猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

「高値掴みしているのでは?という不安」

「今の時期、物件を買うと高値掴みになるんじゃないかという懸念を持っているんです」
といった内容のご相談をよくされます。ここ最近、アベノミクスと五輪効果で「利回り低下=物件価格上昇」という局面になっていますからね。
金融緩和によって、融資条件が金利・金額・期間でゆるくなれば、収益物件の利回りは下がるようになっています。

理由は2つ。

1.キャップレートの3要素すべてに影響を及ぼす。
(1)金利が下がると、「利回り=キャップレート」の構成要素であるrf=リスクフリーレートが下がる。
(2)また、同時に企業業績の向上を見越した景況感の改善によりrp=リスクプレミアムも低下する。
(3)合わせてインフレ懸念が生じ、g=NOI(営業純利益)の成長が見込める
物件の価格(V)=NOI(営業純利益)/R(キャップレート)※
※R(キャップレート)=rf+rp-g

2.金利が下がると、利回りが低下しても正のイールドギャップが生じるので、レバレッジが効く
レバレッジ効果は、ローン借入に関する負担よりも、投資する物件自体の利回りのほうが上回っていればその差額分を投資家が得ることができるという理屈で、投資家の投資効率を押し上げます。

比較するのは2通り。

(1)金利と内部収益率(IRR)
(2)K%(=年間返済額÷借入額)とFCR(=NOI÷総投資額)

購入するときの利回りが低かったとしても、保有期間中キャッシュフローが改善したり、売却価格が上がったりすれば、それなりのIRRが確保できます。
また、金利が下がったうえ、融資期間も長めに組めるなんていう場合は、K%はうんと低くなりますから利回りが低くても、レバレッジが効くようになります。

例えば、年利3.5%25年返済が融資条件だったとすれば、K%=6.00%
年利が2.0%期間が30年になれば、K%=4.43%
イールドギャップ(YG)を1%確保したいということであれば、前者はFCR=7%、後者はFCR=5.43%ということです。

仮に、年間家賃収入1,000万円で、空室率5%・運営費率15%の物件があったとすれば、NOI(営業純利益)は1,000万円×(1-(5%+15%))=800万円。
NOI800万円÷FCR7%=1億1,428万円・・・・購入経費が物件価格の7%程度とすれば、物件価格は1億680万円。
つまり、表面利回りで1000万円÷1億680万円=9.36%ということです。

同様に、FCR5.43%で計算すると、物件価格は1億3,770万円。表面利回り7.26%です。

ちょっと難しかったですか?

結論からいうとどうなのよ・・・高値掴みのハナシは。
ということであれば、
「<持ち続ける>という選択肢がとれる価格・投資内容であれば良いと思います」というのが、個人的な見解です。
特に東京の都心部などは、シンガポール・台北・NY・パリなど似たような世界中の大都市と比べて利回りがまだ高いです。
東京都心部のAクラスビルのキャップレートは現在4%台ですが、他所はみんな2%台ですからまだ価格上昇余地があると考えられます。

単純にキャップレートが半分になれば、価格は2倍ということです。
2020年の東京五輪にむけてまだまだ行けそうな気もします(東京中心部は)。

一方、なんらかのネガティブ要因があって金利が急上昇したり、景況感が一気に悪化したりすればキャップレートは逆に上昇することも十分に考えられます。
そういった場合、出口を取らずに持ちこたえられるかどうか(金利上昇も含め)といった判断をすれば宜しいのではないかと。

いま、昭和末から平成初頭の都心のワンルームが1,000万円前後で取引されていますが、2年ほど前までは800万円位でした。
そのころの値段を見て、「200万円も上がってしまったから様子見」という人もいますが、アレ、平成バブルの時にはだいたい5,000万円から7,000万円位で取引されていたのが多いです。
その頃は、5,000万円で買った物件が3か月後には6,000万円、1年持ってれば1億円?なんていうノリでみんな買っていたんです。
当然、赤字です。

「毎月10万円の<持ち出し>であなたも物件オーナーに。さらに所得税還付が受けられます♪」・・・
結末は、ご存知の通り。

将来どうなるかは、有名なアナリストの先生を含め誰にもわかりません。
個人的には、どっちに転んでもいいようにしています。
性格的には、気が小さくてリスクテイクは最小限に。でも、投資効率は一定以上のパフォーマンスをきっちり求めるというのが私の投資スタンスです。
物件価格があがっているときには、まだまだ上がるぞと飛びつくこともなく、
かといって、高値掴みになると嫌だから様子を見ようということもせず。
物件価格が下がっているときには、まだまだ下がるかもと見送ることもなく、
かといって、おぉ安い!と飛びつくこともせず。
自分が必要と思う投資を、自分が良いと思うタイミングで、市場の変化に逆らうことなくそれを活かし・・・という投資につとめています。

そして、もっともリスクが高く、絶対に避けたいと思っているのは、ドラッカー教授のいうところの「無為のリスク」。
リスクを避けることばかりにやっきになって、結局なんにもしないというのが、一番危険だということです。
特に、いまの日本の社会では。

ピケティの「r>g」を持ち出すまでもなく、労働と消費のままに老後を迎えると、格差の谷間に突き落とされます・・・怖っ

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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