橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

不動産投資家の最強のライバルは?②

前回のコラムでは、不動産投資家のライバルである土地オーナーの存在について解説しました。土地オーナーの優位性は、「もともと土地を所有している=土地への投資額が不要」であること、また土地活用において利回り至上主義という考えが前提ではないことから、魅力的で競争力のある賃貸住宅を提供できる余力があることです。

今回は、土地オーナーと同様、あるいは土地オーナー以上に不動産投資家にとって脅威となり得るライバルについてお伝えします。

CRE、あるいはCRE戦略というワードを耳にしたことはあるでしょうか。
CREとは、企業が所有する不動産のことでCorporate Real Estateの略語です。
日本の多くの企業は不動産を所有しています。2015年の公表資料(注1)では、その規模は約470兆円にも達しますが、それら全てが必ずしも有効に活用されてはいません。そこでCREを最大限に活用し、企業価値を向上させようという考え方があり、これをCRE戦略といいます。
具体的な活用方法の例としては、
・工場敷地の一部に社宅を建設
・事業を転換して賃貸住宅を建設
・駐車場から店舗・事務所・賃貸マンションに事業拡大
などがあり、他にもオフィス、商業施設、ホテル、医療・介護施設などさまざまな活用があります。

CREというワードは30年以上前からありますが、ここ数年、企業のCRE戦略による不動産活用が目立ってきています。最近では、社員を確保するために社員寮や社宅を充実させアピールする企業もあります。
大手不動産会社やハウスメーカーなども企業のCRE事業に注目し、企業への働きかけを推進しています。

企業がCRE戦略により賃貸住宅の建設をすると、そのエリア内の賃貸物件は少なからず影響を受けることがあります。
企業が供給する賃貸住宅には、敷地のスケールメリットを活かした大規模な物件も多く、高い競争力を持つ賃貸住宅として賃貸市場に供給されます。

また、福利厚生としての社宅や寮の建設は、不動産投資家のみならず、土地オーナーにとっても脅威となることがあります。
以前、筆者が居住する県内で、あるメーカーが工場敷地の一部に300世帯を超える独身寮を建設したことがありました。その時には多くの従業員が周辺のアパートやマンションを引き払い入寮し、さらに新規採用の従業員も入寮したため、周辺では空室物件が増え、多くの賃貸オーナーが大打撃を受けたことがあります。近隣に大企業などがあり、入居需要が安定している地域においても、ひとたびCREにより企業に入居者を奪われてしまうと、需給関係は一気に崩れます。
そのため、不動産投資家も周辺の企業の動向にも注意することが大切です。

さらにPREというワードがあります。
PREは、Public Real Estateの略で、国や地方公共団体が保有する不動産のことです。公的不動産は全国に約570兆円あり、そのうち約420兆円を地方公共団体が所有しています。(注1)
地方公共団体でも厳しい財政状況の中、所有不動産を貴重な資産と捉え、財政健全化と経済の活性化に結び付ける動きが加速しています。民間の資金やノウハウをもとに、遊休地などの活用や非効率な土地利用の見直しを行うことをPRE戦略と言います。
PRE戦略では、地方公共団体と民間と連携し、証券化や定期借地権を始めさまざまな手法で有効活用を行うことにより、地方公共団体は財政負担をせずに新しい公共施設などを確保し、連携企業は共同住宅や商業施設などを建設し収益を得ることができます。
PRE戦略によって、公営住宅、賃貸マンション、分譲マンションなどの住宅物件が建設されると、不動産投資家にとって競合物件が供給されることにもつながります。

周辺のCREやPREの動向を注視しながら不動産投資を行うことはもちろん、どんなライバルが現れても競争力のある魅力的な物件の供給を心がけることが重要です。

(注1)国土交通省「公的不動産(PRE)の活用事例集の公表について」2015年5月22日

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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