鈴木 学の不動産投資コラム

シリーズ連載: 海外不動産融資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

第二回:海外でもフルローンは可能か?

海外不動産をはじめて買う方から、時々こんな相談を受けます。

「海外でも現地金融機関からフルローンひけますか?」

結論から言うと、まず無理です。少なくとも初回の物件購入でフルローンなんて話、日本以外では聞いたことないです。

シンプルに考えれば、銀行は不動産に抵当権をつけて、担保価値を評価してリスクもみた上で、「掛け目」を入れてお金を貸すわけですから、「自己資金を何割か入れてもらい、その残りを貸す」のが通常の姿。融資額が担保評価額の7割や8割、場合によっては9割出ることもありますが、10割(フルローン)出すのは、銀行の立場からすると普通ありえない話。

そもそも、日本でなぜフルローンが出るケースがあるのか?それは日本独特の制度や融資慣行によるところが大きいと思います。たとえば、

【積算価格と実勢取引価格の乖離】
日本では「土地」と「建物」が別個に評価され、その合計(積算価格)が実際の売買価格より高くなることがある。特に地方のRC造は、その状態になりやすいので、積算価格を重視して融資を出す銀行だと結果的にフルローンが出たりする。

【返済能力を重視した融資】
日本の金融機関では、「不動産担保価値」のほか、「借り手の返済能力」を重視した融資が行われることが多いので、一部上場企業勤務で給料の良いサラリーマンの場合、初回取得でもフルローンが出たりする。

いまの日本はフルローンの期待がある上に、金利は激安。諸外国と比べれば融資天国ですね。海外に出ると、全く状況が違います。一例として英米圏諸国ではどうでしょう?

1) 英米圏では、「土地」と「建物」が一体として評価されるので、所謂「積算価格」が存在しません。しかも、融資にあたってはValuer(鑑定士)が実勢の取引価格に近い線で査定し、それに銀行が掛け目を入れて融資を出すので、フルローンはまずありえません。

2) 英米圏では、借り手の返済能力よりも、土地建物の担保評価額を重視した融資が行われるケースが多いので、どんなに属性の良い人でもフルローンにはまず達しません。

それ以前に、日本在住の日本人が海外で物件買う場合、その国での収入もなければ、居住さえしていないわけですから、融資審査の上で不利になります。現地在住者でさえフルローン無理なのに、ましてや日本人の非居住者がフルローン組んで買えるわけはないのです。

とはいえ、最近では海外不動産取得に日本の金融機関が融資を出すケースが出てきたので、そのルート経由でフルローンは不可能ではなくなりました。2016年12月現在、

1) A行….政策系金融機関。日本での賃貸事業で2年以上確定申告をした方が審査対象。融資年数は10〜20年、金利は1.2〜1.8%(日本円、元本元利均等返済)。担保型と無担保型の両方がある。融資額2000万円までなら比較的通りやすい。
3) C行..ノンバンクのなかでは海外不動産融資に積極的な銀行。ある程度の現金か首都圏内の担保物件(返済が進んだマイホーム等)があれば検討可能。融資年数は通常20年以上。年利は4%前後。

私の身辺でも、海外で2000万円程度の物件を買い、日本で2000万円融資ひいて、結果的にフルローンで購入できた例もあります。

あと、海外では日本と違って、不動産の価格・担保価値が上がり続ける国が多いですから、「1戸目の値上がり(担保価値上昇)を使って、現地金融機関から2戸目を実質フルローンで取得できる」ケースもあります。「エクイティ・ファイナンス」と呼ばれるもので、簡単な例をあげると、

Case Study

・1戸目を40万ドルで購入。自己資金8万ドル入れて、融資32万ドル(利子のみ返済)を設定
・10年後 1戸目の担保価値が40万ドルから70万ドルに値上がる。 残債は32万ドルで変わらないが、自己資金が30万ドル増えて、38万ドルになる。
・その時点で、1戸目を共同担保に入れて、2戸目を40万ドルで取得しようとする。

この場合、2戸目取得に40万ドルまるまる借りられることがあります(実質フルローン)。なぜなら、

⇒担保価値(A)  70万(1戸目)+40万(2戸目)=110万ドル 
⇒融資額(B)   32万(1戸目)+40万(2戸目)=72万ドル
⇒自己資金(C)  38万ドル
⇒融資比率(A/B) 72万/110万=65%       

その時々の金融環境にもよりますが、融資比率が65%なら、貸す銀行は大抵あるので、2戸目以降のフルローン取得が視野に入ってくるわけです。

海外で2戸目にフルローンをひく手法は、1戸目の値上がりを前提にするものなので、「確実に値上がりしそうな物件」を選ぶことが大事です。今の日本と違い、オーストラリアなど英米圏では人口も増えて住宅供給不足の国が多く値上がりしやすい状況ですが、経験上、次のような物件は特に上がりやすいと思います。

・大都市内の、比較的良い場所で、賃貸利回りがグロス5%程度で回る物件
・大都市内で、不動産価格が上がっている局面で、土地つきの物件

【このコラムの著者】

鈴木 学

アジア太平洋大家の会 会長
1968年千葉県生まれ。一橋大学社会学部卒業。
卒業後、ITエンジニア・マネジャーとして、日本、豪州、中国、米国、インドの5ヶ国で勤務経験あり。海外在住経験は8年間。 2002年、豪州シドニーで不動産を買い賃貸に出し、日本から遠隔管理して自信をつけたことを皮切りに、現在では、日本、オーストラリア、米国、タイ、英国、ドイツに、計21室を所有・経営するグローバル大家。

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