猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

2年で2割の値上がりは儲かるか?

ここ数年、不動産価格が上がっていますので「2年で2割も値上がりしたよ」なんていうケースも珍しくはないでしょう。そこで、売却して利益確定といった検討をする投資家も多いと思いますし、税金や経費を考えるといくら手元に残るのかわからないということでお悩みの方もいらっしゃると思いますので、実際のところどの位儲かるのかということを試算してみます。

例として、「900万円」で購入した都心の区分ワンルームが2年後に「1,080万円」に値上がりしたというケースを見てみましょう。1,080万円÷900万円×100=120%・・・2年で20%の値上がりをしたという計算です。

その他の条件は、RC造 築30年、購入時の借入は物件価格の9割。年利3.5%期間30年、元利均等返済。ローン事務手数料は75,600円、一括返済手数料は21,600円、名義は個人名義、課税評価は購入価格の7割、土地建物の按分は8:2、司法書士手数料は3万円、税率は消費税8%、土地売買所有権移転1.5%・同建物2%、抵当権設定0.4%・抵当権抹消1,000円、不動産取得税3%(土地は課税標準1/2になる特例)・印紙税(売買契約書)1,000万円以下5,000円・5000万円以下10,000円(金銭消費貸借契約書)1,000万円以下10,000円・・・とします。
また、火災保険料については年掛けとし購入経費に入れないこととします(融資期間相当の一括加入をしても2年で売却=解約すると掛け金のほとんどが戻ってきますのでここでは勘案しません)

購入時点の経費は、購入価格900万円(課税標準額 土地504万円・建物126万円)
①仲介手数料(価格の3%+6万円及び消費税)・・・・・・・・・・・・・・・356,400円
②登記費用(移転75,600円+25,200円・設定32,400円・手数料30,000円)・163,200円
③不動産取得税(126万円+504万円×1/2)×3%・・・・・・・・・・・・・113,400円
③印紙税(売買契約書5,000円・金銭消費貸借契約書10,000円)・・・・・・・15,000円
④ローン事務手数料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75,600円
合計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・723,600円
購入価格900万円に対して約8%の負担割合です。

売却時点の経費は、売却価格1,080万円
①仲介手数料(価格の3%+6万円及び消費税)・・・・・・・・・・・・・・414,720円
②印紙税 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10,000円
③一括返済手数料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21,600円
合計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・446,320円
売却価格1080万円に対して約4%の負担割合です

売却価格1,080万円-購入価格900万円=180万円・・・20%の利益ですが、実際は(売却価格1,080万円-売却経費約44.6万円)-(購入価格900万円+購入経費72.4万円)=約63万円が利益ということになります。

1,080万円÷900万円×100=120%・・・2年で20%の値上がりをしたという計算ではなく、1,035.4万円÷972.4万円×100=106.47%・・・値上がりによる利益は2年で6.47%ということです。

次に譲渡所得税の計算をしてみましょう。
譲渡所得税は、売却に伴う利益に対して課税されますから、「売却価格-売却経費-(購入価格-建物・設備の減価償却済の金額+未償却の購入経費)」という計算で課税利益を計算します。
この事例において、減価償却する建物価格は900万円×2割=180万円。そして、減価償却期間は、47年-30年+30年×0.2=23年。従って、減価償却済の金額は、180万円÷23年×2年=15万6500円となります。
未償却の購入経費は、建物と一緒に減価償却の対象になる「建物分相当の仲介手数料」が該当します。356,400円×0.2×21年÷23年=65,081円。
譲渡税率は、売却した年の1月1日現在で5年を経過していませんので、39%。
以上の条件をふまえ計算すると、
売却価格1080万円-売却経費44.6万円-(購入価格900万円-建物・設備の減価償却済の金額15.65万円+未償却の購入経費6.5万円)=144.55万円が譲渡利益となり、これの39%である56.37万円が譲渡所得税ということです。

先ほど計算した値上がりによる利益約63万円から税金を差し引くと7万円弱・・・・。
あまり儲かった気がしません。

では、実際に自分で出した投資資金はどう変化するでしょうか。
購入するときに支払った現金は、頭金10%相当の90万円と、購入経費の72.4万円の合計162.4万円。
価格の90%相当額の810万円の借入の2年後の残高は7,756,632円。
売却価格1,080万円-売却経費44.6万円-譲渡所得税56.37万円-残債7,756,632円=約203万円。
2年間の保有で41万円の利益が売却に伴い発生したというのが実際のところです。そして、保有中のキャッシュフローがこれに加わります。

表面利回りが購入時9%(売却時7.5%)として、年間賃料は81万円(月767,500円)。2年間空室が出ずに、運営費が23%(都内の区分だとこの位だと思います)とすれば、営業純利益(NOI)は623,700円、ローン返済は年間409,799円、税引前キャッシュフローは213,900円。

税引後のキャッシュフローを計算してみましょう。投資家の税率は30%(所得税20%+住民税10%)と仮定します。

営業純利益NOI    623,700円
-)減価償却       172,000円(建物156,500円+建物仲介料15,500円)
-)建物分金利      48,000円
-)土地分金利       192,000円(赤字の場合土地分金利は経費化できません)
-)専従者給与         0円(5棟10室以上等、事業的規模の場合のみ)
=)課税所得(調整前)  211,700円(赤字の場合、0になるまで土地分金利を差引く)
=)課税所得(調整後1) 211,700円
-)青色申告特別控除   100,000円(利益を上限に、10万円ないし65万円)
=)課税所得(調整後2) 111,700円
×)税率           30%
=)税額         33,510円

したがって、
税引前CF      213,900円
-)税額          33,510円
=)税引後CF       189,390円

約19万円が税引後キャッシュフローということです。
そして初年度は、経費化できる経費が446,320円-建物仲介料71,280円=375,040円ありますので、

営業純利益NOI    623,700円
-)購入時経費      375,040円
-)減価償却       172,000円(建物156,500円+建物仲介料15,500円)
-)建物分金利      48,000円
-)土地分金利      192,000円(赤字の場合土地分金利は経費化できません)
-)専従者給与         0円(5棟10室以上等、事業的規模の場合のみ)
=)課税所得(調整前)  -163,340円(赤字の場合、0になるまで土地分金利を差引く)
=)課税所得(調整後1)    0円
-)青色申告特別控除       0円(利益を上限に、10万円ないし65万円)
=)課税所得(調整後2)     0円
×)税率           30%
=)税額            0円

整理すると・・・
初年度 投資金額は162万円
1年目 税引後CF 21.39万円
2年目 税引後CF 18.94万円+税引後売却手取り203万円

約162万円の自己資金を投資したら、2年間で約243万円になって返ってきた。
つまり約81万円の儲けだから。年間40.5万円として年利25%の運用だった・・・という理解でも構いませんが、これに貨幣の時間的価値を付加して内部収益率(IRR)を計算すると「23.83%」・・・これが、この投資の正式なパフォーマンスということになります。

単純に、「900万円で買った物件が2年で1,080万円になって儲かった」あるいは、「経費と税金を払ったら売却利益は7万円で損した」ということでもないということをご理解いただけましたでしょうか。

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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