橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

FP的不動産投資の基本的考え方②~不動産投資を始めるためのポイント~

前回はライフプランにおける不動産投資の位置付けについてお伝えしました。

今回は、今まで400棟以上の建築のお手伝いをしてきた実績と、私自身の不動産投資経験から、実際に不動産投資を行う際の心構えと、投資判断の考え方をお伝えします。

まず初めに確認しておきたいことは、不動産投資も他の投資と同様「資産運用」であるということです。資産運用である以上、「リターンとリスク」があります。

不動産投資で成功した人は成功体験を語りますが、失敗した人は沈黙しているのが常です。書店の不動産投資本コーナーには、不動産投資の成功者が書いた本が山のようにありますが、「私は不動産投資に失敗した!」というような本は見たことがありません。

ちなみにAmazon・本で「不動産投資」を検索すると何と2,100件以上ヒットしますが、「不動産投資 失敗」で検索してもヒットしたのはわずか32件、しかも書名を見る限り投資家自身の失敗体験を記した本はありませんでした。

これから不動産投資を考えている方も、聞こえてくる成功例だけを聞いて判断するのではなく、聞こえてこない失敗談もリスク情報として取り込む努力をし、不動産投資の判断材料としましょう。

自分のリスク許容度を知る

不動産投資には、安定収入、レバレッジが可能、手間がかからない、不労所得、場合によりキャピタルゲインを得られる、など様々なメリットがあります。

反面、以下のようなリスクも存在します。

・空室      ・賃料下落  ・金利上昇  ・修繕費の増大 
・入居者トラブル ・事故(火災、自殺、事件) ・災害
・賃貸環境の悪化など


長い賃貸経営には様々な出来事が起こります。長期間入居者が決まらない、滞納者がいる、入居者が火事を起こしてしまった、など思い通りにいかないこと、想定外のトラブルなどが発生することもあります。
また賃料の下落や修繕費の出費などストレスが溜まりそうな事柄は頻繁に起こります。

そのために、賃貸オーナーには一定のリスク許容度が求められます。リスクやトラブルに対し、パニックや思考停止に陥らないメンタルの強さと対応力が必要になります。

もちろん、重大なトラブルの発生頻度は非常に低く、また、的確な対処をすればほとんどが解決できますので、必要以上に恐れることはありません。

まずは自分のリスク許容度を理解し、不動産投資に向いているか否かを判断しましょう。

『不動産投資の常識』を知っておく

すでに不動産投資を経験している方は十分に理解されていると思いますが、これから初めて不動産投資をしようという方は、不動産投資のメリットばかりに目が行き、大切なことに気がつかないことがあります。
以下の項目は全て不動産投資では常識なのですが、見過ごしてしまいがちです。ぜひ今一度確認してください。

(1)本当の利回りは広告には出ていない
投資物件の広告をみると、通常掲載されている投資利回りは下の計算式で算出されています。

投資利回り=年間賃料÷物件価格×100

これを表面利回りといいます。

しかし実際には賃料の全てがオーナーに入る訳ではありませんし、物件の購入にあたっても物件価格以外に諸費用がかかります。つまり重要なのは、表面利回りではなく現実に近い実質利回りなのです。

投資利回り(実質利回り)=年間手取り収入÷購入時にかかる総額×100
=(賃料-管理費またはサブリース料-租税公課・維持費)÷(物件価格+諸費用)×100

当然、実質利回りは表面利回りよりも低くなります。サブリースの場合、2%近く低くなることもあります。
やはり不動産投資にあたっては実質利回りを用いて検討しましょう。
※今回は長期所有を前提としているので、売却時のキャピタルゲイン・ロスは考慮していません。

(2)利回りは購入時が最も高い
金融資産運用と異なり不動産投資の場合は、購入時の利回りがその後上がっていくことはほとんどありません。
その理由は、一般的に賃料は新築時が最も高く、経年により下落していくからです。空室や修繕費の発生などがあれば、収入は更に減少します。

そのため物件取得を検討する際には、新築時の利回りだけではなく、賃料下落を想定した長期の事業計画を立て、特にキャッシュフローで判断する必要があります。
また対策として、経年によっても利回りが落ちにくい物件を選ぶことも重要です。

(3)利回りが高い物件は手取り収入が多い?
相談者と話をしていると、とにかく高利回りの物件が欲しいという話をよく聞きます。
実は高利回りの物件の多くは、地方にあり入居が厳しい、築年数が古すぎる、建物の傷みがひどい、既存不適格で建替えができない、など高利回りにせざるを得ない理由を抱えています。

このような物件には、長期や低金利のローンが組めない、そもそもローンが組めない、など資金調達が難しく、借入では購入自体が難しい場合もあります。

だいたい誰も高利回りかつ良質な物件などよほどの事情がないと売りには出しません。

ここで、利回りの高さは本当に最も優先すべき条件になるのでしょうか。

皆さんは、イールドギャップということばをご存知ですか。

不動産投資におけるイールドギャップとは投資物件の利回りと借入金利の差のことです。イールドギャップが大きいほど収益が高いという見方をします。

例えば同価格の2つの物件のイールドギャップを比較すると、収益が多いのはどちらでしょうか。
〔物件A〕  物件利回り8%-借入金利4.5% =イールドギャップ3.5% 
〔物件B〕  物件利回り6%-借入金利2%  =イールドギャップ4% 

利回りの高い〔物件A〕よりも、利回りの低い〔物件B〕の方がイールドギャップが大きく、キャッシュフローも多くなります。

利回りの高さも重要ですが、それ以上に低金利での借入金調達は重要なのです。
なぜかというと低金利の融資が受けられる物件は一般的に、好立地、新築、十分な担保評価など条件が良く、入居状況も良く賃料も下がりづらいので、利回りもあまり下がらないからです。

結局、利回りより重要なのはキャッシュフローです。イールドギャップはキャッシュフローを計るためのひとつの指標になります。

(4)レントロールには見えない真実が見える
レントロールとは、投資物件の実際の入居状況、賃料、職業(学生、社会人)などを表にしたものです。中古アパートなどでは売主側から入手することができます。
レントロールを見ると、いくつかの推測ができます。

レントロール例

上のレントロールでは、全10戸の内、7戸が家賃約6万円、3戸が約7万円です。
現在は約6万円が家賃相場で、約7万円の住戸の入居者は家賃が高い時期からの長期入居者であることが推測できます。そのため、今後高い家賃の住戸の入居者が退室してしまうと、その住戸の家賃は相場の6万円前後に下がるでしょう。また退室しない場合でも、更新時に大幅な賃料減額を要求されるかもしれません。
そうなると利回りもキャッシュフローも今より下がってしまいます。

このように、レントロールから様々な事柄を読み取り、不動産会社に確認し物件を評価する必要があります。

まとめ

かのユリウス・カエサルは『人間は自分が見たいと思う現実しか見ない』という名言を残しています。
メリットだけでなく、リスクもきちんと捉えて正しい判断をすることにより、不動産投資はライフプランの実現を助ける強力な武器になるはずです。

私は、不動産投資はローリスクミドルリターンの投資であると考えています。正しい情報を入手し、ノーマルに考え、無理をせずに進める、そのスタンスが大切です。
見えないものを見るために、時には専門家のアドバイスも取り入れながら、成功を目指しましょう。

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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