北野 琴奈の不動産投資コラム

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

海外不動産を活用した節税法の行方は?

3年ほど前にコチラでも取り上げた、海外不動産を保有する際の減価償却について。
簡単に言えば、日本国内のみならず、海外で築22年以上の木造居住物件を購入しても日本では4年償却で申告することができるため、税金対策としても活用されているということです。

3,000万円の物件で、仮に建物割合が6割だとしても1年当たりの償却額は450万円ですから、影響は少なくないですね。
当時も(それ以前から)よく知られてスキームではあったのですが、この3年で一段と広まったように感じていました。
海外不動産といえば、「減価償却費使って節税」みたいな感じで。
ネット社会ですから当然広まり方も早いですね。

そんなこともあってか、この件について、会計検査院が昨年の決算検査報告にて指摘をしています。会計検査院の指摘を受けると後々税制改正になる場合もよくあるので、今後の行方に注目しています。
詳細は割愛しますが、気になる論点はこちら。

*中古建物の耐用年数を算出する際、簡便法で使う数字(例:「築22年以上の木造物件は、4年で償却」等)は昭和26年に決められており、基本的に国内建物を想定したもの。というのは、当時は海外資産を保有するにも様々な制限があったためと思われる。それが現在は簡単に海外資産を持つことが可能となり、環境が大きく変わった。

*海外の中古建物については、簡便法で算定された耐用年数が実際の使用期間と合わない可能性がある。(国土交通省の推計では、建築してから滅失するまでの平均年数は、米国では66年、英国は80年とのこと)

*海外不動産にも上記耐用年数を活用し、賃料収入を上回る減価償却費を計上→不動産所得減少→損益通算にて所得税額減少、の方法を使う人が増加している。

そして最後は、
「国外に所在する中古の建物に係る減価償却費の在り方について、様々な視点から有効性及び公平性を高めるよう検討を行っていくことが肝要」
と結ばれています。

まぁ、遅かれ早かれそういう風潮になるんだろうな、とは思っていましたが。

今後具体的にどのような展開になっていくかはまだわかりませんが、ちょっと考えてみると・・・

仮に、上記米国の「建築してから滅失するまでの平均年数66年」を現在使用している「22年」に置き換えると、償却期間は66×0.2≒13年。
先ほどの3,000万円の物件の場合、1年当たりの償却額は3,000×0.6÷13≒138万円。
購入から4年間は、償却額に450-138=312万円/年の違いが生じることになります。
単純計算では、所得税・住民税合わせた税率が43%の場合で134万円ほど、50%であれば156万円の税金アップになります。
(逆に償却額が残っている5年目以降は、こちらの方が税金は減少します。)

また、米国での償却年数27.5年(購入時にリセットされる)をそのまま使った場合、1年当たりの償却額は3,000×0.6÷27.5≒65万円。
こちらの場合は購入後4年間、償却額に385万円/年の違いが生じ税金増は、166万円ほど(所得税・住民税率43%)、193万円ほど(同50%)です。

もっとも、減価償却として費用計上できる金額はトータルで考えれば同額です。ですから、保有時の償却額が少なければ売却時の譲渡益は出にくくなり、その際の税金は少なくなります。
売却までの投資全体として考えると、長期譲渡所得の場合、税率20%との違い分が節税になるわけです。
ちなみにこの「税率の違いを活用」する点も、今回の会計検査院の指摘事項に入っています。

昭和26年当時に設定されたこのルール。現在の実状にそぐわなくなっていることは確かだと思います。
今後税制改正があれば、節税のみを目的とした物件購入の需要が多少減少する可能性もあるでしょう。
ただ米国においては、中長期視点で賃料・不動産価格共にゆるやかな上昇が見られる地域が少なくありませんから、影響がどこまであるのか・・・
そもそも、日本人以外の購入者には関係のない話しですが。

あとは、ブームに乗って購入したけれど、その後の管理が意外と大変(だからもうやめる)・・・という方は増えるかもしれないなぁと、いろいろな話しを耳にする中で個人的に感じることもあります。

【このコラムの著者】

北野 琴奈

ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会認定 CFP®認定者)
ワインエキスパート(日本ソムリエ協会認定)

1974年 北海道生まれ。
津田塾大学卒業後、会社員を経て独立。
実践型FPとして資産運用、不動産投資・賃貸経営、キャリアなどに関する講演、執筆、コンサルティング等を行う。

会社員の頃、資産運用の大切さを実感し、ファイナンシャル・プランナーの上級資格である、国際ライセンスCFP®資格を取得。
同時にロバート・キヨサキ著『金持ち父さん貧乏父さん』を読んだのをきっかけに、夢実現の手段として不動産投資・経営をはじめ、東京を中心に計104室まで保有。海外にもチャレンジし、アメリカの物件購入に到る。

TBS「かっちりマンデー!!」、「がっちりアカデミー!!」、BS11デジタル「不動産王」、BSジャパン「日経プラス10」、日経CNBC「不動産投資AtoZ」等にコメンテーターとして出演。その他メディア出演・取材協力多数。
一方、ワイン好きの趣味が高じて「ワインエキスパート」の資格を取得、ワインに関する講座を務める。
著書に、『逆算で夢をかなえる人生とお金の法則』、『47テーマで学ぶ家計の教科書』、『はじめての人のJ-REIT 基礎知識&儲けのポイント 』がある。

HP: http://www.kotonakitano.com/
blog: http://blog.livedoor.jp/kotonakitano/

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