この不動産投資コラムをお読みいただいている皆さんは、アパートやマンションなどの実物不動産投資に関心をお持ちだと思います。
しかし、2018年の不正融資問題や急激に増加した不動産投資への警戒感などから融資が引き締められ、不動産投資のハードルは高くなっています。
そこで今回は、少額の資金でも始めやすい不動産投資の手法について取り上げてみたいと思います。
少額資金の不動産投資はどのように広まった?
わが国で不動産投資といえば、長年実物不動産投資のことを指していました。
しかし、2001年に初めてREIT市場が開設され、「証券化された不動産」への投資が本格的に始まりました。
2019年に国土交通省が公表した資料によると、下図のとおり「証券化された不動産」の市場規模は約33兆円に達しています。その中でJ-REIT・不動産特定共同事業等は約24兆円を占めています。
出典:国土交通省「不動産投資市場の現状と最近の動きについて」(2019年8月2日)
さらに、2017年の不動産特定共同事業法の改正によって、小規模の不動産特定共同事業の創設や不動産クラウドファンディングの制度整備が行われました。その結果広がった小規模不動産特定共同事業や不動産クラウドファンディングは、投資対象としての不動産の魅力を持ちながら、投資単位を小口化することにより、不動産投資の間口を広げたと言えます。
少額資金で始められる不動産投資商品の種類
ここでは、代表的な不動産投資商品として、J-REIT、不動産小口化商品、不動産クラウドファンディングについて解説をします。
J-REIT
REITとは不動産投資信託のことで、実際には不動産投資ではなく金融商品投資ですが、投資対象が不動産のため、不動産投資と同様の特徴を持っています。
REITのしくみは、不動産投資法人が投資家から集めた資金をもとに、複数の収益不動産を購入・運営し、そこから生じる利益を投資家に還元するというものです。
REITのなかでも日本のREIT市場に上場しているものをJ-REITと言います。
2021年1月末現在で62銘柄が上場しており、1万円台から数十万円で購入することができます。
対象不動産には、オフィス、商業ビル、ホテル、住居、物流施設、ヘルスケアなどさまざまな種類があります。また不動産の組合せにより、単独型、複合型(2種類の組合せ)、総合型(3種類以上の組合せ)に分けられます。
J-REITは比較的利回りが高く、2021年1月末時点の平均予想利回りは3.89%と、上場株式平均約1.6%の2倍以上となっています。
また、流動性が高く換金しやすいこと、実物不動産投資にある不動産管理のわずらわしさがないこともJ-REITのメリットです。
反面、値動きが激しく、短期間で元本割れするリスクもあります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響も大きく、2020年2月20日に2250.65だった東証REIT指数は、同年3月19日には1145.53と大暴落しました。その後は徐々に回復し、2021年2月19日現在、1939.11となっています。ただし銘柄による差は大きく、投資口価格が1年前を20%近く上回っている銘柄から、いまだに30%以上下落している銘柄もあります。
また、実物不動産と同様、空室リスク、賃料下落リスク、災害リスクなども伴います。
不動産小口化商品
最近、テレビCMでもよく目にするようになりましたが、不動産小口化商品も、近年注目されている不動産投資の手法です。
不動産小口化商品とは、不動産特定共同事業法の枠組みの中で組成されており、収益不動産を小口化して販売し、賃料や売却益を投資家に分配する商品です。
REITとの違いは、REITは個別不動産を選択することができませんが、不動産小口化商品では、対象不動産を選択して投資することができます。
また、対象不動産はオフィスビルや商業ビルなど、実物不動産投資では個人ではなかなか投資できないような大型物件が多いことも魅力のひとつです。
ただし、不動産を投資対象とする他の投資商品と同様、空室、賃料下落、物件価格の下落などのリスクはあります。
不動産小口化商品には、「匿名組合型」と「任意組合型」という2つのタイプがあります。
匿名組合型は事業者と投資家が匿名組合をつくり、投資家は金銭で出資します。
なお、多くの匿名組合型の商品は「優先劣後方式」を採用しています。
優先劣後方式とは、投資家の出資分を「優先出資」、事業者の出資分を「劣後出資」とする仕組みです。不動産運用の損失が発生しても劣後出資の範囲であれば、その損失は事業者が負うため、投資家にとっては元本割れリスクが軽減されます。
出資額は1口数万円程度と少額で、運用期間も数カ月程度からと短めになっています。
任意組合型では、投資家が収益不動産の共有持分を購入し、それを事業者と投資家がつくった任意組合に現物出資します。任意組合型では、投資家が実際に不動産を持分で所有することになるため、相続や贈与の際には評価額が圧縮されるという節税効果があります。
投資額は比較的高額で、100万円程度から数百万円になることもあり、運用期間も10年以上の長期運用が多くなります。
不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングとは、事業者が、投資家からインターネットを通じて集めた資金で収益不動産を取得・運営をし、そこから得られた利益を投資家に分配する仕組みです。
不動産クラウドファンディングも不動産小口化商品と同様、不動産特定共同事業法の規制を受けています。
また、不動産小口化商品と同様、投資対象の収益不動産の情報は開示されており、投資家は物件の所在、築年数、賃料、運用状況などの条件を自身で確認して投資判断をすることができます。
なお、不動産クラウドファンディングも、任意組合型の不動産小口化商品と同様、優先劣後方式を採用しています。
まとめ~少額資金の不動産投資で感覚を磨くことも~
少額の不動産投資商品は、不動産投資の楽しみも味わいながら、高額な不動産を対象に少額の資金で始められます。
また、複数の不動産投資商品に投資することにより、ポートフォリオを組み、リスク分散を図ることもできます。不動産投資の手法の一つとして検討してみるのもいかがでしょうか。