橋本 秋人の不動産投資コラム

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「家を解体すると土地の税金が6倍になる」はウソ? ~土地の固定資産税のしくみとフェイク情報にまどわされないコツを解説~

先日、ある全国紙に、住宅用地が非住宅用地になると税額は3~4倍程度にはね上がるという記事がありました。これを読んで「あれ?固定資産税は6倍になるのでは?」と思った人もいると思いますが、どちらが正しいのでしょうか。
今回は、固定資産税の「通説」を例に、フェイクニュースや誤った情報にまどわされないよう、正しい情報入手のヒントについて解説をします。

「建物を取りこわすと土地の固定資産税は6倍」は間違い

はじめに正解をお伝えします。
住宅を解体して更地にしても、土地の固定資産税は6倍には上がりません。
記事にあった「3~4倍程度」がほぼ正しいということになります。

しかし、一般的には「固定資産税は6倍」がまかり通っているように思えます。ネットの記事はもちろん、最近テレビで目につく空き家問題の特集でも、一部の報道では軽減が適用除外になると土地の税金が6倍になるとしています。公共放送でさえ「固定資産税が6倍に」という解説をしているのを見たことがあります。

土地の固定資産税・都市計画税のしくみ

土地の固定資産税が何倍になるかを理解するために、まず固定資産税等のしくみについて解説します。

毎年1月1日現在土地を所有している人には、市町村(東京23区は都)から固定資産税が課せられます。土地が市街化区域にある場合には、別に都市計画税もかかります。税額は以下のように、土地の課税標準額(固定資産税課税台帳に登録されている評価額)に対して税率をかけて算出します。
固定資産税…課税標準額×1.4%(1.4%は標準税率で、市町村がこれを超える税率を定めることができる)
都市計画税…課税標準額×0.3%(制限税率により0.3%が上限)
まとめると、市街化区域では固定資産税・都市計画税の合計1.7%、市街化調整区域では固定資産税のみ1.4%を一般的な税率として税額を計算します。

住宅の敷地は課税標準額が軽減される

住宅(専用住宅やアパマンなど)が建っている土地の場合、固定資産税と都市計画税の課税標準額が軽減されます。

土地のうち、住宅1戸当たり200㎡までの部分を「小規模住宅用地」といい、課税標準額は固定資産税が6分の1に、都市計画税が3分の1に軽減されます。
また、200㎡を超える部分を「一般住宅用地」といい、それぞれ3分の1、3分の2に軽減されます。

たとえば市街化区域にある面積120㎡、固定資産税評価額1,800万円の住宅用地の固定資産税・都市計画税の計算は
【固定資産税】1,800万円×1/6=課税標準額300万円 
       300万円×1.4%=4.2万円
【都市計画税】1,800万円×1/3=課税標準額600万円 
       600万円×0.3%=1.8万円
【合計】   6万円
となり、税金は大幅に安くなります。

住宅用地でなくても軽減がある

あまり知られていないようですが、実は非住宅用地(駐車場や商業用地など)の課税標準額も負担軽減措置により固定資産税評価額の70%以下に軽減されています(計算は複雑なので割愛しますが、上限で70%と考えてください)。

先ほどの土地が非住宅用地になると、課税標準額は1,800万円×70%=1,260万円になるので
【固定資産税】1,260万円×1.4%=17.64万円
【都市計画税】1,260万円×0.3%=3.78万円
【合計】   21.42万円

非住宅用地の税額と小規模住宅用地の税額を比較すると
【固定資産税の比較】17.64万円÷4.2万円=4.2倍
【都市計画税の比較】3.78万円÷1.8万円=2.1倍
【合計の比較】   21.42万円÷6万円=3.57倍
このように住宅を取りこわしても、固定資産税のみの比較で4.2倍、都市計画税を含めた全体の比較で3.57倍と、土地の税金は6倍までは上がりません。

※さらに東京23区内では、都税条例により非住宅用地の負担水準65%への引下げや小規模非住宅用地の減免措置などが行われており、その差はさらに縮まります。詳細は東京都の条例をご覧ください。(※1)

誤った情報が誤った行動につながる

もちろんネット記事などの中にも、少数ですが小規模住宅用地の軽減について正しく解説しているものもあります。
それでは、なぜ多くのマスメディアなどでは「固定資産税が6倍」と報道されるのでしょうか。
これには、ふたつの理由が考えられます。
①誤りに目をつぶっても、「6倍」というショッキングな数字を前面に出すことにより、視聴者や読者の注意を引きたい。
②そもそも情報発信者側の不勉強や確認不足によるもの。「課税標準額」と「固定資産税額」を混同している。

いずれにしても、このようなフェイク情報を信じてしまうと誤った行動につながるケースもあります。

たとえば空き家問題において、空き家を解体しない理由の一つに「税金が上がるから」ということがあります(※2)。この場合、空き家の所有者が実際に役所などで確認をしたわけではなく、「固定資産税が6倍に」という情報だけを基に判断している場合が多いと推測されます。
しかし、土地の評価額が低く建物の評価額が高い空き家では、建物を取りこわすことにより全体の税額が下がるケースもあります。さらに建物がなければ建物の維持管理コストもかかりません。このケースでは建物を解体したほうが正解だったともいえます。

信頼できる情報源の確認と正しい理解が大切

不動産に限らず、世の中にはフェイクニュース、フェイク情報が溢れています。
情報を取得する場合はできるだけ信頼できる情報源から収集することが大切です。非住宅用地の軽減についても、市町村のホームページを見ればきちんと書いてあります。
また同じ発信元の情報でも収集者が誤った理解をしてしまう場合もあります。そのため、情報を正しく理解し分析する能力も必要です。

不動産投資のフェイク情報についてもいずれ解説したいと思っていますが、まずは見聞きする情報をそのまま信じる前に、情報の真偽について確かめてみることをお勧めします。

※1 東京都主税局HP「軽減制度」
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/common/genmen.html#kei03

※2 国土交通省「令和元年空き家所有者実態調査」
001377049.pdf (mlit.go.jp)

【このコラムの著者】

橋本 秋人

FPオフィス ノーサイド代表
CFP®認定者、1級FP技能士、終活アドバイザー
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。
長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、
早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。
現在は、FP、不動産コンサルタントとしてコンサルティング、セミナー、執筆等の活動を行っている。

NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)副理事長
埼玉県定期借地借家権推進機構 理事
東京電子専門学校 非常勤理事

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