橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

いよいよ施行されるサブリースへの規制強化 ~サブリースのセールストークとの付き合い方~

12月15日に、いよいよ「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(以下、賃貸住宅管理適正化法と略)が施行されます。
目玉は、何と言っても「サブリース」に対する規制の強化です。
規制の内容については「サブリースは本当に悪者か?~賃貸住宅管理適正化法と知られていないサブリースの効用」で解説していますが、賃貸オーナー側も、どのようなポイントがトラブルになりやすいのかを知り、事前にチェックしておくことは大切です。

相対→管理委託→サブリースという流れの必然性

もともと賃貸経営は、賃貸オーナーが自ら契約や管理を行う相対(あいたい)契約が中心でした。
実際に、38年前の1982年頃に筆者が入居していたアパートも相対契約で、毎月家賃を大家さんのお宅に支払いに行っていました。また故障の際も直接大家さんに連絡し、大家さんが修理の手配をしてくれました。当時も不動産会社が管理している物件はありましたが、相対契約のアパートはごく一般的に見られ、さらに大家さんが食事を提供する「賄い付き」の下宿も数多くありました。

しかし、近年は、賃貸オーナーが高齢化し相対で賃貸経営を行うことが難しくなってきたこと、相続によってサラリーマンなどの兼業オーナーが増えたこと、管理内容が複雑化・高度化してきたことなどから相対契約のアパートは激減し、不動産会社に管理を委託するケースが急速に増加しました。
さらに一歩進んで、転貸を利用し賃貸経営自体を管理会社に一任するサブリース方式が賃貸経営のメニューとして加わったのです。
つまり、管理委託やサブリースは、時代の必然によって広がった経営方式と言えます。

サブリースへの規制強化の背景

賃貸経営の管理委託・サブリース方式への移行に伴い、賃貸管理やサブリースに参入する不動産会社も増加しましたが、なかには不当な勧誘をする業者も現れ、賃貸オーナーとのトラブルも増加しました。
特にサブリースに関しては、契約条件の解釈を巡るトラブルが多発し、裁判で争われるなど、社会問題として取り上げられるようにもなりました。

そこで今回、賃貸住宅管理適正化法が施行されることになりましたが、もともとの立法趣旨は、サブリースを取り締まることが目的ではなく、サブリースの健全な発展を目指すことにあります。
よく世間では、サブリース自体が悪のシステムであるという誤解が見受けられます。
しかし、この法律では、サブリースそのものは、賃貸オーナーや入居者など多くの人に役立つシステムであることを前提にしています。その上で、一部で行われている不適切な活用によるトラブルを防止し、サブリースに対するネガティブなイメージを払拭することを目的としています。
裏を返せば、サブリースの本質を誤解させるような不正な勧誘がいかに多かったかということが伺えます。

賃貸オーナーが特に注意したいポイントは?

賃貸住宅管理適正化法では、サブリース会社に対し、契約前の重要事項説明と契約締結時の交付を義務付けています。その目的は、サブリース会社と賃貸オーナーとの情報格差をなくすことにあります。
重要事項説明では、特に説明すべきリスク事項として、次の2つをあげています。

契約期間中に「家賃減額」の可能性がある

重要事項説明には、家賃が減額される場合があることを記載し説明しなければいけません。
サブリースのトラブルで特に問題となったのが、「〇〇年間は家賃が固定で下がることはありません」「〇〇年間は家賃を保証します」というように、一定の家賃がずっと保証されるというセールストーク。そのセールストークを信じてサブリース契約をした賃貸オーナーも数多くいると思われます。

しかし、実際にはマスターリース契約(賃貸オーナーとサブリース会社の契約)に「家賃の減額はなし」と書いてあっても、借地借家法法第32条により、サブリース会社は、更新時はもちろん契約期間中でも家賃の減額請求をすることができます。
借地借家法の普通借家契約では、たとえサブリース会社であっても立場の弱い借家人とされ、家賃の減額を請求する権利が認められているのです。

もちろん、減額請求をされた場合でも、賃貸オーナーはそのまま受け入れなければならないということはありません。しかし、少なくてもサブリース会社と協議をしなくてはならず、その結果、請求額の全部または一部を認めることになる可能性もあります。
よって、「減額はない」というセールストークを信じてはいけません。

サブリース会社は解約できるが賃貸オーナーは解約できない

マスターリース契約の期間満了の際に、一定の手続きを行えばサブリース会社は契約を更新しないことができます。また、契約書に期間内解約条項が定められている場合、サブリース会社は契約期間中でも中途解約をすることができます。

一方、賃貸オーナーが契約の更新拒絶や中途解約をしたい場合でも、借地借家法第28条により借家人(サブリース会社)は強い借家権を持つため、オーナー側に正当事由がない場合には更新拒絶も中途解約もできません。

特にこの2つのリスクに関しては、メリットばかりを強調するセールストークに乗せられないように、賃貸オーナも注意する必要があります。

自らが「勧誘者」にならないように注意!

賃貸住宅管理適正化法では、規制の対象となる「勧誘者」を明確化しました。
サブリース会社だけでなく、サブリース会社から依頼を受けて勧誘を行う者は「勧誘者」として規制の対象になります。
勧誘者とは、一般には銀行や建築会社などを指しますが、個人でも勧誘者になる場合があります。
たとえば、自分がサブリースを利用して良かったので、知人にサブリース会社を紹介するケースなどがこれにあたります。
サブリースを行う建築会社の中には、紹介された人が契約に至った場合、紹介者に対し建築請負金額の〇%を紹介報奨金として支払うという会社もあります。このような場合、たとえ善意であってもメリットばかりを強調し、それが事実に反した場合、不当な勧誘と判断され処罰の対象となってしまう可能性があります。
知らず知らずのうちにトラブルに加担しないように注意することも必要です。

サブリースの活用も自己責任で

サブリースには多くのメリットがあります。(詳しくは「サブリースは本当に悪者か?~賃貸住宅管理適正化法と知られていないサブリースの効用」で解説しています。)

しかし、賃貸オーナーも、リスクについてもしっかりと確認しておく必要があります。
万が一、トラブルが発生しても、リスクについて重要事項説明の説明と交付がなされていた以上、最終的なリスクと責任は賃貸オーナー側が負うことになるからです。

なお、国土交通省など3省庁では、法律の施行に先立ち、「賃貸住宅経営(サブリース方式)において特に注意したいポイント」というリーフレットを公表しました。
不動産投資においてサブリースを検討している人は、一読されることをお勧めします。

【このコラムの著者】

橋本 秋人

ファイナンシャル・プランナー 不動産コンサルタント
1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。

長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。

現在は、FPオフィス ノーサイド代表としてライフプラン・住宅取得・不動産活用・相続などを中心に相談、セミナー、執筆などを行っている。

保有資格:
・ファイナンシャル・プランナー(CFP®認定者・1級FP技能士)
・公認不動産コンサルティングマスター 
・宅地建物取引士
・住宅ローンアドバイザー
・福祉住環境コーディネーター2級
・終活アドバイザー(終活アドバイザー協会)

平成27年度日本FP協会「住宅活用相談」相談員
平成29年度日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員

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