猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

物件を化けさせる方法

物件が「化ける」という表現が使われることがあります。
さまざまな理由によって価値が上昇すれば、投資家にとって大きな利益をもたらしてくれる事になります。
それは運の問題もありますが、
(1)化ける可能性のある物件を選定したり、
(2)主体的に取り組んで化けさせるということもできます。

(1)化ける可能性のある物件

事例1:敷地の一部が計画道路に入っている
敷地の一部が都道整備のため収容され、土地持分2平米のうち収容された1平米相当に対し1,000万円を受け取った超都心に立つ購入価格1,400万円の中古区分ワンルーム。

事例2:敷地面積が広く容積率に余剰がある物件
土地持分が80平米もある築40年超の団地(JR山手線〇〇駅徒歩8分)。2DK38平米を3,000万円で取得し、15万円で賃貸(表面利回り6%)。築古のため、ノンバンクから金利4%期間20年という条件でしか融資が引けず(月額返済18万円)、キャッシュフローは赤字。その後、建て替え決議が出たため

a.建て替え後、3LDKタイプ(100平米)と等価交換 
b.現金で1億3,000万円という選択を管理組合から提案された。

そのほか、新駅ができたり、再開発がかかったり、企業の進出があったりという地域自体の魅力が高まる場合には、そのエリア全体が化ける可能性が高くなります。

(2)主体的に取り組んで化けさせる方法

物件の価値はどのように決定されるか・・・ということを式に表すと以下のようになります。

V=NOI/rf+rp-g  (ゴードン成長モデル)

V  :価値
NOI:営業純利益
rf :無リスク金利(10年物長期国債金利)
rp :リスクプレミアム
g :NOIの成長率

ポイントは、
1) NOIをいかに大きくすることができるか
2) リスクを取り払うことが可能か
3) それを行うためのコストを吸収できるだけのリターン(賃料や売却価格)があるか
という点です。

では、それはどうやってするのか?・・・という具体例を挙げてみましょう。

1)NOIをいかに大きくすることができるか
・賃料水準を上げる
 同じ面積でも、2DKと1LDKでは賃料が1万円以上変わるというケースは少なくありません(賃貸ポータルサイトで確認できます)。床面積が狭くても賃貸需要が旺盛な地域では賃料単価を高水準に設定することも可能です。また、内外装やエクステリア、エントランスホールなどの共用部に対する投資、ペット可やコミュニティといった付加価値、コンセプトの付加など賃料水準を上げる工夫はいくらでもあります。また、(合法であることを前提として、そして運営コストとの兼ね合いも検討する必要がありますが)Airbnbやマンスリー運用も賃料水準を上げる方法のひとつといえるでしょう。

・空室損を減らす
正確な空室率の計算は、「1-居住期間/(居住期間+空室期間)×100」。ということであれば、やるべきことは

a.現入居者になるべく長く住んでもらえるようにする 
b.空室が出てもすぐに決まるようにする という2点です。

空室対策のためにTVモニタフォンやウォシュッレットなどの設備を新設するのであれば、同時に入居中の部屋に付けてあげてもいいでしょう。契約更新時にハウスクリーニングのサービスをする、滞納がない入居者には更新料の割引をする、清掃の頻度を上げる、管理会社の見直しをする。いくらでもやることはあります。また、賃料水準を上げる施策は入居者の満足度を上げるという効果を同時にもたらす場合がほとんどです。

・運営コストを下げる
今の管理会社と同じサービスをもっと低い管理料で受けられる会社を探す。共用部の蛍光灯が切れた等、不具合は同時に全交換して作業の手間代を減らす。点灯時間の長い照明器具をLEDにする。清掃や小工事を依頼する業者の見直しなど。

・雑所得を増やす
空いたスペースを使って、自販機・駐輪場・駐車場・トランクルーム・看板・基地局アンテナ・太陽光設備など収入を生むことに使えないか?

2)リスクを取り払うことが可能か
リスクを取り払うことによって次の投資家が求めるキャップレートが下がりますので物件の価値を大きく上昇させる要因になります。不動産投資におけるリスクには主に3つ。

a.立地のリスク
都心か地方か、駅の近くかバス便か。賃貸需要を生じる工業団地、会社、大型商業施設、大学などがあるか、住環境を損なう施設や要素があるか、いわゆる忌避施設がないかといったことが立地上のリスクになります。

これを取り払うことは基本的には難しいので、物件選定時に注意を払うべきです。特に、利回りが高い物件ほどこのリスクが大きい可能性が高くなります。ただし、まったく立地のリスクを取り払う方法がないかというと、そうではなく「ターゲット層を変える」ということでそれが可能になる場合があります。たとえば、単身男性社会人をターゲットにした場合、駅から近く飲食店が立ち並ぶような立地が良い立地といえるでしょうが、子育てファミリーにとっては駅徒歩15分の閑静な住宅地で良い教育施設や公園があったほうが良い立地といえます。ミスマッチな立地になっている物件のターゲットを変えるだけで立地のリスクを取り払うことができます。

b.物件のリスク
物件のリスクには、改善が困難なリスクと改善が容易なリスクがあります。再建築不可・借地権などは改善できないか、改善が困難なリスクといえます(ただし、隣地の取得や、底地の取得などができた場合、大きな利益を生じる可能性があります)。また、老朽化したり陳腐化した物件を改善するのは、建物構造や部位、状態によってコストの違いはありますが比較的容易にできる方法だと思います。

c.運営のリスク
清掃を含めた維持管理状態のほかにも、反社会的な人や近隣と揉めるような問題入居者が入っていたりすると購入検討者はリスクを感じます。立ち退き交渉を行ったり、入居者層を改善するための物件価値上昇の施策などが有効になります。

3)それを行うためのコストを吸収できるだけのリターン(賃料や売却価格)があるか
これら施策には、多くの場合それなりのコストが発生します。そして、それは賃料水準や地域によっての差があまり生じません。ということは、賃料水準が低ければコストに対するリターンは得られにくくなります。また、売却時に求められる利回りが低ければNOIの改善は大きく寄与しますが、利回りが高くないと売れない地域であれば掛けたコストを回収できない可能性も高いといえます。逆に、賃料水準が高く、利回りが低くても売れるような地域であれば、かけたコストはとても良いリターンをもたらす可能性が高いといえます。

いずれにしても、「化ける可能性のある投資」、「投資を化けさせる方法」を知っていると、購入時・運営時・売却時に有利になります。

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

他のコラム著者も見てみる

不動産投資家によっても違いは様々。
LIFULL HOME'Sが厳選した不動産投資家や専門家のコラムから色々な不動産投資スタイルを吸収してライバルに差をつけよう!

橋本秋人

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

最新コラム: 20××年、ノストラダムスの大予言はあるのか?

LIFULL HOME'S PRESS

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

最新コラム: 新たに始まる「住宅ストック循環支援事業」は特色のある制度に

田中圭介

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

最新コラム: 【No.15】 各国の不動産投資の現状 〜ミャンマー編 その2 経済状況について~

佐藤益弘

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

最新コラム: 民法改正と不動産投資(1)~どうして変わるのか?

菅井敏之

シリーズ連載: 誰も教えてくれなかった「銀行」~その傾向と対策~

最新コラム: 【第四回】必ず行っておきたい、銀行との「コミュニケーション」

LIFULL HOME'S不動産投資フェア

シリーズ連載: 2017/1/28 HOME'S不動産投資フェア出展企業インタビュー

各出展企業インタビュー記事はこちら

LIFULL HOME'S マーケティング部 データ編集担当

シリーズ連載: ユーザーの本音から探る不動産投資

最新コラム: 将来性を秘めた街 『都心』エリア

鈴木 学

シリーズ連載: 海外不動産融資事情

最新コラム: 第五回:海外物件購入、日本で資金調達は可能か?

石渡 浩

シリーズ連載: 不動産投資に有益な融資を受けるための知識

最新コラム: 第4回 税引後キャッシュフロー偏重の盲点 銀行は決算書のここを見る(後編)

北野 琴奈

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

最新コラム: 海外不動産を活用した節税法の行方は?

右手 康登

シリーズ連載: CPM®流「相続・不動産経営 実践術」 右手 康登のコンサル「みぎからひだりへ」

最新コラム: 島国の中での常識 VS グローバルスタンダードを知ることの重要性

末永 照雄

シリーズ連載: 失敗しない不動産投資の法則

最新コラム: 稼げない土地の活用術「トランクルーム」

寺尾 恵介

シリーズ連載: 不動産投資の事業化計画

最新コラム: 12.【最終回】事業化のQ&A

伊藤 英昭

シリーズ連載: 伊東英昭氏の不動産投資コラム

最新コラム: vol.13 マンションと高級車

不動産投資・収益物件を検索するなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】賃貸経営[マンション経営・アパート経営]をお考えなら、まずは掲載中の投資物件[投資用マンション・売りアパート・一棟売りマンション]を地域や価格帯、会社で検索して、価格や想定利回りで絞り込み!気になる投資物件を見つけたら物件の周辺情報を調べたり、収益シミュレーションを使って実際の運用をイメージ出来ます。不動産会社へはメールか電話でお問い合わせ・相談が可能です(無料)。不動産投資による資産運用をお考えなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】

ページトップへ