猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

土地値の大型物件は出口で儲かるか?

「最後は建売用地として売れるから出口も心配ありません」・・・と土地値の大型物件(RC)をしきりに勧められているのですが。

というご相談を受けました。

ときどき、この相談をいただきますので、事例を挙げて計算してみましょう。

間口25m×奥行50m=1250㎡(約380坪)の土地に50㎡×24戸のRCマンション。

戸当たり賃料が45000円であれば年間の満室想定賃料は約1300万円ですから、これが1億円で買えるのであれば、表面利回り約13%とまずまずの高利回りになります。

そして、そのあたりの土地値が坪30万円程度であれば、380坪×30万円=11400万円と、確かに土地値より安い買い物でお買い得感があります。

検討1:そもそも、現状で投資として成り立つか

同様の案件やヒアリングから、空室率20%・運営費率30%だったと仮定すると、
満室想定賃料×(1-(20%+30%))=営業純利益NOIは650万円。

購入経費1000万円を自己資金、物件価格1億円を3.9%27年返済でフルローンで借りると年間返済は600万円。

税引前キャッシュフローは年間50万円ということです。

1000万円投資して、キャッシュフローが50万円ということは、自己資金利回り(CCR)は5%しかないのであまり魅力がなさそうです。

おまけに、この規模の物件を運営するとなると年間50万円では何かあったらアウトです。

でも、ゆくゆくはローンを全額返し終わって土地として売却したら1億円以上儲かりそうな気もしませんか?

では、計算してみましょう。

ちなみに、建売用地として売るのは宅建業者でないと不可能ですから、建売業者に買ってもらうということになります。

検討2:建売用地としていくらで売れるか?

まず、道路などの築造の必要性と、実際に用地として使える面積はどの位になるかということを計算します。法的な制限や、建売としての市場性で(1区画あたり何坪位の規模が必要かなど)区画数は決まりますが、仮に幅員5mの位置指定道路をいれておよそ100㎡(約30坪)区画とすると、10区画ほど取れそうだということがわかります。

そして、その区割りした物件がいくらで売れるかということを調べます。ここでは、土地の相場が坪30万円ということであれば、およそ2500万円前後が建売の価格と予想できます。

これがわかれば、売値から逆算して土地代としていくら予算をだせるかということがわかります。

売る側からしたら、いくらで買ってもらえるかということです。

 建売価格   2500万円
ー販売手数料    80万円
ー建物原価   1500万円
ー配管引込・外構 100万円
ー位置指定道路  150万円
ー造成・区割り   50万円
=土地予算    620万円
×10区画   6200万円

ここから解体費用がコストとしてかかりますので、1200㎡(約360坪)×@10万円/坪+消費税ということであれば約4000万円の解体費を差し引くことになります。

ー解体費    4000万円
=土地予算   2200万円 

ここからさらに、立退き費用と建売業者の利益分を差し引いたものが買取価格ということになります。

仮に、立退き費用@50万円/戸で空室以外の19戸に出てもらったとすると950万円。

一棟当たり100万円の利益(少ないですが)を計上したとすると100万円×10棟=1000万円   

 土地予算   2200万円
ー立退き費用   950万円
ー建売の利益  1000万円
=買取価格    250万円・・・

どうやら、土地ではなくそのまま収益物件として出口を取った方が良さそうですね。

その場合、賃料水準や利回りがそのまま出口まで維持できるのか、維持するためにどの位のコストがかかるのか、市場は?流動性は?といった要素が影響を与えます。

いずれにしても解体費用も安く、区割りも必要ない戸建賃貸やアパートなどと違って、大型物件は単純に坪いくらで売れるというものではないということは知っていてほしいと思います。

ちなみに、
検討3として、ローン完済後に同規模のマンションに建替え(賃料は@65000円にアップし、空室率は5%に改善、運営費も20%に改善と仮定)のケースでも試算してみましたが、建築費に対する利回りのみでも表面5%。年利1.5%期間35年の融資を引っ張ったとしても、3億7000万円の借金をして税引前キャッシュフローは年間40万円という計算になりました。

なぜそうなるかというと、建築単価に対して賃料単価があまりにも低すぎるということが要因です。

坪単価80万円(諸々入れると100万円/坪)で賃料が15坪で65000円(4330円/坪)しかとれなかったら、それはなかなか難しいです。

6坪(20㎡)で90000円(15000円/坪)取れるならまた別ですが。

建築費に対する表面利回りは、前者は5%、後者は18%になりますので。

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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