佐藤益弘の不動産投資コラム

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

民法改正で変わる、お金と不動産投資の世界(4)~主に不動産賃貸借で変わること 保証について

いまさら聞けない、不動産投資のキホン

前回は、不動産投資の入口と出口である「売買」の領域・・・特に影響が大きいと思われる“瑕疵担保責任”の変更についてお伝えしました。

今回は、この民法改正に関するシリーズの最終回。

不動産投資そのものである「賃貸借」の領域についてお話しを進めていきたいと思います。

1.不動産賃貸借のルールで変更になる項目

不動産の賃貸借の改正点については、今までの判例などで積み重ねた事実を法律に定めて整理をしたというイメージになります。

例えば、賃貸契約時に預ける「敷金」について・・・実は今まで規定されていませんでした。ですから、今回規定されることとなりました。
また、退去時にトラブルの多い「修繕」や「原状回復」に関する事柄も、今までの判例に基づき規定し直されています。

不動産“賃貸”に関わる改正項目

この中で最も注目すべき改正部分は、「(個人根)保証」に関する改正です。

具体的には、保証人が個人の場合、保証人保護の観点から、保証に極度額(上限)を定めなければ保証契約自体が無効になります。

2.根保証とは?

まず、「根保証」について、説明する必要があるでしょう。

例えば、借家人の賃料未払いなどの債務に対して、継続して保証人が保証すること。
読んで字の如(ごと)く、「根」っこ=最後まで「保証」=責任を持つということです。

一度契約してしまうと継続して保証されるので、例えば、保証人の知らないうちに債務者が借金など債務を増額していても分からず、その増えた分も保証しなければならないということが起きていたわけです。
また、保証期間が過ぎても債務が残っている場合は、引き続き連帯保証人が責任を負うことになります。

借家人など債務者にとっては“最良”な制度でも、連帯保証人にとっては“最悪” な制度と言えるでしょう。

この「根保証」ですが、実は、10年ほど前、商工ローン問題に端を発した貸金業法改正により、連帯保証人の保護がなされました。その時話題になったので、覚えているという方もいらっしゃると思います。

ただ、その時の改正はあくまで貸金等債務を対象にした、限定した規制でした。
今回の改正では、この規制対象が個人向けの根保証契約すべてに拡大され、保証人の保護範囲が拡大されたということなのです。

この点はとても良いことなのですが・・・賃貸人である地主や大家の立場から考えると違った見え方ができます。

3.最も影響のある改正 ~個人の根保証契約

借地や借家など不動産の賃貸借契約に伴う保証は、不特定の債務を対象としています。

例えば、家賃が未払いになれば 未払い分だけ保証されることになります。
また、過失で物件が壊された場合、その分の損害賠償額も保証対象になります。

つまり、借地や借家の保証人が個人の場合、この個人の保証は「根保証契約」になります。

大家にとっては、「極度額」という上限を設け、その金額以上の保証はない状況になるということです。

通常、民法の規定は任期規定といって、法律で定められた条文より契約の方が優先されます。
ただ、「極度額」の規定については強行規定と解されており、契約よりも法律の条文が優先されることになります。

この改正により、商取引上で、個人に連帯保証人になってもらうことは事実上できなくなると思われます。

4.どうすればいいのか?

まず、問題になるのは、「極度額(上限)をどう設定するか?」ということでしょう。

例えば、家賃5万円の賃貸借契約で5万円の極度額(上限)ではそもそも保証にはならないでしょう。

では、6 カ月分の30万円ではどうか?というと・・・過失で物件が壊されたり、不足する公算が高いでしょう。
また、事件現場などになってしまった場合、しばらくは貸せませんし、家賃自体を下げる必要もあり、大変な損害額になるかもしれません。

逆に極度額(上限)1,000 万円ではどうでしょう? 家賃5万円の200倍の極度額(上限)というのは、世間的におかしいのではないか?と言われてしまうかもしれません。そもそも保証人から疑念を持たれてしまうでしょう。

では、どのように対処するか?

個人保証だけではどうしても限界があるので、個人保証以外に
(1)「敷金」を多く積んで貰ったり、
(2)家賃保証会社に「機関保証」を求めたり、
(3)「サブリース(一括借り上げ制度)」を利用する等して対応することになるでしょう。

また、この制度がいつから適用になるかという問題もあります。

5.今後の話・・・そもそもいつから適用されるのか?

賃貸借契約は継続契約が基本なので、継続している賃貸借に対しては適用にならないはずです。
ただ、法案可決時点で、施行後に賃貸借契約が更新されたときに、どうなるかが微妙です。

更新=新しい契約になることですから、付随する保証契約も新しくする必要があり、極度額が適用になる可能性があります。

自動更新で大家も借家人も更新を意識していないという賃貸借契約もあるでしょう。
その場合も極度額を定めないと保証契約が無効となるのか? 正直、よくわからないというのが現状です。

もちろん、極度額については口頭のみの約束はNGで、書面やデータ(電磁的記録)を介してする必要があります。

今後、保証人から請求された場合、大家は、債務の不履行の有無・残額などの情報を保証人に提供しなければなりませんし、借家人が滞納などして期限の利益を喪失したときは、大家は、そのことを保証人に通知しなければならない等、今まで以上に管理業務の手間が増えます。

また、借家人は、保証人に対して自分自身の財産及び収支の状況等の情報を提供しなければならず、借家人が保証人に情報提供しなかったり、虚偽の情報提供をして、大家がそのことを知っていた場合、保証人は保証委契約を取消すことができます。

つまり、契約時に「しっかり確認しています」と保証人との間で確認をしておかないと、借地借家制度は借り手側に非常に強い制度ですから・・・借家契約≒賃貸借契約は残るが、保証契約がなくなってしまうという最悪の状況も想定できるわけです。

【このコラムの著者】

佐藤益弘

東洋精糖(株)の不動産部門にてマンション開発・販売統括・管理支援などの主任を務める中、CFP®資格(FP)を取得。
オールアバウト・不動産投資(現土地活用)ガイドとして10年以上活動する中、延べ1000名以上の不動産投資家と触れ合い、成功事例&失敗事例を蓄積。

現在、お客さまサイドに立ったシンの独立系実務家FPとして、そのネットワーク確立のため、「マイアドバイザー®」を運営。
数少ない 金融商品販売を伴わない コンサルティング業務をメインとした~ お金の家庭教師≒教科書通りのFP として活動中。

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