橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

住宅メーカーのアパート戦略と不動産投資家のとるべきスタンス ~大和ハウス、積水ハウス、大東建託の考察~

住宅購入派は増加している?

筆者はファイナンシャル・プランナーとして個人のFP相談も行っていますが、最近増えているのが住宅購入の相談です。ご相談者の年代も20代から40代と幅広く、家族構成も単身者からファミリーまでさまざまです。
相談が増えた理由に、過去最低水準が続く住宅ローン金利に加えて、老後2,000万円問題があると思われます。今まで賃貸派だった人からも、持ち家を取得することで、老後も家賃を払い続けることがないようにしたい、老後の生活費の負担を軽減したい、という話をよく聞きます。
今後も進む人口減少の中で、賃貸派から持ち家派に転向する人がさらに増えれば、賃貸住宅の入居率にも少なからず影響が出てくるのではと感じています。

大手住宅メーカーのアパート受注が減っている

このようなことが直接影響したというわけではありませんが、このところ大手メーカーのアパート受注にも陰りが見えます。
下表は、アパート大手3社といわれる大和ハウス工業、積水ハウス、大東建託の直近3カ月と今期の受注状況です。

大和ハウスの9月受注前年比46%という数字は、昨年9月が前年比181%と著しく高い伸びだったためほとんど参考にはなりませんが、7月・8月の落ち込みが目立ちます。
積水ハウスだけは今期累計でも前年比100%を超えていますが、同社は1月決算のため、累計には消費税引上げ前の駆け込み需要期の2月(前年同月比120%増)、3月(同128%増)の数字を含まれており、他社との単純な比較はできません。

それでも全体の業績としては、消費税引上げ前の駆け込みによる受注残に加え、特に大和ハウスと積水ハウスには地力があり、住宅・アパートなどのコア事業以外のセグメントが好調で引き続き好業績を見込んでいます。
一方、アパート専業の大東建託は、売上に対するアパートの比率が高いため、融資引き締めや業界の不祥事の影響などによるアパート受注の低迷が、全体の業績に大きな影響を与えます。特に注目すべきは、30%を超えるキャンセル率です。(※)これは他社と比べても突出した高さといえますが、立地条件や無理な資金計画で顧客の融資がつかなかったことが一因と考えられます。一方、同社の賃貸事業は順調に推移しているため、利益ベースでは前期比増を維持できるようですが、今後、より受注が減少したときの業績には注意したいところです。

積水ハウスのアパート戦略

このような状況を見越してか、積水ハウスは、昨年4月に大規模な組織改編を行っています。それまでの地域別の事業部制を改め、組織を戸建系と賃貸系に分割しました。これにより、事業系建築(同社の賃貸住宅ブランドであるシャーメゾンや非住宅系建築)は、専門性が強化され、より効率的で強力な事業展開を目指しているようです。
その中で賃貸系事業については注目すべき方向転換がありました。
営業エリアの絞込みと脱2階建です。
営業エリアについては、かつて同社は市街地を中心にしながらも、郊外まで幅広く賃貸住宅を建築していました。ところが前期からは、高入居率・高賃料が見込めるエリアを営業重点地域として絞込んでおり、そこからはずれたエリアは営業地域から除外しています。
あわせて推進しているのが、3、4階建受注の集中化です。同社は従来2階建に強みがあった一方、3階建以上の賃貸住宅については、全国的には大和ハウスなど、都心では旭化成の後塵を拝していました。
しかし、主力を2階建から3、4階建にシフトし、前述の好立地・高採算のエリアにおいて3、4階建に集中的に取り組むようにしました。結果的に1棟当たりの受注単価が大幅に上昇し、棟数の減少を金額で補っています。

シャーメゾンフェスタに見る積水ハウスの本気度

そんな中、9月に開催された恒例の現場見学会「シャーメゾンフェスタ」を視察して来ました。前回の見学会では非住宅系の会場が増えていたことをレポートしましたが、今回目立ったのは、会場のほとんどが3階建以上の現場だったことです。筆者が見学した埼玉県内の会場でも、県内のシャーメゾンのうち、3階建以上の割合が7割前後あると聞きました。
あわせて同社の特徴と言えるのが従来の外廊下を内廊下スタイルにした共用部です。同社では「ホテルライク」仕様と呼んでいますが、従来の外廊下式と比較しても格段に高級感が増し、入居者のステイタス感も間違いなくアップすると考えます。東京都内では、3階建以上のほとんどが「ホテルライク」仕様になっているとのことでした。

また、キッチン、浴室などの設備も高級感を前面に打ち出し、高家賃にもかかわらず入居状況も順調でした。

事業の多角化という点では、大和ハウスに大きく後れをとった積水ハウスですが、賃貸住宅に関してはかつての業界トップの意地を見せたという側面を見ました。

不動産投資と土地活用に共通するもの

以前、不動産投資と土地活用の比較を解説した記事が、そのまま具現化されたよう建物実例の見学でしたが、不動産投資においても、間違いなく建物グレードの差別化は必要だと考えています。立地だけでは入居率を維持できない時代はすでに来ています。
ビジネス感覚を持って物件を顧客(入居者)に選ばれるべき商品と捉え、賃貸経営を行うことが生き残りの重要なポイントになるでしょう。

(※)大東建託HP「2020年3月期 第1四半期決算説明会資料」
https://www.kentaku.co.jp/corporate/ir/kessan/aqehc4000000c0nh-att/aqehc4000000c0yv.pdf

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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