猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

確定申告書からわかること

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物件の売却相談を受けるときに、確定申告書・決算書を拝見させていただくことが多いです。
もちろん、それは売却資金を元にした再投資の方針を立てるうえでも、融資を受ける金融機関の目途を立てたり、所得税率の見込みをつけたりといろいろ役に立つからですが、それ以外にも見るべきところは沢山あります。

物件購入を検討する際に、ご覧になる機会があれば参考にしてみてください。

また、ご自身の投資を見直すためにも有効です。

「所得税青色申告決算書(不動産所得用)」の1枚目は<損益計算書>(P/L)です。

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収入金額の一番上には”①賃貸料”の項目が。
空室損を差し引いた、実際に1年間で入ってきた賃料収入ですから、投資分析的には実効総収入(EGI)にあたります。この物件の空室率を算定する上でも参考になります。また、複数年分を入手できれば、その推移もみることができます。

⑤租税公課⑥損害保険料は、この物件を運営する場合のコスト(Opex)計算に必要です。もちろん、固定資産税納付書があればいいのですが、ここでもわかります。

⑦修繕費は、その年ごとに当然差が付きますが、参考にはなります。

2ページ目には<不動産所得の収入の内訳>

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賃借人の住所氏名:住所には部屋番号が書かれますので、同一の部屋がリストされている場合は、途中で入替があったと考えられます。また、名前からは法人・個人の別、性別や国籍も推察可能です。

賃貸契約期間:自年・月・至年・月という表記になっていますので、空室が出てから次の入居者が決まるまでの空室期間がわかります。

貸付面積:複数のタイプが混在している物件で、図面等が無い場合ここから推察する場合があります。

賃貸料(月額・年額):途中で入替があった部屋の賃料が最も最近の成約事例ともいえますので、各部屋間の差異が特になければ、それよりも高い賃料で貸されている部屋も空室が出て再募集した場合、その賃料と同一水準に下がると想定できます。また、物件が荒れ果ててという経緯で下がっているのであれば、適正な資本改善によって賃料水準を回復することができるとも言えます。

礼金・敷金・更新料:名義書換料その他:保証金・敷金(期末残高):取れている部屋も取れていない部屋もありますが、取れている部屋が多いほど、リーシングで苦労していないであろうと予想できます。逆に、敷金が取れていない部屋ばかりであれば、募集に苦戦していると予想できます。

3ページ目には<減価償却の計算>

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建物だけではなく、一括償却していない限りは付帯設備、工具・器具・備品といったものもこのリストに載ります。各部屋ごとの内装工事についても同様です。

建物の取得年月よりも後に取得されているものについては、修繕や資本改善で行われたものと考えられますので、どの程度、そしていつごろ維持管理にコストを掛けたかということが読み取れます。
取得価格の欄には、それにいくら掛けたかということもわかります。

4ページ目には<貸借対照表(資産負債調)B/S>

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資産の部には、普通預金・定期預金、負債・資本の部には借入金残高が載っていますので、場合によっては、売主さんの売却理由がわかるかもしれません。

未収賃貸料(資産の部)が多ければ、何か月分くらいの滞納があるのか、そしてそれがあまりにも多ければ入居者との関係に苦戦している様子がうかがえるはずです。

ただ、これらの数字はさらに踏み込んだヒアリングをしないとどうなっているか、正確にはわかりませんので、ひとつの目安として見るようにしてください。

滞納が解決していても、翌年にならないと申告書に反映しませんし、サブリースをしていれば借主はサブリース会社になり、それぞれの部屋の居住者の内容はわかりません。

ただ、申告書や登記事項証明書、公図・測量図、様々なデータなど。一見、なんの変哲もない資料でも、意思を持って読み込むといろいろなことを教えてくれるということは変わりません。

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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