橋本秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

「不動産投資分析」の基本は押さえておきましょう

昨年から大きな問題になっている「かぼちゃの馬車」問題ですが、スルガ銀行の不適切な融資審査状況が明らかになってきました。
不適切な審査のひとつとしてあげられているのが、二重契約書の見逃しです。
通常、銀行は物件に対する融資額の割合を決めていて、投資家は物件価格と融資額の差額を自己資金で充当しなければいけません。そして自己資金が拠出できない事案には融資を行いません。

例えば、融資割合90%と定めている銀行が、価格1億円、諸費用500万円の物件に融資する場合、融資額の上限は1億円×90%=9,000万円ですから、必要な自己資金は残りの1,000万円と諸費用500万円の合計1,500万円になります。

ところが自己資金の1,500万円を準備できないときに、契約書の物件価格を1億1,700万円に書き換えてしまえば、融資額の上限は、1億1,700万円の90%=1憶530万円となるので、諸費用も含めて自己資金は不要になります。

このような手口を使って事業者はスルガ銀行から融資を引き出し、スルガ銀行側も見て見ぬふりをしていたということです。

融資額が多くなれば、返済額が増えてしまうため、今度は賃料を高く設定するなどつじつまを合わせるという不正の連鎖によって融資承認を得ていたと考えられます。

さて、ここからが本題です。
報道によると投資家の人たちは事業者や銀行を全面的に信じていたということです。その信じた相手が不正や不適切な手続きを行っていたということなので、投資家には気の毒な面もありますが、今回のトラブルについては、どうしても投資家側の不動産投資に関するリテラシー不足も感じざるを得ません。
不動産投資を始めるにあたっては、少なくとも投資家側も最低限の知識を持ち、危ない投資話から身を守る必要があります。なぜなら投資は自己責任が原則だからです。

株式投資においても、いくつかの基本的な投資判断の手法、例えばテクニカル分析、ファンダメンタルズ分析、インデックス投資、アクティブ投資、PER、PBR、ROEくらい用語の意味を知らないで投資をする人はほとんどいないのではないでしょうか。

不動産投資も株式投資と同様、投資分析の手法があります。
今回は、不動産投資家として覚えておいたほうが良いと思われるいくつかの投資分析手法についてお伝えします。

【DCF法(割引キャッシュフロー法】
DCF法とは、投資物件の保有期間中に生み出される純収益の現在価値の総和と、保有期間満了時の売却価格の現在価値を合算して、不動産の収益価格を求める方法です。
毎年1,000万円の利益があったとしても、インフレ下では、今年の1,000万円と5年後の1,000万円の価値は違ってきます。そのため将来の収益にはインフレ率を加味し、今の価値に置き換えなければなりません。そのような方法で価格を求める方法がDCF法です。
DCF法は不動産投資以外にも長期投資には欠かせない投資判断手法です。

【NPV法(正味現在価値法)】
NPV法は、DCF法で求められた収益価格と物件価格を比べて、物件価格が低ければ投資の価値があり、物件価格が高ければ投資の価値なし、と判断する方法です。

〔DCF法、NPV法を用いた事例〕
物価上昇率2%の予測下で、毎年末に1,000万円の賃料があり、かつ5年経過後に1億円で売却することが見込める物件を1億2,000万円で紹介されました。この物件は投資価値があるでしょうか。

この場合、まずDCF法による収益価格を計算します。計算方法は以下の計算式の通りです。

(1) 1年目の家賃収入 1,000万円×1/1.02≒980.4万円
(2) 2年目の家賃収入 1,000万円×1/(1.02)²≒961.2万円
(3) 3年目の家賃収入 1,000万円×1/(1.02)³≒942.3万円
(4) 4年目の家賃収入 1,000万円×1/(1.02)⁴≒923.8万円
(5) 5年目の家賃収入 1,000万円×1/(1.02)⁵≒905.7万円
(6) 売却価格 1憶円×1/(1.02)⁵≒9,057万円
(1)+(2)+(3)+(4)+(5)+(6)≒1憶3,770万円(収益価格)

そしてNPV法により投資価値の有無を判断します。
この事例の場合は、物件価格が1憶2,000万円で収益価格より低いので投資価値ありと判断できます。

【DSCR(借入金償還余裕率)】
年間のキャッシュフローが年間の返済額に対して、どの程度余裕があるかを見る指標です。
元利返済前の年間純収益を年間元利金返済額で除して計算します。
この数値が高ければ高いほど、返済に余裕があるという判断ができます。
不動産投資においてのDSCRは、一般的に1.6倍以上が安全の目安になります。
〔事例〕
ある物件の年間純収益は2,000万円、年間の元利金返済額の合計は1,500万円です。この事業計画は安全といえるでしょうか。

〔計算式〕
2,000万円/1,500万円=1.33倍
安全の目安である1.6倍を下回っているので安全とは判断できません。

投資分析の方法には、この他にも
「IRR法(内部収益率法」、「返済比率による判断」などがありますので、一度は目を通していただきたいと思います。

事業者側も、このような投資分析手法を用いて説明してくることがありますが、投資家としては、最低限の投資分析の内容は理解し、また自らも判断できるようにしておくことが、危ない投資を行わないための防衛手段になります。
合わせて、物件自体(敷地、プラン、レイアウト、構造など)の確認、近隣相場の調査なども投資家自らが行うことが大切です。
最低限の投資分析の知識を持ち、また物件調査を行っていれば、怪しい話に疑問を持つこともでき、被害はもっと抑えられたのではないかと思います。
不動産投資リテラシーを高めてリスクを最小限に抑えられるようにしましょう。

【このコラムの著者】

橋本秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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