佐藤益弘の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

民法改正で変わる、お金と不動産投資の世界(3)~主に不動産売買で変わること:瑕疵担保責任

いまさら聞けない、不動産投資のキホン

前回は、「民法で変わる背景・項目」についてお伝えしましたが、この間2017年5月28日に、民法改正が国会を通りました。

120年前、民法が誕生した当時の“責任(権利義務)関係”は「法律で定めていた内容を基準」にしていました。
今回の改正によりその発想を「個々の契約で定めた責任基準」に変えることがポイントになると主観をお伝えしました。

というのも、120年前は人々の行動範囲も狭く、地縁に基づいて生活しているケースが多い社会でした。
つまり、何かトラブルが発生した時でも、顔見知り故、話し合うことができ、約束などなくとも妥協点=解決点を見いだし易い社会だったはずです。

また、人々の活動範囲も制限なく、全世界に広がっています。見知らぬ人と行動を共にすることもあるような世の中です。

ですから、約束を“する”ことを前提にしたルールに変更するという流れになっているわけです。

今回から、コラムの内容は不動産に関連する領域に入ってきます。

まずは、不動産投資の入口と出口である「売買」の領域についてお話しを進めていきたいと思います。

1.不動産売買のルールで変更になる項目

不動産の売買の分野についてですが、今回の民法改正では広い領域で改正が行われます。

特に、欠陥品を購入した場合の責任関係を規定している「瑕疵担保(カシタンポ)責任」や「契約解除(キャンセル)」に関連する事柄、契約から引渡までの間に不可抗力で売買の対象物である不動産が滅失してしまった(≒壊れて使いモノにならなくなってしまった)場合の責任関係に関する「危険負担」などが改正点としては重要でしょう。

不動産“売買”に関わる改正項目

特に21世紀に入ってから、コミュニケーション(手法)も手紙や電話など中心からネット中心になり、ペーパレスが主流=前提になりつつあります。

ですから今までの問題点の修正だけでなく、グローバル化も見据えた対応もなされているのだと感じています。

今回はその中でも、特に大きく概念を変える・・・正確には概念がなくなってしまう「瑕疵担保責任」についてお伝えします。

2.瑕疵担保責任とは?

瑕疵担保責任・・・“瑕疵”を“担保”する“責任”とは、何でしょう?

“瑕疵”とは、キズ物とか「欠陥」と言う意味があります。
“担保”とは、「保証」という意味です。

つまり、瑕疵担保責任とは、欠陥品を提供した際の保証・責任になります。

もちろん、買主がその瑕疵=欠陥を知っていれば、不利益はないはずなので問題になりませんが、落ち度なく知らなかった(=善意無過失)場合は被害甚大です。
そのような場合に売主に対して責任を取りなさいというルールになっています。

現行の民法では、不動産は特定物・・・つまり、芸術品のように変わりのない一品モノなので、取引の信頼性を損なわないためにも、売主にその保証・責任を全面的に取るように規定されています。

具体的には、欠陥品を購入させられた買主は、売主に対して「損害賠償請求」、購入した目的が果たせない場合は「契約解除(キャンセル)」ができます。

通常、責任を課されるためには、責任のある方(=この場合売主)に落ち度(=過失)があることが前提になります。ただ、この瑕疵担保責任は「無過失責任」と言って、売主に落ち度がなくとも責任を取るという重い責任を負わされています。

通常の責任の取り方で良いということにしてしまう=売主に落ち度がないので責任はないということになってしまうと、最終的に誰も責任を“取れなく”なってしまい、買主が泣き寝入りする可能性が出てしまう。

そうすると、社会正義が守られなくなり、社会不安につながってしまうので、売り手にとっては少々厳しいのですが、そのように決めたというわけです。

ただ、売主に無過失責任を負わせる代わりに、買主の損害賠償請求、契約解除の行使期間を買主がその事実を知ってから1年間と制限しています。

また、売主が宅建業者(プロ)で買主が宅建業者以外の素人の場合、この責任を負う期間を、物件を引き渡してから2年間以上の期間に制限しています。何時までも責任があるのも逆の意味で社会不安になってしまうからです。

また、素人同士の取引・・・例えば、売主が個人(素人)である中古物件の売買の場合は、この責任を取らない=免責にすることも可能です。

これからはどう変わる?

今までは、買主が“落ち度なく知らなかった(=善意無過失)”場合に売主に対して“過失(落ち度)がなくとも”責任を取りなさいというルールでした。

ただ、今後は、「買主が知ってたかどうか?」という基準ではなく、契約内容に基づいてしっかりと取引をしたかどうか?という点が問われることになります。

つまり、
その権利・対象物の種類や品質、数量について、契約内容に適合しているものを引き渡すこと
がポイントになります。

名称も「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変更になります。

この中で、わかりにくく、問題の争点になりそうなのが「品質」に関する事柄です。

例えば、自殺などの“心理的な問題”もあれば、日照、嫌悪施設の存否などの“環境”に関する事柄、法律上の制限など・・・多岐にわたります。

契約の内容によって責任の有無や範囲が決まるということでしょうから、契約書に契約内容をどこまで取り込めるか?がとても重要になるわけです。

例えば、その後のトラブル防止のため、「特記事項」として、契約する目的や動機、 告知書等の売主・買主双方による確認事項を記載する必要も出てくるかもしれません。

ただ、そうすると、コストや手間などの負荷が非常に大きくなるでしょう。
正直、執筆時点では、法案が国会を通ったばかりで、この点について、まだ詳細が決まっていないというのが現実です。

少なくとも、既存の契約も含め、契約書や業務規定などの見直しが必要になる可能性は高いと思います。

それらのことを考えると、施行まで3年間という時間がありますが、あまり猶予はないかもしれません。

【このコラムの著者】

佐藤益弘

東洋精糖(株)の不動産部門にてマンション開発・販売統括・管理支援などの主任を務める中、CFP®資格(FP)を取得。
オールアバウト・不動産投資(現土地活用)ガイドとして10年以上活動する中、延べ1000名以上の不動産投資家と触れ合い、成功事例&失敗事例を蓄積。

現在、お客さまサイドに立ったシンの独立系実務家FPとして、そのネットワーク確立のため、「マイアドバイザー®」を運営。
数少ない 金融商品販売を伴わない コンサルティング業務をメインとした~ お金の家庭教師≒教科書通りのFP として活動中。

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