橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

不動産投資家の最強のライバルは?①

この不動産コラムでは、大きく分けて2つのテーマについて執筆しています。
ひとつはFPの立場から、社会の動き・公的なデータ情報と不動産投資との関係性について、もうひとつは筆者自身の経験(ハウスメーカーでの営業および不動産関連の業務、元サラリーマン大家で現在も大家業)から得た不動産投資のノウハウについてです。
このところ前者が続いたので、これからしばらくは、もうひとつのテーマを中心にお伝えします。(ときどきトピックスとして時事ネタを挿入することもあります)

さて、FPとして独立してから、不動産投資を希望している人の相談が増えました。そうした中で、最近あらためて強く感じていることがあります。このことは、不動産投資を希望している人は投資を行う前に、あらかじめ心に留めておいていただきたいと思っています。

それは不動産投資家には、すでに最強のライバルが待ち受けているということです。
不動産投資が成功するためには、高い入居率の維持が必要ですが、入居者の獲得には強力なライバルがいます。当たり前のことを言うようですが、ここでのライバルは他の不動産投資家のことではありません。もちろんそれもありますが、はるかに強力なライバルがいます。それは土地オーナー(=地主さん)です。

前述の通り、筆者は長年にわたり不動産活用の営業をしていましたが、在職中の顧客には不動産投資家はほとんどいませんでした。ほぼ全ての顧客が不動産活用を考えている土地オーナーでした。
ここで不動産投資と不動産活用との違いですが、おおまかに言うと、不動産投資は土地も含めて投資物件を取得すること、不動産活用はすでに所有している土地の有効活用を行うことです。そのため土地活用とも言います。
このような顧客をハウスメーカーの営業は不動産投資家とは呼びません。通常は「地主さん」や「農家さん」あるいは「土地オーナー」と呼んでいます。ほとんどの地主さんは土地を相続や贈与で取得しています。それに対し、不動産投資物件を購入する顧客は「不動産投資のお客さん」と呼んでいました。

地主さんがなぜ最強のライバルか?その理由は、地主さんは以下の賃貸経営をすることが可能だからです。

土地取得のための費用が不要です。そのためフルローンでも建築費と諸費用分だけで足りるので借入額も少なくてすみます。

融資金利が優遇されます。金融機関は融資の可否や金利を決定するにあたり、借入れ人の属性の審査や物件の評価を行います。地主さんは資産背景もあり属性も一般的に高い人が多く、金融機関にとっても長く付き合うメリットがある上客になり得ます。現状の土地活用で1%を超える金利提示はここ数年ほとんど聞いたことがありません。1%後半でも低いと感じる不動産投資の借入金利よりも明らかに有利です。

③土地分の借入がなく低金利の融資を調達できる結果、キャッシュフローも向上し、安定経営を図ることができます。

④新築のため、当初は入居者に新しい賃貸住宅を提供できます。

⑤キャッシュフローに余裕があるので、その一部をゆとりのあるプランづくりや設備仕様のグレードアップに充てることが可能です。実はこれが最も重要なポイントです。
不動産投資物件では、1棟ものは専有面積が20㎡未満の住戸も珍しくないですが、筆者の在職中、特に平成以降は、単身者向けでも20㎡を切るプランは皆無でした。最低でも専有面積は25㎡以上を確保し、中には40㎡のプランも珍しくありませんでした。広さは入居の強い選択ポイントで、入居希望者の第一印象も違います。

高い入居対応力があります。もともと活用の目的が、賃貸経営で高い利益を上げることよりも遊休地の利用や相続税対策を目的としているため、いざとなれば賃料も値下げして入居対策ができます。もともとキャッシュフローが高いため、多少の賃料値下げで経営危機に陥ることもありません。

一言でまとめると地主さんは、競争力の高い賃貸住宅を適正あるいは低めの賃料でも提供することができる余力があるということです。
入居者は賃貸住宅が不動産活用によるものか不動産投資によるものかの区別はつきません。同じ賃料であれば、広くてグレードの高い賃貸物件を選択します。そうなると結果的に不動産活用による賃貸住宅が選ばれている可能性が高いと言えます。

地主さんの中には、心ない賃貸営業の口車に乗せられてせっかくの武器を生かさず、さらに無理な経営をしようとして失敗してしまう人もいますが、これらの地主さんは建物や市場を自分の目で見ていません。しかし多くの地主さんは競争力の高い賃貸住宅を賃貸市場に投入しているのです。

それに対して不動産投資は、土地も含めて購入するため、利回りを向上させるためにはどうしても建物にしわ寄せがきます。専有面積を狭くしてでもできる限り戸数を詰め込み、強気の家賃を設定し、少しでも机上の利回りを上げようとします。
かぼちゃの馬車など一連の問題も、この視点から発生したと捉えることができます。利回りを無理やり上げようとして、とても入居者に選ばれないような建物をつくり、割高な賃料を設定して結局破綻しました。

それでは不動産投資家は地主さんになれないのでしょうか。
実は、なることは可能です。
それには、少なくとも土地の価格分は自己資金で購入することです。その時点で不動産投資家は地主さんになります。そうすれば他の属性と併せて1%の金利を下回るアパートローンを利用できる可能性も高くなります。

不動産投資家が、土地購入の必要性のない大家さんに利回りで勝てないことは当たり前の事実です。そこで無理に利回りをアップさせることよりも、大家さんの賃貸住宅に負けない商品をつくることが、最終的には投資の成功につながります。
これから不動産投資を希望している人は、一度最近のハウスメーカーの賃貸住宅を見学することをお勧めします。目から鱗が落ちるかもしれません。高品質な商品を提供し、入居競争力で地主さんに勝てる賃貸経営を目指してください。
次回は、次に現れた強力なライバルについてお伝えします。

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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