猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

熊本震災派遣レポート3

依頼された件数114棟の調査をすべて終了し、無事羽田に帰ってきました。

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IREM震災建築物応急危険度判定チームもひとまず解散です。
協力いただいた皆さん、お疲れ様でした。

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復興までの道のりはこれからですが、応援しています。手が必要になったときには、いつでもお声掛けください。

最終日には、前日の大雨とは打って変わって晴れ渡り絶好の調査日和です。

例によって3チームに分かれラストスパートで午前中に残りの調査を一気に済ませました。

構造別の被害状況については集計ができたら、どこかで発表させていただきたいと思います。

まったくの無被害だった昭和48年築の木造アパート。

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同じくまったくの無被害だった昭和38年築の貸家。

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どちらかというと、リクシルでもTOTOでもなく

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合資会社河野善助商店の風呂がどんなものかが気になりました。

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一方、1階部分が押し潰され大きな被害が出た平成15年築の木造アパートもあります。

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よくよく見ると、今どきの集成材×プレカットではなく、昔ながらの無垢材×手作業の木組み加工

接合部には、アンカーボルトや耐震金物がまったく見当たらず釘2本のみ・・・

「これ建てたの、もしかして結構年配の地元の大工さんじゃない?」・・・ビンゴでした。

建築基準法や新耐震基準に合致していたとしても、それは最低ラインで求められる基準ですし、法で求められているのは大震災の時に「決して壊れない建物」ではなく、「壊れるまでの間に、逃げる時間が稼げる」あるいは「壊れても、安全な生存空間を確保できる」ということであるということを建築の世界の人以外で知っている人は少ないと思います。

この建物も前震で半壊し、入居者が避難した後に本震でクラッシュしていますから、ある意味求められる要件を満たしているとも言えます。

一通り調査が終わったあと、せっかくなので建築士としてこことここを見に行きたいとリクエストさせていただき、わがままを聞いていただきました。

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こちらは昭和52年築の1階部分が店舗事務所の賃貸マンションです、ピロティ形式ではありませんが1階部分の壁量が不足していたと考えられます。ちょうど日本建築学会の皆さんが現地調査をされているところでした。

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これは、熊本市内中心地で周りは無被害ななか、一棟だけ大きな被害を受けていた1階がピロティ形式の建物。(築年数は不明ですが、おそらく昭和40年代後半か50年代前半といったところと思われます)

同じ位の築年数で、同じようなピロティ形式でも無被害の建物は数多くありますが、耐力壁が片側に一つしかないので、偏心してしまったのでしょう。

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座屈した柱から飛び出た鉄筋を見ると、主筋は異形鉄筋を使っていますが、あばら筋は最近はあまり使われない細い丸鋼であることが
わかります。

結局は、設計上の基本をちゃんと押さえてあれば建物は持つし、そうでないと壊れるということが今回調査に関わった建築士全員で出した結論。

シンプルな平面計画、十分な壁量、適正な重量バランス、堅固な接合部・・・教科書で習った通りです。

有名建築もせっかくなので、

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旧熊本逓信病院(山田守1955)の優雅な曲面構成に萌える一級建築士たち。(ちなみにこちらも無被害でした。ただ、老朽化による解体が計画されているようです。ぜひ、地元の皆さん保存運動をお願いします)

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保田窪第一団地(山本理顕1991)

行きの飛行機で一緒になった山本先生の作品です。今回のメンバーのひとりが、大学で授業を受けていたそうです。

ちなみに、こちらの被害は金属性のバルコニー手すりの基部が破損している程度でした。

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新渡鹿団地(小宮山昭1993)
ル・コルビジェのユニテ・ダビタシオンの影響を大きく受けたと思われる1階ピロティ形式の高層マンションですが、ピロティ部分には被害は見られませんでした。(上層階の壁の一部にせん断破壊のあとがありました)

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マルセイユのユニテ・ダビタシオン(1952)

そして、熊本城。

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屋根瓦がすべて落下し痛々しい姿をさらしていますが、実は揺れに伴い重量物である瓦を振り落すことにより、重量バランスを改善し本体の被害を免れるというメカニズムになっています。

偉大な先人の智慧です。

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報道を見て心配していましたが、多くの石垣は被害を免れていて安心しました。

一日も早い復興を願っています。

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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