橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

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人気アパートのつくり方(5) 不動産投資判断に最も大切なこと

昨年2018年の漢字は「災」でした。不動産投資の世界においても災い多き年だったと言えます。
年初の「かぼちゃの馬車」のシェアハウス問題から始まり、スルガ銀行の不正融資、積水ハウスの地面師被害、一部上場のTATERUの融資資料改ざん、銀行の融資引締め強化など、1年を通してここまで立て続けに大きな出来事が起こった年は珍しいのではないでしょうか。
そして、今年になっても、昨年5月に明らかになったレオパレスの界壁施工不備の問題が連日大きく報道されています。これからも混乱は続くと見られますが、今回のケースも極めて悪質な事件と言えます。

ただ、最近の不祥事や事件を見ていると、不動産投資にとって最も大切なことがおろそかにされている気がします。
それは、「自らの目で見る」ことです。
これは、「実際に自分の目で見て確かめる」ことはもちろんですが、同時に、「自分で調べる」「自分で考える」ということも含んでいます。

なんだ、そんなことは当たり前、と言われる方もいると思います。
ところが、そんな簡単に思われることが、意外にできていない人が少なくありません。

昨年は「かぼちゃの馬車」問題に関していくつかのコラムを書きましたが、今回のレオパレスの問題も「かぼちゃの馬車」と大きな共通点があります。
それは、どちらも被害に遭った人の数があまりに多いことです。
かぼちゃの馬車では約700人もの不動産投資家の方が被害に遭いました。そして今回のレオパレスの問題では、住み替えまで必要な物件が全国で600棟以上あったことが明らかになっています。ということは、相当な数のアパートオーナーがレオパレスを選んでいたということになります。その中には1人で複数のアパートを建築している人がいるとしても、オーナー数は数100人にのぼるでしょう。
2社の事件はオーナーにとっては「詐欺」そのものであり、会社側に罪があります。

しかし、被害に遭われた投資家の中でどのくらいの人が「自分の目」で投資の判断をしたのでしょうか。

確かに、レオパレスの界壁不備の対象物件は最近建築されたものではなく、今のところ、2008年以前の物件とされています。
それでも、以前から同社のアパートの壁の薄さ、遮音性の低さはよく知られていました。
「隣の部屋の人のいびきが聞こえる」「何もしていないのにテレビのチャンネルが変わった」など笑えないジョークもたくさんありました。
界壁は、通常2枚重ねの石膏ボードの間にグラスウールをサンドイッチする構造になっており、隣室からの類焼を防ぎますが、併せて遮音性も高くなります。ところが隣の音がよく聞こえるということは、界壁の構造自体を疑いたくなります。
今回の問題は、小屋裏の界壁が無かったということで隣室の音とは直接関係はありません。ただ、界壁不備まで思い当たらなくても、実際にレオパレスの物件を自ら調べれば、明らかに遮音性の低さは分かったと思いますし、その判断でアパート建築をやめていれば、結果的に界壁問題に巻き込まれなかったのでは、とも考えてしまいます。
結局建築会社のセールストークをそのまま信じて、「自分の目」を使わなかった結果が、ここまで多くの人がトラブルに巻き込まれた原因のひとつと思わざるを得ません。
1本のボールペンを買う時にはデザイン、機能、書き心地などを良く見て確かめるのに、その数万倍の金額の不動産投資に関しては供給者側の言うことを一方的に信じて自分の目で確かめることをしないのは不思議です。

筆者もアパートの営業を30年以上続けていましたが、建築を検討しているお客様には、必ず実物件を案内し、隣の音や2階の足音を聞いてもらうなど、構造・性能を含めて建物の確認をしてもらっていました。
これらのことは素人でも確認できることです。自分は素人だから見てもよく分からないと言われることがあります。でもそうではありません。実際の入居者も素人ですから、実は素人の目のほうが正しいことが少なからずあります。
たとえば、物件を見た時に感じる、この部屋に自分が入居したいか、あるいは自分の子どもに入居させたい部屋か、などという感覚はとても大切です。

同じことが投資物件の調査でも言えます。
物件資料に駅から8分と表示してあっても、これは単純に80mを1分と換算しているだけの数字です。駅から物件に至るまで、急な坂道を登ったり、大きな道路や踏切を挟んでいると、8分ではたどり着けないこともあります。また、人通りの少ない暗い道、お墓の横を通る道など、夜の帰り道に不安はないか、駅から部屋までの途中に買い物ができるお店があるかなどは、実際に歩いてみないと分かりません。
このように自分の目で確認して物件選びをすることは、不動産投資のリスクを下げることに結びつきます。

つまり、自分は素人だからと最低限の確認を放棄するという理屈を言う人は、その時点でそもそも投資をする資格がないと思わざるを得ません。

不動産投資が株式投資や他の金融商品と最も異なることは、目に見え、確かめられる商品であるということです。もちろんセオリーによる投資判断や専門家のアドバイスを仰ぐことも大切です。
しかし、もっとも簡単で確実な判断が自分の目でできるという有利性を活かさない手はありません。

不動産投資だけでなく、物事を成功させるためには、3つの目が大切と言われています。
俯瞰して全体を眺める「鳥の目」、詳細を細かく分析する「虫の目」、潮目(潮の流れが変わること)を敏感に読み取る「魚の目」です。
さまざまなセミナーでも取り上げられますし、筆者が登壇するセミナーでもこの話をすることがあります。
そのときに、3つの目に必ずもうひとつ加えてお話をしています。
「鳥の目」
「虫の目」
「魚の目」
「自分の目」

4つの目を大切に、不動産投資判断をされることをお勧めします。

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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