橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

データから読み取る今後の不動産市場・その2

国は毎年住宅や土地に関するさまざまな統計を公表しています。これらをチェックすることで、市場のトレンドがある程度読み取れます。前回は「建築着工統計調査報告」の年計と年度計の時間差から新築住宅着工数の傾向を見てみましたが、今回は、3月27日に公表された「地価公示」から、見えにくい地価の現状と今後の傾向を読み取りましょう。

国土交通省による今年の報道発表の見出しは、「地方圏で26年ぶりの地価上昇」でした。
更に、
【全国平均】住宅地の平均が10年ぶりに上昇。商業地は3年連続の上昇、工業地は2年連続の上昇。全用途平均は3年連続上昇
【三大都市圏】住宅地、商業地および工業地のいずれも、各圏域(東京圏・大阪圏・名古屋圏)で上昇。大阪圏は、住宅地はわずかな上昇だが、商業地の上昇率は三圏で最も高い。
【地方圏】住宅地の下落幅の縮小傾向が継続。商業地及び工業地は26年ぶりに上昇、全用途平均でも横ばいに。
とコメントしています。

これらを読むと、いよいよ全国的に地価下落は底を打って上昇に転じ、今後しばらくは期待感が持てる、という感想を持つ方も多いのではないでしょうか。

ところで国交省は、特徴的な各地点の動向も公表しているので、主な所在地と地価の変動率、要因を以下にご紹介します。※地価は㎡当り。( )内の%は前年比上昇率

●最高価格地帯における地価動向
 ◎東京・銀座(価格全国1位)…店舗賃料が堅調に推移。地価(以下同)5,550万円(9.9%)
 ◎東京・赤坂(住宅地価格全国1位)…高級マンション需要による素地需要。401万円(9%)
 ◎東京・四ツ谷…高級住宅地需要は堅調、客層が限られる。385万円(2.7%)
 ◎大阪・なんば(価格大阪圏1位)…外国人観光客増加等による出店需要。1,580万円(22.5%)
 ◎大阪・梅田…事務所需要堅調。店舗需要は見込めない。1,500万円(7.1%)

●再開発事業等の進展
 ◎福井駅周辺…駅西口再開発、北陸新幹線期待。24.8万円(5.1%)
 ◎長崎駅周辺…再開発事業、観光客増加。51万円(19.7%)

●観光・リゾート需要の高まり
 ◎倶知安…スキーリゾート地域の店舗・賃貸住宅需要。2.8万円(33.3%)
 ◎高山市…国内外の観光客増加による店舗需要。29.9万円(9.9%)
 ◎奈良市…旧市街への観光客増加による店舗需要。22万円(10%)
 ◎石垣市・宮古市…離島観光の増加。それぞれ13.1万円(5.6%)、6.05万円(4.3%)

●物流施設等の需要の高まり
 ◎五霞町(茨城県)…圏央道全線開通による物流施設需要。3.33万円(11.0%)
 ◎久御山町(京都府)…新名神高速道路開通による物流施設需要。7.5万円(8.7%)
 ◎豊見城市(沖縄県)…国道バイパス整備による物流施設需要。4.65万円(27.4%)

上記から、地価上昇地点のキーワードが見えてきます。
●都心の一等地、マンション用地
●駅前再開発
●観光地(外国人観光客)
●物流施設
つまり、これらのキーワードが当てはまる地点の地価は大きく上昇したということになります。

それでは、キーワードが当てはまらない地域はどうでしょうか。
ここで、地方圏の住宅地を見てみましょう。

確かに、大見出しでは、「地方圏で26年ぶりの地価上昇」となっています。しかし、上がっているのは主に商業地で、冒頭にご紹介したコメントの中に「地方圏の住宅地は下落幅縮小が継続」とあるように、実は住宅地の値下がりはまだ続いています

たとえば、南海日日新聞(3月28日付)では、「鹿児島県内の商業地は10年ぶりにプラスに転じたが、住宅地は26年連続で下落した」と報じており、他県でも同様の報道が多く見受けられます。

つまり、「全国平均で、住宅地の平均が10年ぶりに上昇」したのは、三大都市圏を中心とした利便性の高い住宅地の地価上昇が、地方圏の住宅地の地価下落を打ち消した結果と言えるでしょう。

住宅地においては、居住という実需が伴って市場価格が形成されます。そのため今後人口の減少が見込まれる地域では中長期的に地価は下落していきます。

反面、これを不動産投資から見てみると、賃料の下落が地価下落より抑えられれば、投資利回りのアップが期待できます。今後地価下落の局面で生き残るエリアもあります。賃貸ニーズの強いエリアを探すこと、キャピタルゲインよりもインカムゲインをメインに安全な事業計画を立てることで、目的にかなった不動産投資ができる可能性も高まります。

なお、あまり知られていませんが、地価公示では数多くの参考データや説明資料を公表しており、たいへん面白く興味深い内容です。
いくつかの例を挙げると
●沿線別駅周辺住宅地の公示価格(地図)
●市区別の対前年平均変動率
●最寄り駅からの距離別の平均変動率
●地価公示標準地(全用途)の変動率分布(平成20年と平成30年の地図)
●地価公示価格形成要因等の概要(都道府県別に分析) …など

上の表から駅からの距離により、地価の変動率も大きく変わることが分かります。

一度、国土交通省のホームページから、地価公示を覗いてみることをお勧めします。
国が毎年力を入れて行っている調査を、ぜひご皆さんの不動産投資検討のための材料として活かしてください。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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