猪俣淳の不動産投資コラム

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

担保評価が出ればいい物件か?

「物件価格に対し担保評価が出ない物件を買うと、次が買い進められなくなる」
時折耳にしますし、意見を求められますが「使う金融機関によって」というのが本当のところだと思います。

金融機関が融資するかどうかの条件は大きくわけて2つ。

1)返済は滞りなく行われるか(返済比率・個人属性など)
2)万一、返済不能となった場合に債権回収できるか(担保評価・頭金・遵法性・エリアなど)

2の規定で担保評価が重視されてきたわけですが、相続税の路線価に個別の敷地条件を加味して評価する土地評価と、建物を再建築した場合のコストから償却して価値を算出する建物評価によって構成されるいわゆる「担保評価」が決して”市場で売れる”(=債権回収できる)価格とイコールではないということに気付き始めた金融機関が増えています。

それにともない、どちらかというと収益還元価格(家賃収入÷期待利回り)で価格形成される市場価格(=購入価格)に対して何割貸すか(LTV)という基準を重視する方向に流れは変化しています。

賃料2万円の25㎡・法定耐用年数を半分ほど経過したワンルームが20戸(年間賃料480万円)の郊外の中古マンションで期待利回り10%であれば市場価格は4800万円ですが、建物だけで評価は6000万円前後になると思います。

金融機関がいま恐れているのは、6000万円の評価の80%=4800万円で安心して融資した物件の賃料が1.5万円に下がり(年間賃料360万円)、期待利回りが12%=市場価格が3000万円になってしまい、債権回収に支障がでること。

投資をすることではなく、物件を買う事あるいは増やすことが目的化するとフォーカスする部分は当然変わってきます。不動産投資は、購入→運営・維持管理→売却と比較的長い期間にわたって行いますので、買った年や翌年のキャッシュフローだけを見ても投資の良し悪しは判断できません。

投資をするつもりが、ただの苦行になってしまうケースは少なくありません。

そうは言ってもどんなに田舎でも借りる人はいるし、家賃下落にも限度があるからきちんとした運営をして魅力的な状態に物件を維持すれば問題ない。そしてリスクは、高い利回りがカバーしてくれる。と主張する人もいますが、物理的リスク・運営的リスクと違って投資家個人ではいかんともしがたい立地的なリスクというのはやっぱりあります。(以前、九州の某県で家賃1000円の築浅ワンルームアパートというのを見つけました)

一方、担保評価の規定自体まったくなくなったわけでもありませんので、立地が良いほど担保評価が出づらいというジレンマを解消するヒントを2つ。

ひとつは、共同担保(または資産背景)。

地主や資産家の皆さんは、都心部であろうとフルローン・オーバーローンを金融機関から積極的に提案されます。

理由は、担保設定するしないは別として資産全体のポートフォリオに新規の物件を追加しても十分な余力があるから。

資産家系ではない普通の個人の場合は
(1)長期の融資を受けて投資に着手し、キャッシュフローの残りやすさを利用して金融資産を増やす
(2)短期の融資を受けて投資に着手し、残債の減少スピードの速さを利用して担保余力を増やす

(1)と(2)どちらも選べるのであれば(1)の方がキャッシュフローに余裕が出ますし、繰上げ返済すれば(2)と同じ効果になりますので、(1)を選択。築年数が古いなどの理由で(2)しか選べないのであればそれはそれで良しとする。ということから着手すれば資産家と似たような状態に持って行くことはできます。

個人的にも15年ローンで買った土地値の横浜の築古アパートの残債が、3年で3000万円→2500万円になったことが、やはり横浜の新築アパートを

購入したときにフルローンが出た理由になりました。(共同担保にはしなくても大丈夫でした)

もうひとつは、金融機関の評価のギャップ。

たとえば、ある地銀の土地の評価基準では

1 接道間口
2 袋地の場合の敷地延長長さ
3 地形
4 道路との高低差
5 規模の大小
6 嫌悪施設の有無
7 通行承諾の有無
8 地役権設定の有無
9 道路付
10 道路幅員
11 法地・崖・セットバックの有無

以上11の要素で評価を出しますが、路線価25万円/㎡(路線価=実勢価格の80%とすれば坪単価100万円前後という場所です)で100㎡の土地の場合、

A:東南角地・道路幅員6m・整形地

B:北道路・道路幅員4m・不整形地

で評価を出すと、

A:3406万円

B:3125万円

この差、わずか281万円(坪単価約9万円)。

実際の市場価格の差はこんなものではないということは、不動産に詳しい人ならわかるはずです。

「銀行評価が出る=良い土地」と思っている方も多いと思いますが、評価の仕組みがわかれば逆に「銀行評価があまり伸びないから、きっとかなりまともな土地なんだろうな」という感想になると思います。

投資は、投資家の裁量やリスク志向、あるいは背景によってやり方は様々。

地方には地方のやり方があるのも否定しませんし、それで成功することも可能です(それは決して楽ではないかもしれませんが)。

ただ、担保評価やキャッシュフローといったそれぞれひとつの側面だけでは推し量れないという事を知っていただければと思います。

ご参考まで。

【このコラムの著者】

猪俣淳

猪俣 淳(いのまた きよし)1961年生れ横須賀市出身
株式会社アセットビルド 代表取締役

不動産・建築分野で30年以上働き、不動産管理・不動産売買・建築・投資・金融・保険の各分野における26の資格を持ち、みずからも収益物件の購入・売却・運営・資本改善を行う実践不動産投資家。
著書に「不動産投資の正体」「誰も書かなかった不動産投資の出口戦略・組合せ戦略」(住宅新報社)など多数。
新聞・雑誌への寄稿(ビジネス専門誌・一般週刊誌・海外も含む業界誌)、年間70件を超える全国での講演活動、ラジオ・TVなどへの出演もある。
また、IREM-JAPAN(米国不動産管理協会日本支部)の理事を兼任し、日本で数人のファカルティ(講師)資格を持つ。
ブログ「不動産投資にまつわる100の話」(人気ブログランキング最高位1位)。

保有資格:
一級建築士・米国認定不動産投資顧問資格(CCIM)・米国認定不動産経営管理士(CPM)・同講師(ファカルティ)資格・同MPSA試験採点官(グレーダー)資格・不動産証券化協会認定マスター・不動産コンサルティングマスター・不動産アナリスト・日本FP協会認定AFP・ファイナンシャルプランニング技能士・相続アドバイザー・相続対策専門士・宅地建物取引主任者・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士・賃貸住宅査定主任者・震災建物応急危険判定士・住環境測定士補・防火管理者・貸金業務取扱主任者・損害保険リテール資格・生命保険募集人資格・ハウジングライフプランナー・住宅メンテナンス診断士・住宅インスペクター・事業承継スペシャリスト

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