橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

不動産投資の立地選択には、「森」も「木」も見ることが大切

人口減少が進む日本では、これから不動産投資をすることはリスクが高いという意見があります。
確かに「どこでも」不動産投資ができるという時代は終わりました。
しかし、中長期の賃貸ニーズがある立地を選択すれば、不動産投資のリスクは軽減できます。
立地選びの際には、「森」と「木」の両方を見る必要があります。

不動産投資における「森」「木」とは?

立地の判断において、「森」は、全国もしくは都道府県レベルで見ること、「木」は市町村レベルで見ることと言えます。更に市町村内の行政区、利用駅、商圏などを対象とした視点を「枝」と捉えても良いでしょう。

確かに「森」だけを見ていると、不動産はリスクが高い投資のように見えます。しかし、視点を「木」に移してみると、多くの市町村で人口減少が予測されている中でも、将来人口の維持・増加が見込まれる市町村も見えてきます。
さらに、市町村内の行政区によっても人口の増減に差があります。
まずは、「森」を見るだけで投資の可否を判断するのではなく、「木」や「枝」も観察してみることをお勧めします。

「木」を見るための指標はたくさんある

「木」を見るための参考指標はいくつもありますが、国土交通省が公表している「メッシュ将来人口推計」の「人口増減状況(500mメッシュベース)」という地図もその一つです。
この地図では、日本全国を500m×500mのメッシュに区切り、それぞれのメッシュの2010年から2050年までの人口増減予測が色分けされています。
ちなみに下の地図は、筆者が居住する埼玉県の人口増減の状況です。


メッシュにより人口の増減状況が違うことが分かります。
つまり、同じ自治体のなかでも、今後も人口増加が見込まれるエリア、思っていた以上に減少してしまうと予測されるエリアなどがあることを理解しておくことが大切です。関心のある人は、国土交通省のHPからご覧ください。(※1)国土交通省「メッシュ別将来人口推計」

また、各自治体が策定を進めている「立地適正化計画」においては、今後生活サービスや公共交通を持続的に維持するために居住を誘導する「居住誘導区域」が定められているため、少なくても居住誘導区域から外れているエリアは不動産投資の対象から外すという選択もできます。立地適正化計画は、2020年7月現在、全国542の自治体が公表しています。(※2)国土交通省「立地適正化計画の作成状況」

さらに、すでに利用されている人も多いと思いますが、LIFULL HOME’S不動産投資の「見える!賃貸経営」も「木」を見る資料として参考になります。「賃貸需要ヒートマップ」では、やはりエリアをメッシュで分割し、入居希望者の物件閲覧数を色分けしています。登録物件数の多寡にもよりますが、どのメッシュが多くの入居者に探されているかが一目瞭然で分かります。(※3)LIFULL HOME’S不動産投資「見える!賃貸経営」

「木」は変化することもある

実は、「木」は変化することがあります。
ダメなエリアが何かをきっかけに良い市場に変わることがあり、反対に人気のエリアの入居ニーズが落ちてしまうこともあります。
新駅の開業、鉄道の乗り入れによる利便性の向上、企業、官公庁の移転、大型商業施設のオープンによる新たな商圏の誕生などは、入居ニーズが生まれるきっかけになります。
反対に企業、大学の移転などにより賃貸ニーズが一気にしぼむこともあります。
このような変化を見逃さないようにアンテナを立てることも不動産投資には必要です。

「消滅可能性都市」埼玉県飯能市のケース

木が変化しつつある事例として、埼玉県飯能市のケースを紹介します。
埼玉県南西部にある飯能市は、東京のベッドタウンとして長く人口増加が続いていましたが、2001年の約8.3万人をピークに減少を始め、2020年1月現在では約7.9万人にまで減少しています。(2005年の合併による増加を除く)
そのような状況のため、2014年に話題になった日本創生会議による「消滅可能性都市」に飯能市も名指しをされてしまいました。
また、前掲した「人口増減状況(500mメッシュベース)」でも、同市においては、2010年から2050年の間にほとんどのメッシュの人口が減少もしくは無居住化するという厳しい予測がされています。

転出入による社会増減は毎年マイナスが続き、2010~2014年までの5年間の社会減は876人、典型的な人口減少のパターンをなぞっていました。
つまり数年前までは、飯能市は不動産投資対象として魅力がない市と言えました。

ところが、あることが転機となり、同市の社会増減はプラスに転じることになりました。
ひとつは、消滅可能性都市とされ危機感を持った市が、官民一体で行った移住促進政策が一定の効果を上げたことです。
しかし、決定的だったのは、2015年に同市がムーミンテーマパーク(メッツァ)の立地に選定されたことでした。
その後、2019年のメッツァ全面開業は、施設で働く人たちの入居需要につながりました。
減少が続いていた社会減は、2015年に増加に転じてから6年連続で増加、2020年9月までに705名増加しています。

メッツァを中心とした観光客の増加は、今後より良い効果を生み出すと考えられます。
今は、新型コロナでとん挫してしまいましたが、来日する外国人観光客が日本の素晴らしさに触れることにより、また日本に来たい、さらには日本に住みたい、日本で働きたい、という人たちの増加につながります。
同じことが飯能市にもあてはまります。
フィンランド人をして、祖国の森とそっくりと言わしめたという飯能に観光で来た人の中には、飯能の魅力に引き寄せられて、移住を考える人が少なからずいるはずです。このように町を知ってもらうことが、人口増加に大いにプラスになると考えられるのです。

各地域で「木」を見ること、「木の変化」を見ることがヒントになる

それぞれの都道府県でも「木」や「枝」を見ていくと、入居ニーズが高いエリアが、ある程度把握できます。
また、飯能市のように「木」が変化するケースも数多くあります。
「木」は突然変化することもありますが、多くの場合、兆候があります。変化の兆候を見逃さずに立地の選択をすることも不動産投資のセンスと言えるでしょう。

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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