猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

個人投資家のための不動産マーケット戦略~何を買うか・いつ売るか~

2015年の不動産投資を振り返り、2016年の作戦を立てる時期になりました。
新国立競技場の建築も決まり、いよいよ2020年東京五輪に向けた動きも迷走から抜け出した感のある2015年末。不動産投資市場は、年初来相変わらず過熱気味に見えます。
一方、春先に2万円台の大台をつけた株式市場はその後失速し横這い。金融庁は、不動産投資家向けの融資を含め、超緩和気味で貸付攻勢の地銀に懸念を表し、中国経済の失速でインバウンド投資にも陰りが見え、さらに横浜で起こった地中杭データの偽装問題がマンション市場に冷や水を浴びせ・・・と、不安材料も。
何を買うか?いつ売るか?といった投資判断を行うにあたり、舵取りが難しいと感じる個人投資家のみなさんも多いのではないでしょうか。
不動産マーケット戦略を立てるには、外部的な要因と内部的な要因。ふたつの側面からとらえる必要があります。

【外部的要因】

この1年で物件価格が上昇して利回りが低下していることは、皆さん周知のとおりです。10月にJREI(日本不動産研究所)の第33回不動産投資家調査が行われましたが、全国の主要都市で前年比0.3%前後の利回り低下という結果に。前々年比較では0.5~0.7%の低下です。
まだまだ価格は上がるのか?(買い?)あるいは遠からず下がるのか?(売り?)要は、バブルなのか?そしてもしそうならどの段階なのかということが気になるわけです。
不動産バブルの4つのフェーズを取引量と価格という二つの指標から把握する手法がありますが、地域や物件種類によってさまざまです。
例えば、2014年8月と2015年8月の二つの指標を比較すると、首都圏・関西圏ではアパート・マンションはまだバブルの入口(第1フェーズ)で更に価格上昇する可能性が高いが、区分はそろそろピークが近い(第2フェーズ)ような数値が出ています。
九州では、区分も含めすべてが第1フェーズ、北海道はすべて第2フェーズ・・・。
それから、やはりJREIで行われている地価動向調査も参考になります。市場の形成は、(1)基盤雇用が増加すると(2)総雇用が増加し(3)オフィス需要や工業系需要が増加。その結果(4)総人口が増加し、居住系需要を押し上げ、(5)地域の総収入が増えるので小売系需要が増加するという順番で行われます。従って、商業地と住宅地で行われるこの調査の上昇・横這い・下落というトレンドを見るとどこがどうなるのかといった予想ができるわけです。
東京都は、商業地:賃料上昇・地価上昇予想、住宅地:中心と郊外の二極化予想
神奈川県は、商業地:投資マネーの流入での地価上昇予想、住宅地:需要安定。買手の購入負担力により上昇率弱含み
と、一部懸念材料はありますが、概ねポジティブな予想です。

住宅地は「上昇」となっているが、商業地は「横這い」ないし「下落」となっている地域、あるいは、住宅地は「横這い」となっていて、商業地が「下落」となっている地域は下降トレンドに入っていると見ていいかもしれません。
ざっと見渡した限りでは47都道府県のうち6割程度があてはまるようです。

中期的に見ると、2018年に訪れる安倍総理と黒田総裁の任期、2020年の東京五輪後に予想される景気後退、2022年から始まる都市近郊の生産緑地の指定解除など、市場に大きな影響をあたえるイベントが目白押しです。

それから、ここ数年の地価上昇トレンドはなにが原因と考えられるかという興味深いプロ投資家向けアンケートでは1位海外投資家の増加、2位金利水準、3位金融機関の貸出姿勢という、皆さんも納得の結果がでましたが、そのあたりの動向も十分に見ておく必要があります。ちなみに、同アンケートでは、今後のネガティブファクターとして金利上昇リスクと賃料の伸び悩みを上げています。

【内部的要因】

このように、市場はどちらにも動く可能性がありますが、それを正確に予想できるひとは皆無でしょう。それに、景気拡大期に「物件価格は十分に上がったからきっと、そのうち下がるだろう。その時に買おう」というひとが、実際に景気後退期に入ると「ほら自分の予想通りだ、きっとまだまだ下がるだろう」と結局その局面でも買わないというケースを、またその逆も数多く見てきました。売る場合も一緒です。
外部的な要因による市場の変化に自分自身の投資を合わせて最適解を求めるには、「投資内部の変化」(内部的要因)に注目すると良いでしょう。
一般的に、保有している物件のキャッシュフローに変化がなければ、その投資は購入当初から自分に安定した収入をもたらしてくれる孝行物件だという見方をされがちです。
しかし、特に価格上昇局面においては売却した場合に手元に残る現金は、当初投資した現金よりもかなり大きくなっているはずです。購入から一定の年数が経過しているのであれば、ローン残高も減少しているはずですから更にでしょう。これを「投資基礎」と呼びますが、キャッシュフローに変化がなく投資基礎が大きくなるということは、すなわち投資効率の低下を表します。税引後のキャッシュフローであれば、一般的に減価償却や元利の割合の関係でだんだん減少していきますから(賃料上昇がなされていないかぎり)、その傾向は更に大きくなっているはずです。
「高く売れるときには、買うのも高い」というのが悩みどころと思われるかもしれませんが、「内部の投資効率の悪化>外部の投資効率の悪化」であれば、投資の入替えが有効になります。

市場の拡大・後退といった不動産のマーケットサイクルは融資・価格など景気循環増幅効果を受けながら変化していきますし、打つべき手(投資戦略)もそれに合わせ、外部成長(物件取得)・ポートフォリオ強化(物件入替・経営安定化・流動性向上)・ディストレス(不良資産購入)と変化していきます。
賃料やコストといった内部成長戦略、レバレッジや流動性確保といった財務戦略も同様です。

個人投資家における、こういった投資戦略の考え方と実践の仕方について詳しく知りたい方は、私自身が投資家として取り組んだ事例を詳細に解説した「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略~詳細解説版~」(住宅新報社)が2016年3月に出版されますので、そちらをぜひ。

また、「個人投資家のための不動産マーケット戦略~何を買うか・いつ売るか~」という今回のテーマについてのセミナーもご希望が多ければ、また機会があればどこかでお話ししたいと思います。

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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