鈴木 学の不動産投資コラム

シリーズ連載: 海外先進国の不動産投資環境~イギリス編~

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

『イギリス編第2回目』学生寮と介護施設、NET10%利回りが出せる理由

いま、英国不動産のなかで、特定のタイプの商品が日本人投資家に売れています。

・学生寮
・介護施設(ケアホーム)

この2つです。商品の特徴をいうと、

・場所はロンドンではなく、イングランドの地方都市(リバプール、シェフィールド等)が多い。
・学生寮の場合は、大学近くで賃貸需要旺盛な場所に新築するか、既存建物をリノベーションして、学生専用住居として運用する。
・ケアホームの場合は、高齢者の好む都市周辺の田園地帯に、バリアフリー等の基準を満たした建物を新築して、介護機能つき老人ホームとして運用する。
・学生寮、ケアホーム…いずれも、「一室あたり1000万円前後」、「確定利回りを投資家に返す」投資商品として世界中に販売されている。

英国の学生寮やケアホームは、海外不動産としては手頃な価格、先進国の安心感、そして何より、高いリターン(ネット8~10%)が一定期間(2~10年)保障されるところが、日本人投資家のテイストに合うようです。特にシェフィールド市の学生寮「プリントワークス」などは、一気に数十室売れるような勢い。

私自身は、2年前に英国地方都市の貸倉庫スペースを現金買いし、「ネット8%の5年保障」で運用していますが、私がこれ買った後、「ネット10%で5年保障の学生寮」みたいな魅力的な商品がどんどん出てきて、「買うの早まったな」と後悔してますが…このような「金融商品チックな不動産」が豊富にあるのが、英国の際立った特徴といえましょう。

私は、不動産投資家の純粋な興味として、「英国ではなぜ、ネット8~10%の高いリターンを投資家に返せるんだろう?」と、つねづね思ってきました。もし私が外国人投資家向けに、日本のワンルームマンション、戸建、アパートなどを購入・運営したとしても、とてもじゃないが「ネット8%」を返す自信はありませんし、日本の老人ホームが、投資家に確定リターンを返すみたいな話も、聞いたことがありません。

その秘密をこの目で確かめるため、今年7月、英国に渡り、イングランド北部の中堅都市、ハダーズフィールド(Huddersfield)周辺の学生寮とケアホームを視察し、関係者にヒアリングしました。そして、「英国の今の社会状況だからこそ、このビジネスモデルが成り立つんだな」と、納得できました。

『完成間近の学生寮を、日本の投資家グループが視察』(鉄骨、かなり細い…)

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簡単にいうと、ポイントは3つ、

1)高い調達金利
2)高い家賃水準と、その割に安い建築費
3)オペレーションとファイナンスの発達

【高い調達金利】
いま英国では、個人が住宅ローンを組む際の金利は3~4%程度ですが、住宅デベロッパー向けの金利はリスクプレミアムが乗って、約7%!リーマンショック以降、その状態が続いているそうです。

デベロッパーの立場からすれば、「銀行に担保とられて7%の金利返す位なら、個人投資家からお金集めてキャッシュ勝負した方が良い」という判断になります。そこから弾きだされた数字が、「8%~10%の確定リターン」。個人投資家にはなかなか魅力的なので、国内外で売れるわけです。

私の見聞した範囲では、「企画や土地仕込み段階だと9~10%で募集」、「完成時期が近づくと8%」のケースが多いようです。

【高い家賃水準と、安い建築費】
法制度的に新築供給が難しく、賃貸住宅が慢性的に不足する英国では、地方都市の、古くて狭い住宅でも結構な額の家賃が取れます。

いま英国は教育ビジネスを国策的に展開しており、留学生数も大きく増えています。その割に、学生寮はあまり建てないため、大学周辺の民間賃貸住宅が圧倒的に不足している所が多い中で、いま大学近くに賃貸物件を供給できれば、「ワンルームで月額10万円以上」が当たり前の世界になります。グロス利回り12%とか回るので、運営費を差し引いても投資家に8~10%を返せるわけです。

一方、ケアホームは英国人口の高齢化を追い風とするビジネス。イングランド地方都市では比較的裕福な老人も多く、個室・食事つき、介護機能付きの施設に、「月額約40万円」の費用を払って入居する人が相当数います。その割に、介護スタッフの人件費は結構安い(時給1000円前後、東欧からの移民が多いよう)ので、ざっくり言うと、「入居者から月額40万円とって、うち30万円を運営側がとって、10万円を投資家に返す」モデルが成り立ちます。

地震のない国なので、新築学生寮の鉄骨はかなり細かったですね。比較的安い建築費で上物が建ち、その割に家賃が取れる国だからこその、「確定利回り商品」なのでしょう。

『完成済、オープン間近のケアホーム』

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『来年完成予定のケアホーム予定地を視察』(牛や羊が草を食む、田舎でした…)

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【オペレーションとファイナンスの発達】
学生寮やケアホームは、運営するしっかりした会社がないと、投資商品として成り立ちませんが、幸い英国には、「学生寮(orケアホーム)の管理一筋、何十年」みたいな会社が豊富に存在します。

また、金融の国らしく、どのデベロッパーにもファイナンス部門があります。建築や施設運営に詳しいファイナンス専門家が、今後数年~10年にわたる緻密な収支計算をした上で、投資家に確定リターンを返します。その辺のビジネスのやり方は、さすがに洗練されています。

日本で、同じモデルで確定利回り型の住宅商品をつくるのは難しいでしょう。調達金利安い上に家賃頭打ちの国では、そもそも成り立ちにくいビジネスモデル。

でも投資家としては、世界中好きな場所で投資できるわけです。英国の持ち味を生かした、学生寮やケアホーム投資、十分ありだと思います。

【このコラムの著者】

鈴木 学

アジア太平洋大家の会 会長
1968年千葉県生まれ。一橋大学社会学部卒業。
卒業後、ITエンジニア・マネジャーとして、日本、豪州、中国、米国、インドの5ヶ国で勤務経験あり。海外在住経験は8年間。 2002年、豪州シドニーで不動産を買い賃貸に出し、日本から遠隔管理して自信をつけたことを皮切りに、現在では、日本、オーストラリア、米国、タイ、英国、ドイツに、計21室を所有・経営するグローバル大家。

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