橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

「安心R住宅」は日本の中古住宅流通を変えるか

空き家問題と中古住宅流通の現状

12月1日、国土交通省は既存住宅流通を推進するために創設した「安心R住宅」の事業者団体登録の受付を開始しました。

今回のテーマである「安心R住宅」とは何でしょうか?

お伝えする前に、先ず導入の背景を解説します。

しばらく前から大きな話題になっている「空き家問題」。いまやわが国の空き家率は13.5%、空き家の数は820万戸に達しています。(平成25年総務省「住宅・土地統計調査」)その中でも特に問題になっているのは、「その他の住宅の空き家」と言われる、賃貸住宅・セカンドハウス等以外の空き家です。いわゆる「実家の空き家」といわれる空き家で、全国に約318万戸あり、10年間で150%と大きく伸びており、今後もその傾向は続くと予測されています。
その要因には、少子化による人口減少、新築着工戸数の除却戸数に対する大幅な超過などがあげられますが、重要な要因の一つに中古住宅流通の少なさがあります。

日本の中古住宅流通シェア(総住宅流通の内、既存住宅流通の割合)は、わずか14.7%です。アメリカでは83.1%、イギリスは実に87.0%が中古住宅です。またフランスも68.4%と7割近くを中古住宅が占めています。(国土交通省平成27年「中古住宅市場・空き家活用促進・住み替え円滑化に向けた取り組みについて」)

中古住宅流通が活発でないと、空き家となった住宅が売却され、購入者が引き続きその住宅を利用するサイクルが成り立ちづらく、結果的に空き家の増加を後押しすることになっているのです。

ではなぜ日本の中古住宅流通が飛びぬけて少ないのでしょうか。日本人は一般的に「新築住宅好き」「中古住宅嫌い」といえます。平成25年「住生活総合調査」の消費者の持ち家意向でも、新築55.8%、中古13.9%と圧倒的に新築の人気が高いという結果が出ています。

ただし「嫌い」という言葉にはいささか語弊があり、正確には、「不安で買えない」「怖くて買えない」ということではないでしょうか。

戦後、特に高度成長期の住宅不足を背景に、質の悪い住宅が大量に供給され、それらが老朽化した時に、消費者のニーズに耐えられなくなったのではと推測します。
つまり、長年の間に住宅市場の中で中古住宅のマイナスイメージが消費者に刷り込まれてきた結果だといえます。

中古住宅のイメージは?

一般的に中古住宅のマイナスイメージとしてあげられるのは、
「不安」…品質が不安、不具合の恐れ
「汚い」…見た目が汚い、設備が古い
「わからない」…選ぶための情報が少ない、わからない
ことです。

反面、中古住宅には中古住宅ならではの良さもあります。
「新築に比べて割安」
「実際の住宅を見ることができる」
「あらかじめ周辺環境や近隣の状況を確認できる」
「安く購入できる分、リフォームにより自分好みの住まいに変えられる」
などの条件があてはまる中古住宅はとても魅力があるのです。

中古住宅流通活性化への民間の動き

実は、売却希望者にとっても、個々の住宅の価値が正当に評価されず、築年数によって一律に低い評価になってしまうという不満があります。せっかく建物の価値を維持・向上させるためにリフォームやリノベーションを行っても価格面で正当な評価されないために、あえて行わないという悪循環も生じています。

やはり中古住宅流通が活性化するためには、買主、売主が共に評価し受け入れられる売買システムが必要とされるのです。

民間では、すでに中古住宅の良さを活かし、中古住宅流通の活性化のために動き出しています。

・スムストック(大手住宅メーカー10社で構成される優良ストック住宅推進協議会・2008年より実施)
・R1、R3、R5住宅(リノベーション住宅推進協議会・2009年より実施)
いずれも、各団体が一定の基準に適合した建物に対して認定し、長期点検や一定期間の保証、保険を取り入れることなどにより、買主が安心して購入できるシステムを構築し、取扱い実績も順調に伸ばしています。

国もようやく動き出す

民間の後手になりましたが、国も中古住宅流通の活性化に向けてようやく動き出しました。
その目玉が「安心R住宅」です。

「安心R住宅」は、中古住宅が持っている「不安」「きたない」「わからない」のマイナスイメージを払拭するために、以下の要件を定めています。

「安心」……耐震性がある。インスペクションが実施されていて不具合がない。購入予定者の求めに応じて既存住宅売買瑕疵保険を付保できる
「きれい」基準に合致したリフォームが実施されているか、実施されていたい場合でも参考価格を含むリフォームプランの情報がある。写真等で、実施済みのリフォーム内容等の確認ができる
「わかりやすい」…広告時に情報の有無が開示され、さらに求めに応じ詳細情報が開示される
「相談できる」…事業者団体が相談窓口を設置している

これらにより、消費者が、「住みたい」「買いたい」と思える既存住宅を選択できることを目的としています。
基準を満たした「安心R住宅」には、標章が付与され広告時に標章を表示することができます。
標章は各登録事業者団体が付与するのですが、その事業者団体の登録が冒頭の通り12月1日に開始されたのです。すでに全国や地域の団体が登録を開始しています。前述の優良ストック住宅推進協議会も団体登録することを発表しています。

今後の「安心R住宅」に注目を

「安心R住宅」の実際の制度運用は2018年4月から開始します。
よって4月からは、広告時に、その中古住宅が「安心R住宅」かどうかが分かるようになります。
この制度の普及によって、徐々に中古住宅の持つマイナスイメージが払拭され、プラスイメージが広がると、中古住宅に対する価値観も変化し、また流通も活性化する可能性があります。
いずれにしても売主、買主双方にメリットが増えるでしょう。

制度上の問題も残されていますが、国が推進する「安心R住宅」が中古住宅市場の活性化を牽引するか、掛け声倒れに終わるのか。
期待をもって注目しましょう。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

他のコラム著者も見てみる

不動産投資家によっても違いは様々。
LIFULL HOME'Sが厳選した不動産投資家や専門家のコラムから色々な不動産投資スタイルを吸収してライバルに差をつけよう!

風戸 裕樹

シリーズ連載: 初心者のための東南アジア投資ガイド

最新コラム: 第2章 日本の不動産市場と海外投資(2)

金井規雄

シリーズ連載: アメリカ・ロサンゼルスで不動産投資 7年で1億円

最新コラム: アメリカ・ロサンゼルスで不動産投資

LIFULL HOME'S PRESS

シリーズ連載: HOME'S PRESS編集部

最新コラム: 新たに始まる「住宅ストック循環支援事業」は特色のある制度に

田中圭介

シリーズ連載: ASEAN地域の海外不動産投資の現状

最新コラム: 【No.20】 各国の不動産投資の現状 〜ベトナム編 その 4 ホーチミンの不動産で狙うべき場所は?

佐藤益弘

シリーズ連載: 不動産投資を始める前に知っておきたいこと・始めた後に確認したいこと

最新コラム: 国の空き家対策から考える 生き残る賃貸住宅の基準

菅井敏之

シリーズ連載: 誰も教えてくれなかった「銀行」~その傾向と対策~

最新コラム: 【第四回】必ず行っておきたい、銀行との「コミュニケーション」

LIFULL HOME'S不動産投資フェア

シリーズ連載: 2017/9/23 LIFULL HOME'S不動産投資フェア出展企業インタビュー

各出展企業インタビュー記事はこちら

LIFULL HOME'S マーケティング部 データ編集担当

シリーズ連載: ユーザーの本音から探る不動産投資

最新コラム: 将来性を秘めた街 『都心』エリア

鈴木 学

シリーズ連載: 海外物件の管理

最新コラム: 第九回「快速償却&節税物件に要注意」

石渡 浩

シリーズ連載: 不動産投資に有益な融資を受けるための知識

最新コラム: 第4回 税引後キャッシュフロー偏重の盲点 銀行は決算書のここを見る(後編)

北野 琴奈

シリーズ連載: 今後はどうする?不動産投資と資産形成・運用の考え方

最新コラム: 住宅を購入して、10年後に売却することを考えてみる

猪俣淳

シリーズ連載: 猪俣淳の「不動産投資の正体」

最新コラム: スルガ銀行第三者委員会調査報告書

右手 康登

シリーズ連載: CPM®流「相続・不動産経営 実践術」 右手 康登のコンサル「みぎからひだりへ」

最新コラム: 島国の中での常識 VS グローバルスタンダードを知ることの重要性

末永 照雄

シリーズ連載: 失敗しない不動産投資の法則

最新コラム: アジア新興国での不動産投資~タイ~

寺尾 恵介

シリーズ連載: 悩める投資家への「目からウロコが落ちる」アドバイス 誌上チャレンジ面談

最新コラム: 15.なぜ横浜には空きだらけの新築アパートが多いのか

伊藤 英昭

シリーズ連載: 伊東英昭氏の不動産投資コラム

最新コラム: vol.13 マンションと高級車

不動産投資・収益物件を検索するなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】賃貸経営[マンション経営・アパート経営]をお考えなら、まずは掲載中の投資物件[投資用マンション・売りアパート・一棟売りマンション]を地域や価格帯、会社で検索して、価格や想定利回りで絞り込み!気になる投資物件を見つけたら物件の周辺情報を調べたり、収益シミュレーションを使って実際の運用をイメージ出来ます。不動産会社へはメールか電話でお問い合わせ・相談が可能です(無料)。不動産投資による資産運用をお考えなら【LIFULL HOME'S 不動産投資】

ページトップへ