橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

データから読み取る今後の不動産市場 その3

7月2日に国税庁が平成30年の路線価を発表しました。
路線価の動きは、「データから読み取る今後の不動産市場その2」でも解説した公示価格にほぼ連動するので、結果の分析も含め大きなサプライズはありませんでした。やはり今後の都心部やリゾート地と地方圏の住宅地の二極化に注意したいところです。

今回は、企業が発表しているデータから今後の不動産投資市場を考えてみたいと思います。
不動産投資を検討するにあたって、大手アパート建築会社の業績動向は押さえておきたいポイントの1つです。賃貸住宅の建設において、大きなシェアを占める大手アパート建築会社の業績や方針が市場に与える影響は小さくはなく、やはり無視する訳にはいきません。

まず、着工戸数上位3社の大東建託、大和ハウス、積水ハウスの受注状況を見てみましょう。
多くの住宅メーカーは、毎月の受注状況を翌月上旬に各社のホームページ上で発表しています。
それによると今年に入っての3社の受注状況は下表の通りです。

表を見ると、最近6カ月間の累計比は、大和ハウスが微増、積水ハウスと大東建託は昨年を下回っており、2社は単月でも3月を除き5カ月が前年同月比マイナスとなっています。
また累計では微増の大和ハウスも直近2カ月では前年同月比マイナスに転じています。これはどのような意味を持つのでしょうか。

各社とも2017年度(大和ハウス、大東建託は3月、積水ハウスは1月)の決算発表では過去最高益を更新しています。
通常、建築会社の売上や利益は、受注時(契約時)ではなく、着工から完成までの進捗状況に応じて計上されます。
建築計画の規模や立地にもよりますが、賃貸住宅では受注から着工までに少なくとも3カ月程度はかかり、完成までには早くても半年、1年以上かかることもざらにあります。
ということは、今受注しても売り上げになるのは、数カ月から1年以上先ということになります。
大手各社が2017年度に最高益を更新したのは、その前の2016年度から2017年度前半までの受注が絶好調だったからと言えます。

反対に、住宅メーカーの業績見込みは、受注状況を見れば数カ月から1年前にはある程度読めることになります。
今期2018年度については、上表のように今期前半の受注が低調でも、前期2017年度の受注のストックが豊富にあるので、なんとか良い業績は残せるでしょう。

しかし来期以降の売上・利益はこれからの受注の伸びにかかっています。
ところが上表の通り、最近は各社受注に苦戦しています。
受注減少の理由は、
・2015年の相続税改正(基礎控除の縮小)によって増加した相続対策としての建築の反動
・金融機関のアパートマンション向け融資の引締め
・賃貸住宅の供給増による入居率の悪化の不安
・建築費の高騰による採算性の悪化
などがあげられます。

7月21日付日本経済新聞に、大東建託の業績の第1四半期(4~6月)の連結経常利益が7年ぶりに減益になったとの報道がありました。同紙によると、受注減と工事採算悪化が影響しているとしています。
このような受注の鈍化、減少傾向が見られるここ数カ月のトレンドが変わらず続くようなら、来期以降の新築賃貸住宅の着工数も減少するでしょう。

当然この供給減少の状況を不動産投資参入のプラス材料として捉える向きもあるでしょう。市場に競合相手が少ない状況では、優良物件を安く取得する力のある不動産投資家には、低金利を背景に安全な投資を行うチャンスでもあります。
今後も大手アパート建築会社の毎月の受注動向をチェックしながら、不動産投資の将来はどうなるのか、その先には何があるのかを様々な視点から捉えてみてはいかがでしょうか。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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