもやらない場合はスラム化に伴う賃料低下や空室増加、あるいは復旧に恐ろしいほどのコストがかかる建物の深刻なダメージといった問題と向き合うことになります。

区分の場合、こういったコストが毎月の経費としてカウントされますので、運営費が割高に見えがちですが一棟ものできちんとした運営をしようとすれば、実はそんなに差がないということに気づく人はそう多くはありません。

逆にいえば、そういったコスト(ワンルームで月1万円程度)の負担をすると手取りが残らないような賃料の物件は区分、一棟にかかわらず維持が難しいということでもあります。

区分であれば、目の前の収支に現れますし、一棟であればあとでツケが回ってきたときに初めて実感することになります。

2.法定耐用期間が過ぎると、建物価値がゼロになり物件の価値が限りなくゼロになる(土地は残るがあくまでも「敷地権」にしか過ぎず、売却や建替えなど自分で土地活用をコントロールできない)。

→一棟モノの敷地は数百㎡あるのに、区分の敷地は共有持ち分で数㎡しかない。従って、土地の価値が無い・・という論旨かと思います。

ここで、問題なのは、土地面積の広い・狭いで価値を量っている点です。

土地の価値は「単価×面積」。

仮に、地方の一棟モノRCで300㎡の敷地がある物件の土地価格が㎡あたり10万円としましょう。つまり、更地価格3000万円ということです。

ここに、600㎡(20㎡で30戸、25㎡で24戸といった感じでしょうか)の建物があれば、解体費用を坪10万円として約2000万円(税込)の解体費がかかりますので、実際は「1000万円」が更地にした場合の売却手取りです。

売却や建替えといった土地活用のコントロールはできますが、24~30世帯の入居者に立ち退いてもらうという交渉は相手方に決定権がありますので、思った通りにいくとも限りませんし大変な交渉になるでしょう。

また、更地になったときにそこに同程度の新築を建てて運用しようとした場合、田舎も都心も変わらない建築費で建物を建てて、安い賃料しか取れないとなるとそもそもそこでの建替えという選択肢はナシということになる可能性が高いと思います。

土地として売り出した場合にも買い手がいるかというと、また微妙です。

一方、区分の場合。これも、地価の安い地域であればまったく同じ問題を抱えますし、敷地権ということでさらに条件は厳しくなります。

ただ、地価が高い地域であれば別。

以前あった事例では、新宿の都庁の近くで1400万円で購入した14㎡の区分(この物件の投資自体は賃料7万円で収支計算をするとイマイチでした)の土地持分わずか2㎡の半分にあたる1㎡が、道路拡幅によって土地収用され、1150万円振り込まれてきたというのがありました。

建築関連の法整備は老朽マンションの建て替えがより容易になる方向性にありますので、この物件に限らず、解体して更地にした方がみんな儲かるという物件は少なからずあります。

2350万円の築古団地が1億3980万円に化けた渋谷区のうぐいす住宅や宇田川住宅を例に挙げるまでもなく、損失や持ち出しが出る話にはみんな難色を示しますが、みんな儲かる話だと意見はまとまりやすいです。

更地にするための解体費用の負担、坪10万円も、土地値が坪30万円と坪3000万円では負担の割合が違います。

3.入居者がいれば稼働率100%、退出したら0%でギャンブルになる。

→確かに、一部屋しか所有していなければそうなります。

それは、1000万円の戸建賃貸の場合も10億円のシングルテナントビルの場合も同様です。

これは、複数の物件を持つことで解決しますし、例えば、10世帯のアパートを地方で持つのと、都心部の区分を10戸バラで持つのでは後者の方が空室リスクは低くなるでしょう。

なぜか?

もちろん、立地上の優位性もありますが10戸のアパートのうち半分にあたる5戸は、一般的に入居者が付きづらいといわれている1階部分になります。

区分であれば、入居者を付け易そうな部屋だけで10戸のラインナップを完成させることもできます。

バラゆえに、物件の入替えやキャッシュフローをまとめてどれか一つのローンを完済させるといった細やかな調整も可能です。

もしも入居者の自殺などの事故が起こった場合も一棟モノであれば10戸全体に影響が及びますし、都会であればまだしも、その影響は田舎であればあるほど大きくなります(個別性が高いのでそのまま転用することはできませんが、告知期間について東京地裁で2年(H13.11.29)、札幌地裁で20年(H18.8.24)という判例があります)。

4.物件自体の管理は、管理会社に命運を握られていてコストコントロールの余地がない

→おっしゃる通りです。

従って、区分マンションを検討する場合には「管理会社」の良し悪しが重要な投資判断になるということです。

コストが高すぎる管理会社の場合、それは多くの場合販売価格にも反映されます。

個人的には、そのコストに見合った管理がされていて、運営コストが高い分、価格が安く収支計算上も問題なければ、かえって良いくらいと考えていますが、目先の費用が高いことが気になる方は多いでしょう。

管理組合が管理会社を変更することもできますので、面倒でなければ積極的に物件の管理運営に関わって、コストダウンをはかることも不可能ではありません。

一般的に、大手といわれる管理会社は管理費が比較的高く、また分譲会社の系列会社が新築時よりそのまま管理を行っている場合がほとんどです。

総戸数が少ない(30戸未満)場合も修繕負担金の負担額が高くなりがちです。

5.将来はスラム化し、不良資産化。処分もできずババ抜きになる。

→1.管理費と積立金、4.管理会社の項目でも触れましたが、きちんと管理組合が機能し、地価や賃料が一定基準以上確保されているかどうかがカギでしょう。

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我が国で最も古い区分マンション、1956年(昭和31年)築の四谷コーポラスは築後60年近く経ったいまでもスラム化することなく良好な管理の元、賃貸市場でも売買市場でも人気を保っています。

一方、建替派と保存派が二つに分かれ管理組合が機能不全に陥っている中銀カプセルタワービル(1972年黒川紀章設計)はスラム化の一途です。

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構造的に、各部屋の天井が外部に面していて多くの部屋で雨漏りが発生し、なかには砲撃をうけたような大きな穴があいてブルーシートで塞いでいるなんていう部屋も。

セントラル空調と、セントラル給湯がどちらも壊れていますが、改修の目途が立たず入居者はゴミ置き場に置かれた簡易式のシャワーブースを使っている始末・・・。

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このあいだポータルサイトで見かけた埼玉県の区分マンション(20㎡2K)は売値がなんと48万円!

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最寄駅からバスで25分という立地、築40年という条件を差し引いても激安です。

家賃が1万円だったとしても表面利回り25%(!)ですから。

でも、物件概要をよくよく見てみると、管理費(月額)5,000円、修繕積立金(月額)0円(!?)、総戸数26戸のうちの何戸が使われているのかはわかりませんが、自主管理の管理組合が機能していなさそうなことはわかります。

注意事項として備考欄に、

「現在、エレベーター故障中です。水道は使えますが、飲料水としてはご利用いただけません」とあります。

恐ろしい・・・。ちなみに、これが一棟マンションだったとしても、ちゃんとした状態に戻そうとすればいくらかかるかわかりません。

理屈から言えば、@48万円/戸×26戸=1248万円でまとめて買えるということではありますが、エレベーターの交換だけで1500万円はしますから・・・。

6.融資を借り入れすると「残債>>>資産価値」となり債務超過に。信用棄損を生じて次の投資に支障がでる。

→区分ワンルームマンションを評価しない金融機関もありますし、評価する金融機関もあります。

物件のエリアや面積、総戸数などで評価する・しないを分けている金融機関も。一棟モノに比べると、融資を受ける金融機関の選択肢が減りますのでその部分では不利ともいえるでしょう。

ただし、残債と資産価値の関係に関して言えば区分も一棟も「物件」と「融資金額&借入年数」次第ということになります。

「残債>>>資産価値」の「資産価値」が「銀行の担保評価」をあらわすのか「市場価格」をあらわすのかがわかりませんが、

仮に「担保評価」であれば、「立地が悪く、低賃料、低稼働率、高運営費・修繕費負担」ゆえに、期待利回りが高く(要は、15%とか20%とかでないと誰も買わないような物件)、そのかわり立地によって評価に差が出ない建物が立派なもの(そのぶん維持管理コストが高いということでもありますが)だと、「残債<評価」となり易いです。

フルローンやオーバーローンも狙えるかもしれませんね。

ただ、数年前、この規定でじゃんじゃん融資を出していた某メガバンクが、その後大量の破たん・焦げ付きを食らう羽目になり、規定を撤回。担保評価額と実際に買った金額、どちらか低い方の7割という厳しいものになりました。

万一、事業がうまくいかずに滞納となった場合、金融機関は差押・競売のうえ融資金を回収しますが、売れる金額と評価の金額はまったく別物だということに気が付いたということです。

また、資産価値が「市場価格」を表すのであれば、これは物件価格に対して融資金額が過大でないかどうか、そして融資期間が長いか短いかということが問題になってきます。

某地銀では、「5年後の残債が、評価額の7割以下」という規定を設けています。

例えば、物件価格も評価額も1000万円の物件があった場合、フルローンで1000万円を借りたとしましょう。金利は仮に2%とします。

5年後の残債は30年返済であれば「872万円」、15年返済であれば「699万円」。

後者であれば1000万円貸すし、前者であれば(逆算すると)800万円までだったら貸しますということになるわけです。

そして、「市場価格」は流動性(=売り易さ)の影響を大きく受けますので、立地の悪い一棟モノと立地に優れた区分マンションを比較するとどっちがいいの?ということなわけです。

区分ワンルームには区分ワンルームなりの長所と短所があり、一棟モノには一棟モノの長所と短所があります。

一棟モノの
「自分の裁量で全体的な資本改善をして物件の価値をあげることができる」
なんて言う部分はとても魅力的だと思います。

それでも、かけたコスト以上の賃料や売値へのリターンが無いと意味がありませんので、なんでもかんでもというわけではありませんけどね。

まとめ

区分ワンルーム投資がNGかどうかについての結論をまとめると、

1.田舎立地の物件は、あまりに賃料が安すぎて運営費を吸収できないのでNG

2.都心立地の新築物件は、あまりに利回りが低くCFが出ないうえ、売却時の価格低下が大きく、キャッシュポイントがまったくないのでNG

3.管理に問題がある物件は、自分でそのリスクをコントロールできないのでNG

・・・ということになります。

逆に、

1.立地が良くて、

2.そこそこの家賃がとれて(管理費・積立金が月1万円、固定資産税が年3万円、管理手数料が月2千円と仮定すると、月額1万5千円弱の運営費と考えられるので、これが25%程度の負担率に押さえられるのが理想とすれば、月額6万円前後がひとつの目安となるでしょう)

3.管理がきちんとしている・・・という条件を満たした物件を

4.複数戸買い進む

・・・のであれば、区分ワンルームマンション投資は良い投資になると思います。

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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