北野 琴奈の不動産投資コラム

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

これからの賃貸経営は、「コンセプト型」で差をつける

供給過多が話題に上ることも多い賃貸マーケット。
「アパート・マンションをただつくればよいのではなく、ターゲット層を絞り込みそこに向けての賃貸経営を行うことが大切。」ということは、少なくともここ10年ほどは頻繁に見聞きします。
「コンセプト型賃貸」などと表現されたりもしていますが、以前は言葉だけが先行し、実際中身があまり伴わなかったものも少なくありませんでした。
それが最近は、質にも変化が見られます。

例えば、子育てをテーマに掲げた賃貸住宅。単に、子育てしやすい間取りや設備、生活動線に配慮しただけの住宅ではありません。入居者は、入居に当たっての注意事項やコミュニティーに積極的に参加するよう求めるといった「誓約書」のようなものにサインをしなければならないという徹底ぶり。それでも希望者は多く、空室を待つ方もおられるそう。
子育てという共通点を通じてコミュニティーが作られ、住人が皆それを大切にしながら毎日の生活を送る、そんな光景があります。

他にも、趣味という切り口でのコンセプト型賃貸も比較的目にします。バイクや車、ワイン愛好家のためのアパートやマンションなどで、それぞれの趣味を日常的に楽しみやすい設備や環境が細かいところまで行き届いたつくりになっています。
こちらは前述の「子育て」ほどではないにしても、同じ趣味を持つ住人同士の交流は通常の貸家に比べれば多くなる可能性は高いでしょうし、コミュニティーが生まれやすい環境と言えます。

楽器を演奏する方のための貸家というのもそのひとつ。
以前から耳にすることはあったのですが、最近、より詳しく知るきっかけがあり興味が深まりました。
私自身、子供の頃ピアノを習っていたことも影響していることは間違いなさそうです。
以下、「音楽マンション」を展開されている越野建設さんに伺ったお話しを少しご紹介します。

<どんな物件?>

私も含めて多くの方がまず思い浮かぶのが、遮音性能が高いということだと思います。もちろんそれは非常に大事な点なのですが、なるほどと思ったのは、楽器を演奏する方の立場に立った「音響」にも配慮しているところです。単なる防音だけの設備の場合、音の響きをあまり感じることができないため、演奏する側の満足度が高いわけではないようです。
また、適切な遮音性能と賃料水準のバランスが大切とのこと。本格的過ぎる性能はどうしてもコスト(≒賃料)がアップし過ぎてしまうため、入居希望者が少なくなってしまいます。
ひとつの基準として、音楽愛好家の方には受け入れられやすい賃料(周辺相場+1万円前後)を目指しているというお話しでした。

<入居者はどういう人?>

音大生も多いのかと思いきや、「音楽マンション」の入居者データによると社会人が8割弱を占めるそうです。30代半ばの方が多く、男女比は半々。私としては女性の方が多いのではと勝手に思っていたので、これも意外でした。確かに、ギターなんかは男性が多いのでしょうね。30代半ばと言えば、社会人になって一段落、趣味にお金をかける余裕が出てくる方もおられるのだと思います。
ちなみに音大生の入居者は、残り2割強のうちの半分だそうです。

<なぜ選ばれるのか?>

通常の住居にお住まいの場合、楽器の練習等をするのは家以外の場所~防音設備のあるスタジオやカラオケBOX~という方も多いようです。場所探しや予約といった時間や手間、イレギュラーに対応しにくいといったことを考えると、仕事帰りに「継続的に行う」というのはなかなか難しいのかもしれません。自宅で練習ができるのであれば、ある程度自分のペースで考えられるので悩みは解消されそうです。実際、このような声は入居者の方からもよく聞かれるそう。
そのための賃料アップ額が許容できる範囲であれば、選ぶ方が増えるようです。

<コスト>

本格的な防音設備にするのであれば、1室当たり数百万円になることも。
それを「受け入れられる賃料」にするには、質とコストのバランスを上手く取る必要があります。
お話しを伺ったところでは、越野建設さんの場合、遮音設備のコストは賃料アップ分×4~5年程度で回収を目標にしておられるとのこと。
もともとは、音楽スタジオやコンサートホール等も手掛けられているプロフェッショナルな技術と経験をお持ちの越野建設さん。それを、もう少し一般の音楽愛好家の方のためにも活用していきたいという思いをお持ちなのだろうと感じました。

現在・今後の賃貸マーケットを考えると、賃料だけの勝負では築年を経るごとに消耗していく一方でしょう。そこに希少性・付加価値という視点をどのように加えるか、今後の賃貸経営においてますます重要になっていくことだと、改めて感じた次第です。
ただし今後はより一層、表面だけを取り繕った「なんちゃって仕様」ではなく、コンセプトに沿ったしっかりとしたモノづくりが重要になってきそうです。

【このコラムの著者】

北野 琴奈

ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会認定 CFP®認定者)
ワインエキスパート(日本ソムリエ協会認定)

1974年 北海道生まれ。
津田塾大学卒業後、会社員を経て独立。
実践型FPとして資産運用、不動産投資・賃貸経営、キャリアなどに関する講演、執筆、コンサルティング等を行う。

会社員の頃、資産運用の大切さを実感し、ファイナンシャル・プランナーの上級資格である、国際ライセンスCFP®資格を取得。
同時にロバート・キヨサキ著『金持ち父さん貧乏父さん』を読んだのをきっかけに、夢実現の手段として不動産投資・経営をはじめ、東京を中心に計104室まで保有。海外にもチャレンジし、アメリカの物件購入に到る。

TBS「かっちりマンデー!!」、「がっちりアカデミー!!」、BS11デジタル「不動産王」、BSジャパン「日経プラス10」、日経CNBC「不動産投資AtoZ」等にコメンテーターとして出演。その他メディア出演・取材協力多数。
一方、ワイン好きの趣味が高じて「ワインエキスパート」の資格を取得、ワインに関する講座を務める。
著書に、『逆算で夢をかなえる人生とお金の法則』、『47テーマで学ぶ家計の教科書』、『はじめての人のJ-REIT 基礎知識&儲けのポイント 』がある。

HP: http://www.kotonakitano.com/
blog: http://blog.livedoor.jp/kotonakitano/

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