橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

不動産投資で押さえておきたい土地の公的価格

9月19日に全国の基準地価が発表されました。
公示価格や路線価に続き、今回の基準地価発表時の報道でも、「引き続き全国的に地価は上昇」と「二極化」というキーワードが目立ちました。
これは、全国的には地価は上昇したが、実情は、上昇率の高い地域が全体を押し上げており、下落している地域も多くあったということを意味しています。この傾向は、ここ数年続いており、二極化は今後も継続する予測されます。

これで今年は全ての公的な地価が公表されたことになります。
ところで、なぜ次々にいろいろな地価が発表されるのかと疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、公的地価の種類や不動産評価の考え方を解説するとともに、今後不動産投資を行う際に押さえておきたいポイントについてお伝えします。

日本の地価は一物四価

日本には、公的な土地価格(以下、公的地価)が4種類存在します。そのため日本の土地は「一物四価」であると言われています。
なぜひとつの土地に4つも価格があるのでしょうか。それは、それぞれの公的地価には別々の利用目的があることによります。
まず、4つの公的地価について整理しましょう。

①公示価格(基準日1月1日。3月中旬~下旬に公表)
公示価格は、国土交通省が全国26,000地点の標準地を定め、毎年調査・公表している価格で、一般の土地取引の指標とされています。また、多くの地点の定点観測を行うことにより、地価の動向を分析することもできます。

②基準地価(基準日7月1日。9月中旬~下旬に公表)
基準地価は、公示価格と同じく一般の土地取引の指標とされ、都道府県が全国約21,000地点の基準地を定めて調査しています。基準地価は、公示価格より半年遅れの調査のため、公示価格を補完するものとされています。

③路線価(1月1日が基準日。7月1日に公表)
路線価とは、道路に面した土地の評価額のことで、国税庁が相続税や贈与税の課税価格を計算するために道路ごとに価格を決定しています。土地の評価額は、路線価に必要な調整(奥行、間口、不整形、角地など)を行い、土地面積をかけて算出しますが、これを路線価方式と言います。
なお、路線価は公示価格のおおむね80%の水準で設定されています。
路線価方式は主に市街化区域で適用され、市街化調整区域では倍率方式という別の方法で土地の価格を計算します。

④固定資産税評価額(1月1日が基準日。公表は市町村により異なるが4~5月)
固定資産税や都市計画税、不動産取得税を計算するために市町村が決定しています。
他の公的地価は毎年調査しますが、固定資産税評価額だけは3年毎に見直しされます。
なお、固定資産税は、公示価格のおおむね70%の水準で設定されています。

公示価格、基準地価に加えて路線価も、土地の取引価格の参考になるとされています。
公示価格や基準地価は全国でもそれぞれ2万強の地点の価格しかありませんが、路線価は市街地であれば原則としてどの道路にも付いているので、ほとんどの土地では路線価を80%で割り返せば、その土地の公示価格、すなわち取引価格の目安が計算できるからです。

投資物件は公的地価より収益還元法

公示価格などが取引価格の指標になることは前述の通りですが、投資物件については、それは必ずしも当てはまりません。その理由は、投資物件の価格は投資利回りで決まることが多いからです。

例えば投資家が利回り8%以上の物件を探しているときに、年間600万円の賃料収入がある物件は、
(600万円÷8%=)7,500万円以下の価格であれば「買い」ということになります。
このとき物件価格は、特に公的な価格を参考にはしていません。
このように賃料収入を利回りで割り返して不動産価格を求める手法を収益還元法といいます。
他の手法としては、原価法取引事例比較法があり、これらのうち、複数の手法を組み合わせて不動産価格を求めることもあります。

それでも公的地価を押さえておくべき2つの理由

投資家が投資物件を購入する大きな判断基準は投資利回りですが、それだけではなく、公的地価も押さえておいたほうが良い理由が2つあります。

ひとつは、融資額や必要自己資金を把握するためです。
アパートローンを貸す側の金融機関の審査では、物件の担保評価は路線価や公示価格を元に算定しています。
融資額は原則として担保評価額を限度としていますが、金融機関により路線価の80%、公示価格の70%などと決められていています。例外的に上限を超えても借りることができるのは、金融機関とのつながりが深い、資産背景や収入など属性がたいへん良い、他に担保物件がある、などのいわゆる上客の場合です。
そのため、一般の不動産投資家があらかじめ物件の公的地価を把握しておくことは重要です。公的地価を元に融資額の上限額の目安が推測できれば、必要な自己資金も計算でき、その物件の購入が可能かのひとつの判断材料にもなります。

もうひとつは、投資物件購入の時点から、出口戦略を立てる際の売却価格を予測しておくためです。
所有している投資物件を売却する際には、より築年数が経過しているため、その物件の次の買主にとって銀行の融資は厳しくなりがちです。そうなると投資物件としてではなく、建物を取り壊すなどして一般の住宅用地として売却することも考えなければいけません。この場合、収益還元法ではなく、公的地価などを参考にして売却金額を決めることになります。

併せて、公的地価の推移を調べたり、他のエリアとの比較をしておくと、今後の物件エリアの地価動向や、売却のしやすさなどについてもある程度の予測ができます。
例えば、ある物件の公的地価の推移を調べたところ、周辺エリアの地価は上昇傾向なのに対象物件のエリアの地価は下落傾向にあることが分かれば、投資対象エリアから除外しようという判断もできます。

ふだんはあまり気にしない公的価格も、不動産投資において「はずれエリア」「はずれ物件」を引かないために、しっかりと押さえておくことが大切です。

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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