橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

不動産投資で「買いたい病」にかかった人たちへの処方箋

不動産投資の相談を受けていると、ときどき「買いたい病」の人に出会うことがあります。「買いたい病」にかかると、物件の良い面だけが目につき、リスクを感じなくなってしまうので、気をつけないと後で大きな損失を被る場合があります。
今回は、事例をご紹介しながら、「買いたい病」に陥らないよう、注意したいポイントについて解説します。

「買いたい病」の特徴

「買いたい病」とは、いったん物件に熱を上げてしまうと、リスクがあっても見えなくなったり、見ようとしなくなり、購入に突き進んでいく人を言います。
特に、これから不動産投資を始めたいと考えている初心者に多いのではと感じています。
このような人は、不動産投資本やネットの成功ストーリーに触発され、「とにかく投資物件を持ちたい」「不動産オーナーというステイタスが欲しい」と、今後の賃貸経営のことよりも、投資物件を持つこと自体が目標になってしまいます。
また、なかなか物件が見つからないと、一刻も早く買わなければとだんだんと焦り始めます。そうなると、少しでも良さそうな物件があれば、良い面だけが目につくようになり、リスクは見えなくなってしまいます。中には、コンプライアンス上の問題さえも無視してしまうケースもあります。
そのような場合、購入してから失敗に気がつきますが、後悔先に立たず、なかには傷が深くなり取り返しがつかないという場合さえあります。
それでは、「買いたい病」の事例をご紹介しましょう。

ケース1 コンプライアンスに触れる投資

「買いたい病」のためにルールを逸脱してしまったケースです。
数年前に相談に来られたAさんは、20代半ばの独身のサラリーマン。不動産投資に興味を持ち物件を探し始めたところ、ある不動産会社から、都内にあるファミリータイプの新築マンションの区分投資物件を紹介されたいへん気に入りました。Aさんは、まだ年収も資産も少なくアパートローンを借りられないために、営業担当者が住宅ローンの「フラット35」の利用を勧めてきたそうです。
Aさんの相談に対し、住宅ローンを投資物件で利用することは不正利用になること、もしも金融機関が知ったら契約違反で一括返済を求められること、そうなった時に売却できたとしても債務超過になっていれば残債が残り現金で補填しなければならないことを説明し、断るように強くアドバイスしました。
その時はAさんも納得しましたが、しばらく経ってから、Aさんが住宅ローンを利用してその物件を購入したことが耳に入りました。
その後Aさんからの連絡は途絶えましたが、それから数年後、今年になってフラット35の不動産投資物件への不正利用が大きく報道されました。Aさんも追跡調査の対象になっているのではと推測しています。

ケース2 資産形成どころか資産を食いつぶす物件

次は、すでに投資物件を購入してしまったBさんのケースです。
会社員で既婚のBさん(30代)は、都内で新築マンション区分投資物件を購入しました。総額で約2,200万円のワンルームをフルローンで購入すると、収入8万円に対し、ローン返済・管理委託費・修繕積立金と管理費の合計額が約7.9万円と、手元に残るのはわずか約1,000円。
セールストークでは、毎月の負担なしに老後の資産形成と所得税節税ができ、Bさんに万が一のことがあった場合には、団体生命保険によりローンはなくなるので、残された家族も安心ということでした。
ところが実際に購入してみると、最初の入居者がまもなく退室し、その後しばらく入居が決まらず毎月7万円以上の持ち出し。ようやく入居が決まっても家賃が下がり、今でも毎月約5,000円の持ち出しが続いています。さらに固定資産税・都市計画税も含めると入居者がいても年間約10万円の赤字です。
ようやく失敗に気がついたBさんは、傷が深くならないうちにと4年後に売却を考えましたが物件の査定額は約1,500万円。売却しても400万円以上のローンが残ってしまい、今の貯蓄では穴埋めもできないという八方ふさがりの状態。
実はBさんも購入について親しい人たちから反対されたそうですが、物件を気に入っていたBさんは反対を押し切り購入していました。

「買いたい病」に陥らないために

実は、ケース2は、よくある事例ですが、「買いたい病」にかかった人は、いとも簡単に購入を決めてしまいます。
当時「買いたい病」だったBさんは、不動産投資で当然チェックすべき「インカムゲイン」を甘く見たと同時に、「キャピタルゲイン」のみを考え「キャピタルロス」の可能性は、全く頭になかったそうです。
これが「買いたい病」の典型的な症状で、買いたい気持ちが強すぎて、不動産投資の根本が頭の中から飛んでしまいます。
シェアハウスの問題や住宅ローンの不正利用の問題でも、おそらく多くの人が「買いたい病」に侵されていたのではと推測します。

もちろん、『購入しても良い人』が『購入しても良い物件』を『問題のない購入の手法』で購入するのであれば、何ら問題はありません。
「買いたい病」に陥らないためには、初めに数字のキャッシュフローやローンの返済比率の基準を決め、一見良い物件に見えても基準を満たしていると分かるまでは決して手を出さないという決まりを持つことが必要です。
なかには他の人に買われてしまい、残念な思いをすることがあるかも知れませんが、自分には縁のなかった物件だったとあきらめて、気持ちを切り替えればすむことです。
あおられて決まりを破って購入し、後で大きな後悔をするよりはよほど良いのではないでしょうか。

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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