橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

新型コロナ禍での大手アパートメーカーの動向

新型コロナウイルス感染拡大によって、賃貸オーナー、入居者、収益物件の販売・仲介の不動産会社はそれぞれに影響を受けています。その中で、不動産活用を事業としている大手アパートメーカーは影響を受けているのでしょうか。
本コラムでは、以前からハウスメーカーの動向もお伝えしていますが、今回は、大手アパートメーカー3社を中心に、コロナ禍での動向について考察をします。

『不動産活用』と大手アパートメーカーの勢力図

不動産投資初心者の方のために、はじめに『不動産投資』『不動産活用』の違いと大手アパートメーカーについてかんたんに解説をします。

アパート・マンション(以下アパマン)経営の手法には、大きく分けて、『不動産投資』と『不動産活用』があります。
不動産投資とは、アパマン1棟まるごと、マンションの1戸(区分)、一戸建貸家などを購入して賃貸経営を行うことです。多くのサラリーマン大家さんが行っているのが、この不動産投資です。
それに対して不動産活用は、元々所有している土地の上にアパマンなどを建築して賃貸経営を行うことで、『資産活用』『有効活用』などとも言います。
アパートメーカーは、『不動産活用』を行う土地オーナーを顧客ターゲットとし、建築請負や賃貸管理を事業として行っています。

次に、アパートメーカーは、会社や事業の成り立ちから2つのカテゴリーに分かれます。
ひとつはハウスメーカー、もうひとつはアパート専業メーカーです。

■大手ハウスメーカー
大和ハウス、積水ハウス、積水化学(セキスイハイム)、パナソニックホームズ、旭化成ホームズなど
これらのハウスメーカーは、いずれも戸建住宅から始まり、その後賃貸住宅にも事業を広げています。現在では多くのハウスメーカーが、賃貸住宅の売上が戸建住宅よりも大きく、コア事業のひとつとなっています。
全国的には大和、積水が2強と言われ、次いで積水化学、パナソニックが続きます。旭化成は都心部で強く、特に東京都ではシェア1位です。

■大手アパート専業メーカー
大東建託、レオパレス21、東建コーポレーション、MDI、生和コーポレーションなど
創業時から賃貸事業をメインに行っている会社です。
かつては大東、レオパレス、東建が専業3社と言われた時代がありましたが、レオパレスは一連の不祥事により建築請負で脱落し不動産管理にシフトしています。現在は1強の大東に水をあけられた形でレオパレス、東建が続いています。最近では、MDI、生和コーポレーションなども存在感を出しています。

アパートメーカーのなかで3強と言われているのが、大東建託、大和ハウス、積水ハウスです。2019年度の貸家の着工戸数約34.2万戸(※1)のうち、3社の着工戸数の合計は約11.5万戸と、新築アパマンの3戸に1戸以上が3社のいずれかの物件ということになります。3社の業績や動向は、賃貸市場に少なからず影響を与えるため、注目されています。

新型コロナでアパートメーカーも大打撃

下表は、3社の直近の受注状況です。

新型コロナ感染拡大以降、3社の受注は大きく落ち込んでいます。
特に大東建託の落ち込みは激しく、4~5月の受注高は前年同期比で、なんと98.3%の減少となりました。
同社は、もともと飛び込み型の営業スタイルのため、対面営業からの切り替えが難しく、4月から全社的に営業活動を禁止したことも落ち込みの理由です。さらに同社の4月の受注金額が43.6億円ものマイナスになっているのは、営業活動をストップした上に、既契約からのキャンセルが多く発生したことによります。
また、大和ハウスがマイナス48%(4~5月計)、積水ハウスがマイナス21%(1月決算のため2~5月計)といずれも大きく落ち込んでいます。

アパートメーカーの受注低迷は昨年から始まっていた

実は、大手メーカーの業績悪化は、コロナ禍以前の昨年からすでに始まっていました。
2018年の「かぼちゃの馬車」に端を発したサブリースや不正融資の問題などによる融資の引き締めの影響が大きく、賃貸住宅の受注は大幅に落ち込みました。
前期(2019年4月-2020年3月)の受注実績を見ても、大和ハウスがマイナス19%、大東建託がマイナス18.3%と、前々期から2割近くダウンしています。
なお、積水ハウスのみ受注が5%増加(2019年2月~2020年1月)していますが、同社は受注エリアの絞込み、中高層賃貸住宅受注の強化、CRE(企業不動産)の受注強化など、これまでの戦略を大きく転換したことが功を奏した形となりました。しかし3月以降は同社も受注を大きく落としています。

大手アパートメーカーの強みとは?

今後、新型コロナウイルスの影響で、大手アパートメーカーの建築受注もさらに落ち込むことが予測されます。しかし、大手アパートメーカーの賃貸住宅事業には、各社に共通する2つの強みがあります。

ひとつは、建築事業よりもストック事業の売上が大きいということです。
ストック事業とは、自社が建築した賃貸住宅の管理業務やリフォームなどを行う事業のことです。累積の建築戸数が増えるほどストック事業の売上も伸び、安定的な収入になります。
例えば、大東建託の売上構成を見ると、ストック事業が61.1%と売上全体の6割を超え、建設事業(34.1%)を大きく上回っています。同社の管理戸数はすでに110万戸を超え、今後も受注減少が続いたとしても、安定収入のベースが厚いため、本体の経営を揺るがす可能性は低いと考えられます。
他社も同様にストック事業の割合が高く強みとなっています。

もうひとつは、入居率の高さです。
各社とも以前から自社の賃貸住宅のブランディングを進め、積極的な入居促進を図ってきました。大東建託の『いい部屋ネット』、大和ハウスの『D-room』、積水ハウスの『MAST』『シャーメゾン』はCMや街中で目に触れることもあるのではないでしょうか。
今回のコロナ禍のなかでも、各社はさまざまな入居者支援も打ち出しています。
大和ハウスと大東建託は、最大3カ月の家賃猶予措置を発表しました。大東建託は、さらに同社グループ会社が供給しているガスについても基本料金の割引、最大3カ月の支払い猶予措置を発表しています。
いずれも猶予であり、免除ではありませんが、このような支援策を行うことが、入居者の囲い込みと退室防止につながると考えられます。
各社の入居率は96%~98%台と高い水準を維持しており、ストック事業の基盤となっています。

アパートメーカーの「不動産活用」は、「不動産投資」にとってヒントになることも少なくありません。必要に応じて不動産投資の考え方に取り入れることもお勧めします。

※1国土交通省建築着工統計調査2019年度
※アパートメーカーの数値は各社IR公表資料より

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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