橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

住宅ローン控除改正から見えてくる不動産投資のカーボンニュートラルへの対応

12月10日に令和4年度の税制改正大綱が公表されました。そのなかの住宅税制に関しては、カーボンニュートラル(脱炭素)社会実現のための環境配慮型住宅の普及促進が強く打ち出されました。この流れのなかで、今後、賃貸住宅においても省エネ化などの環境への配慮が強く促されていくことが予測されます。前回のコラムに続いてSDGsが今後不動産投資に与える影響について考えます。

住宅税制改正の目玉は「益税」の解消

本題の前に、今回の住宅ローン控除改正で注目されていた「益税」問題の解消についても触れておきましょう。
来年度の改正では、住宅ローン控除の控除率が1%から0.7%に引き下げられることになりました。その背景には、史上最低の金利水準のなかで、住宅ローン金利が控除率の1%を下回り、借りれば借りるほど逆ざやで得をするというおかしな状態が続いてきたことがあります。

例えば、1月に金利0.5%の住宅ローン3,000万円を借入れ、元利均等払いで35年返済した場合、1年目の支払利息は約13.6万円、それに対して控除額は約29.2万円で、住宅ローンの控除を受ける人は差し引き約15.6万円もの利益を得ることができます。
その後も金利が変わらないとすれば、2年目は約14.5万円、3年目は約13.6万円…、と徐々に減ってはいきますが、利息と控除額の逆ざやによる利益が得られる状況が10年以上続く可能性があります。

金利がさらに低かったり借入額が多かったりすると益税はますます増えます。認定住宅の場合、1年目から10年目までの最大控除額は50万円(年末借入残高5000万円)まで認められているので、多額の借入ができるいわゆる富裕層などには、より有利な制度と言えます。

令和4年度からは、完全ではないにしろ、逆ざやの状態はかなり解消されることになります。益税を狙っていた人にとっては残念ですが、その負担は国民の税金から出ていることを考えると、むしろ遅すぎた改正とも言えるでしょう。

もうひとつのキーワードは住宅の脱炭素化

今回の改正で、もうひとつ強く打ち出されたのが、環境に配慮した省エネ住宅の普及促進です。
この背景には、カーボンニュートラル社会を目指す国の思惑があります。カーボンニュートラルのために高断熱、高耐久といった環境に優しい住宅の普及は必須の課題ですが、このような住宅の普及は思ったほど進んでいません。

そこで、今回の改正では、コスト面、技術面でハードルが高かった従来の「認定住宅」に加え、新たに2つの環境配慮型住宅を設け、3つをあわせて「認定住宅等」としました。認定住宅等は一般住宅と比べて借入限度額や控除期間が優遇されます。
住宅ローン控除概要
比較的ハードルが低い「省エネ基準適合住宅」も認定住宅等に加えることによって、今後住宅の新築や購入を検討する人は、環境配慮型住宅を意識せざるを得なくなるでしょう。この改正により、環境配慮住宅の割合は確実に高まっていくと思われます。

今回の住宅ローン改正は、賃貸住宅とは直接関係はありませんが、今後の住宅政策の方向性を示唆しており、持ち家だけでなく、賃貸住宅の省エネ化にも拍車をかけるでしょう。日本の住宅着工のうち、賃貸住宅の割合は37.6%を占めています。これは持ち家(32.0%)や分譲住宅(29.4%)より多く、住宅の省エネ化政策から賃貸住宅をはずすことはできません。(※1)

補助金やファイナンスも環境配慮型賃貸を後押し

実際に前回のコラムでご紹介した通り、補助金を活用したZEH賃貸住宅の着工はハウスメーカーを中心に着実に伸びています。これを後押ししている集合住宅のZEH補助金は2018年にはすでに始まっており、今後もZEH賃貸の後押しをすることになるでしょう。

またファイナンス面でも、不動産投資においても存在感を示しているオリックス銀行が、ZEH仕様の投資用マンションへの融資を発表しました。今後他の金融機関も追随し、ファイナンス面での差別化が進めば、環境配慮型の賃貸物件の優位性が増すことになるでしょう。
不動産投資においてもSDGsを意識するときが来ているのではないでしょうか。
(※1)令和2年建築着工統計調査報告・国土交通省

【このコラムの著者】

橋本 秋人

FPオフィス ノーサイド代表
CFP®認定者、1級FP技能士、終活アドバイザー
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。
長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、
早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。
現在は、FP、不動産コンサルタントとしてコンサルティング、セミナー、執筆等の活動を行っている。

NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)副理事長
埼玉県定期借地借家権推進機構 理事
東京電子専門学校 非常勤理事

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