橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

データから読み取る今後の不動産市場・その1

国は毎年住宅や土地に関するさまざまな調査結果を公表しています。結果は主に直近の実績調査を基に作成していますが、それらをチェックすることで、市場の流れや潮目をある程度読み取ることができます。
最近公表されたいくつかのデータを例に、不動産市場の動向を解説します。今回は「建築着工統計調査報告」から住宅市場の傾向を見てみましょう。

4月27日に、国土交通省が「建築着工統計調査報告(平成29年度計)」を公表しました。
それによると、平成29年度の新設住宅着工戸数は946,396戸で、前年度と比較し2.8%減となり、3年ぶりに減少に転じました。

種類別では、
持家…282.111戸(前年比 3.3%減 3年ぶりの減少
貸家…410,355戸(前年比 4.0%減 3年ぶりの減少
分譲住宅…248,495戸(前年比 0.3%減 3年ぶりの減少
(内訳)マンション…108,278戸(前年比3.6%減 2年連続の減少
(内訳)戸建住宅…137,849戸(前年比2.3%増 3年連続の増加

地域別に見ると、
首都圏では、全体で4.6%減、全ての種類で減少していますが、特に分譲マンションの落ち込みが大きく12.0%減となっています。
中部圏では、全体では0.8%の微減ですが、分譲マンションは21.0%、分譲戸建住宅も5.0%増加しています。
近畿圏は、全体で4.1%減、首都圏と同じような動きとなりました。
その他の地域では、全体で1.4%減少、分譲マンションが23.3%増と大きく伸び、分譲戸建住宅も8.9%増と伸びています。

ざっくりまとめると、平成29年度の住宅着工は、持家、貸家とも減少に転じた、首都圏と近畿圏は大きく減少した、ということになります。
特に貸家については、昨春以降の金融機関の融資引締めと相続税基礎控除縮小による相続対策としての貸家着工が一段落したという理由が考えられます。

ところで、国土交通省は、今回の調査結果とは別に、1月31日に「建築着工統計調査報告(平成29年計)」を公表しています。
ここで読者の皆さんは、同じ統計を2回も公表しているのではと不思議に感じられるかも知れません。実は2つの統計は異なるものです。同じ「建築着工統計調査報告」でも、4月27日公表の統計は「平成29年度計」、1月31日公表の統計は「平成29年計」、つまり、「年」「年度」の違いです。
「平成29年計」は、平成29年の1年間、「平成29年度計」は平成29年4月から平成30年3月までと、同じ1年間の統計でも調査の期間に3ヵ月のずれがあります
そのため、この2つの統計を比較することにより、住宅・不動産市況の流れが見ることができます。

それでは、「平成29年計」の調査結果も見てみましょう。
それによると、平成29年の新設住宅着工戸数は964,641戸で、前年と比較し、0.3%減となり、3年ぶりに減少に転じている、となっていますが、まだこの時期においては、減少幅はわずかです。

種類別では、
持家…284,283戸(前年比 2.7%減 昨年の増加から再びの減少
貸家…419,397戸(前年比 0.2%増 6年連続の増加
分譲住宅…255,191戸(前年比 1.9%増 3年連続の増加
(内訳) マンション…114,830戸(前年比0.2%増 昨年の減少から再びの増加
(内訳) 一戸建…138,189戸(前年比3.3%増 2年連続の増加
と、まだ貸家と分譲住宅は増加していることが分かります。
報告の概要でも「平成29年の新設住宅着工は、貸家及び分譲住宅は増加したが、持家が減少したため、全体で減少となった。」というコメントとなっています。

ここで2つの調査結果の前年(前年度)増減率を比べて見ると、

平成29年計(1月公表)平成29年度計(4月公表)
〇新設住宅着工戸数(全体)0.3%減2.8%減
〇持家2.7%減3.3%減
〇貸家 0.2%増4.0%減
〇分譲住宅 1.9%増0.3%減
 (内訳)マンション0.2%増3.6%減
 (内訳)一戸建3.3%増2.3%増

2つの調査結果を見比べてみると、調査時期が3ヵ月ずれるだけで動きが大きく異なっていることが分かります。
今年に入り、住宅着工戸数は、全体でも、種類別住宅でも数値が悪化しています。
特に貸家は昨年1年間では微増でしたが、今年になって落ち込みが大きく、減少に転じています。
また、分譲住宅も、今年に入ってからのマンション着工の落ち込みにより、増加から減少に転じ、一戸建は増加幅が縮小しています。

つまり、1つのデータを精査することも大切ですが、複数の連続したデータを利用し事象の流れや潮目を読むことは、不動産投資にあたっても重要です。
具体的には、今は高止まりしている不動産価格ですが、このまま住宅着工の下降トレンドが続くと、受給バランスから価格にも影響が出てくることが考えられ、高止まりから下落へと転じ、さらにその下落が進むのではと予測できます。もちろん賃貸需要の先行きも見越した上での話ですが、低い価格で不動産購入ができれば、投資利回りの向上につながり、安定経営への追い風になります。
今後も不動産投資は、全体の流れ、潮目から事業計画の検討に入り、成功に導いていただきたいと思います。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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