年度末ですね。
来年度(来期)に向け、様々な制度や仕組みが変わるのが見え隠れする時期でもあります。
さて、私たちが生活上で何かしらのトラブルに遭った際に、基準となるルール=法律はたくさんあります。
その中で、王様と呼べる法律が 「民法」になります。
日本における主要な6つの法「六法」※の1つで、私たち日本人が生きていく上で必要不可欠な法律です。
(※六法=「憲法」「民法」「商法」「刑法」「民事訴訟法(民事手続法)」「刑事訴訟法(刑事手続法)」の六法分野)
昨年11月から、国会でもこの「民法」改正の論議がされています。
特に今回の改正論議がされている分野が、生活上必要不可欠な契約~約束のベースとなる請求権=「債権」に関する項目の大改正になります。
ほとんど報道されていませんが、実は、注目度は大きいはずなんです。
そこで、今回は、非常に多岐にわたっているこの「民法」改正で論議されている内容を、特に不動産投資=不動産の売買や賃貸経営に関係しそうな部分だけピックアップして複数回に分けてお伝えしたいと思います。
1.そもそも民法って、何?
生活上で、私たち個人個人(私人間)にトラブルが発生した場合、基本的に話し合いで円満解決を図ることが普通だと思います。
ただ、その際に何も基準がないと困りますよね?
そこで、そのような時に「こんな感じで問題解決したら良いのではないでしょうか?」という基準=指針が示されている法律が「民法」になります。
(中には強制的に適用されるルールもあります。)
ですから、事細かに内容が記載されているわけではなくて、あくまで基本的な事柄が中心です。
例えば、借地や借家に関する細かい約束(契約)に対するトラブルは、民法ではなく、それに該当する法律~ここでは借地借家法を別に定めて、問題解決をするようにしています。
また、先ほどお伝えした通り、民法ではよほどヘンな約束(契約)をしない限り、「個々人で決めた約束(契約)」の方を民法で決めたルールよりも優先することにしました。
その方が、円満に問題解決できると考えたからです。
2.民法改正が動き出した経緯とは?
では、どうして、今、民法改正が必要になったのでしょうか?
一言でいうと、民法という法律が「時代遅れ」になってしまい、私たちにとっても違和感を感じるモノになってしまった・・・また、今後より一層そうなってしまうことが予想されるからということです。
元々、民法は約120年前の 1896年(明治29年) にできています。
つまり、前年の日清戦争に勝利し、事実上、日本が近代国家としてスタートを切った翌年にできた法律になります。
内容も非常に多岐にわたっており、今回の改正論議の対象になっている「債権」の部分は、実にできて120年間、ほとんど改正がされていません。
先ほどお伝えした通り、民法は指針法・・・目安みたいなモノですから、「細かい話は個々人間の約束(契約)で決めてね」というのが基本的なスタイルです。
つまり、法律自体を変えなくても、トラブルになった際に裁判所から出た判決の積み重ねである「判例」で対応できるので、ある意味、放置の状態でした。
ところが、時代が大きく変わりました。
特に21世紀に入ってからは、通信手段は民法制定当時の手紙から電子メールに変わり、契約も紙(契約書)を前提にする形からペーパレス=データで残すことが多い時代~ITの時代になりました。
特に、問題になったのが、「約款」です。
みなさんも、インターネットを通じて買い物をする際に、「はい」を“ポチッ”と押さないと進まないので押す、アレです。
「約款」とは、不特定多数の方を相手に、似たような取引を大量に行う場合、予め定めておく画一的な契約条項のことを言います。
ですから、しっかり読まないで“ポチッ”と押してしまうと契約したことになるので、後でトラブルになってしまうわけです。
ただ、私もそうなのですが・・・ほとんどの方は、文面は長いし、内容はよくわからない難しい言葉が並び、さらに文字は細かすぎて・・・読まないですよね?
契約=約束というのは、合意することが前提です。
そういう意味から、この「約款」は、本来の役割を果たせておらず、トラブルになるケースもあるのです。
そもそも民法に、この「約款」の規程がなかったので、今回の改正で規定する運びになったというわけです。
本題の不動産関連の事柄に進みたいのですが・・・今回は民法改正論議の経緯をお伝えしたので、長くなってしまいました。
次回以降、不動産関連の事柄についてお伝えしたいと思います。
今回は、此処までにしましょう。
また、次回に・・・。