橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

新型コロナ禍で建売が売れている? ~不動産投資への影響と賃貸経営へのヒント~

新型コロナウイルスの収束の兆しが見えないなか、建売住宅が売れているという話を聞きます。大手ハウスメーカーは軒並み受注が落ち込んでいますが、パワービルダーを中心として、建売住宅の販売は好調のようです。
好調な建売住宅の販売は、今後の賃貸経営にもヒントを与えてくれます。

住宅購入は増えているのか

この数カ月、FP相談をしていて不思議に感じていることがありました。それは、コロナ禍にもかかわらず、相談内容のなかで住宅相談の件数が増えていることです。単に当オフィスへの相談が増えているのかとも考えましたが、不動産関係者や他のFPからも同じような話が伝わってきます。
当オフィスのご相談者のなかからも、2月から7月まで毎月住宅購入が続いています。そのなかで新築戸建て住宅を購入した割合が約80%、中古マンションの購入が約20%と、一戸建ての購入志向がかなり高くなっているという印象があります。

実際に、8月にパワービルダー各社の四半期決算が発表され、軒並み株価が上昇しています。
8月7日、パワービルダー最大手の飯田グループホールディングスが2020年3月期第1四半期(4~6月)決算で減益ながらも増収を発表し、その後同社の株価が大きく上昇しました。
オープンハウスやケイアイスター不動産など他の東証一部上場の企業も、好調な戸建て需要の拡大による好業績を発表しています。
新型コロナウイルスの影響で、一時手控えられていた土地の仕入れも、現在は再び強化に転じており、そのために資金調達を進めているという報道もあります。
少なくとも戸建て住宅の販売は好調と言えるようです。

新型コロナが住宅購入に与える影響は?

それでは、新型コロナウイルス感染拡大と住宅購入の関係はどうなっているのでしょうか。
当オフィスで住宅相談をされるご相談者からヒアリングをしていても、新型コロナウイルスが住宅購入の直接の動機になっているケースはありませんでした。
よく考えると当たり前のことですが、住宅取得を考えている人たちは、もともと新型コロナウイルスとは関係なく、ライフプランの中の最適なタイミングを見計らって住宅購入をしています。
ご相談者のうち約7割は、「子どもの就学前」のタイミングで住宅を購入したいというご希望でした。つまり、もともと今年が住宅の購入時期だったということになります。
そのため、計画も数年前から立てているケースが多く、実際に今年住宅を購入されたご相談者の約半数については、最初のご相談は2~3年前に行われていました。

ただし、新型コロナウイルスの感染拡大が、住宅の間取り選びに影響を与えている面もあります。それは「新しい生活様式」(※1)で提唱されている「働き方の新しいスタイル」、すなわち、テレワークやローテーション勤務、オンライン会議のためのスペースの確保です。

報道によると、販売が好調な戸建て住宅に対して、同時期の新築マンションの供給戸数は前年比で大きく落ち込んでいます。新築マンションの供給戸数は販売戦略上の理由や前年の実績にもよるため、一概には比較できませんが、やはり戸建て住宅の状況とは一線を画すものがあります。

戸建て住宅とマンションの相違には以下のようなポイントが考えられます。
①在宅ワークの浸透と会社への通勤頻度が減ったことにより、通勤時間が必ずしも優先されなくなり、都心のマンションよりも環境の良い郊外にある一戸建てのニーズが増した。
②ファミリー向けのマンションの専有面積・プランは、一般的に60~70㎡程度の3LDKクラスが主流であるのに対し、一戸建ては100㎡程度、間取りも4LDKが多く、在宅ワークのための「プラス・ワンルーム」が確保できる。
③予算的にも、マンションと同水準の価格でマンション・プラス・ワンルームの一戸建て住宅が購入できる。
④新型コロナ対策を考慮すると、エレベータやエントランスなどの共用部があるマンションよりも、独立した居住スペースのみの戸建て住宅のほうが安心感がある。
このような違いからも、戸建て住宅の好調な販売はしばらく続くのではと予測しています。

不動産オーナーにも求められる「新しい生活様式」への対応

さて、このような状況下、戸建て販売が賃貸経営に与える影響はあるのかは、現時点でははっきりとは分かりません。
ただし、今後もウィズコロナ時代が続けば、専有面積が狭く、在宅ワークのスペースが取れない賃貸住宅に住むカップル・ファミリー層の入居者には、「新しい生活様式」「働き方の新しいスタイル」に対するニーズが、住宅購入の動機のひとつになるのではないかとも考えられます。

裏を返せば、「新しい生活様式」での「日常生活の各場面別の生活様式」に加え、「働き方の新しいスタイル」に対応できる物件は、今後の入居者ニーズにも対応できるのではないかと予測します。

今春見学した賃貸アパートの見学会で、すでに在宅ワークを見すえて工夫をしているカップル・ファミリー向けアパートがありました。
ひとつはウォークインクローゼットをDEN(書斎や趣味の小部屋のこと)にも転用できるようにインターネット配線や明かり取りの小窓を付けたプラン。

協力:株式会社住研川越

もうひとつは、LDKの小屋裏を書斎として転用できるプラン。

協力:株式会社住研川越

どちらもカップルファミリータイプの賃貸アパートの工夫ですが、限られた専有面積のなかで「働き方の新しいスタイル」にうまく対応したプランと言えます。

今後、既存物件に関しては「働き方の新しいスタイル」を見すえたリフォーム・リノベーションが、また、新規収益物件の取得に際しても、同様のニーズを考慮することは大切なポイントのひとつになると思われます。

(※1)厚生労働省「新しい生活様式の実践例

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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