橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

令和4年の公示価格は上昇に転じる ~不動産投資の視点からどう見るか?~

3月22日に地価公示が発表されました。昨年はコロナショックの影響を受け全国的に地価は下落しましたが、今年は2年ぶりに上昇に転じました。公示価格の動向は不動産投資家にとっても関心が高い話題ですが、あらためて不動産投資においてはどのような見方をすれば良いのでしょうか。今回は東京圏を例に住宅地の価格にフォーカスし、不動産投資の投資先エリアの選定について考えます。

令和4年の公示価格・全体のまとめ

公示価格は住宅地、商業地とも2年ぶりに上昇しました。リーマンショック後、順調に回復していた地価も、昨年は新型コロナの影響で5年ぶりに下落しましたが、コロナ禍の中1年で回復したことになります。ただし下落が継続している県も多く、地価の二極化は進んでいます。

今回、回復が目立ったのは主に住宅地です。商業地に関しては東京圏、名古屋圏が昨年の下落率以上の回復を見せたのに対し、大阪圏では下落継続や横ばいで、引き続きコロナなどの状況を見る必要があります。
地方圏では、地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)は住宅地・商業地とも上昇した一方、他の地方圏は下落が続いている地域も多く、地価動向の二極化が進んでいるといえます。

上昇した住宅地の特徴は?

国土交通省では、地価公示の発表時にさまざまな関連データや詳細情報を公開しています。
まず、「住宅地の変動率上位順位表(全国)」では、全国の住宅地で変動率が高かった地点の上位100位が分かります。
今回は、なんと北海道の住宅地が100地点中96地点を占めました(北海道以外は福岡、沖縄、愛知、長野がそれぞれ1地点)。
ちなみに2年前(令和2年)の結果では、北海道が最も多いものの28地点、続く沖縄がほぼ同数の27地点、以下、福岡17、宮城13、愛知4、大阪と広島が3など分散していました。

今回14もの地点がランクインした北広島市はボールパークの建設などもあり別格ですが、同市を含め札幌近郊の相対的に割安で広い居住スペースの確保が期待できるエリアが多くランクインしています。都市として引き続き人気が高い札幌市と新しい生活様式がクロスした結果となりました。

実は100位以外を見ても、地価が上昇したエリアには次のような共通性が見られます。
・都心に比べて地価が割安な郊外=広いスペースの確保が可能
・都心にも通勤可能な距離
・再開発や新駅開業で街の活性化が期待できる
 ※都心は、ここでは東京に限らず都市の中心部のこと
これらのエリアは居住地域としての需要が高く、また中長期的に持続すると思われます。

地価上昇エリアは「トレンド」を反映

次に東京圏で地価の上昇率が高かった地点の上位10位の5年間の推移を見てみましょう。

コロナ前とコロナ禍では明らかにトレンドが変わりました。
2020年までは、東京23区が上位のほぼ全てを占めていました(ピンク色)。ところが、2021年からは顔ぶれがガラッと変わり、千葉、茨城、神奈川といった東京近県の自治体が上位を占めています(水色)。

いずれも都心に比べ地価が割安で在宅ワークや趣味のスペースが確保でき、かつ都心に通勤できる「ほどよい遠さ」のエリアです。こちらも北海道と同様、コロナ禍で浸透してきた「新しい生活様式」「おうち時間」といったトレンドの影響といえるでしょう。
トレンドは継続すれば、今後も有望な投資先エリアになります。そのためトレンドが長く継続しそうか、一過性のものかを見極めることは大切です。

なお、地価公示はいわゆる「買って住みたい街ランキング」の要素が強く、必ずしも「借りて住みたいランキング」を反映しているわけではありません。
ただし、「買って住みたい」と「借りて住みたい」がリンクする部分も多いため、今後の投資エリアとして注目してみても良いのではないでしょうか。

地価下落エリアは「実需」が影響

一方、地価の下落率が高かった地点の上位10位の5年間の推移は以下の通りです。

上昇率が高いエリアとは異なり、コロナ前後で顔ぶれがほとんど変わっていません。下落率が高い自治体の多くは、人口減少に加え世帯数も減少しています。
このようなエリアでは、よほど賃貸需要を喚起する大きな要因がないと、賃貸経営においてはリスクが大きくなると考えられます。

※出所:国土交通省HP「地価公示」

なお、同じ自治体でも上昇エリアと下落エリアが混在しているケースもあるため、森全体を見ると同時に木も見ていく必要があります。

地方移住・二拠点居住の影響は?

最近話題の地方移住や二拠点居住ですが、地価や入居需要に与える影響はほとんどないと考えられます。
その理由はどちらもボリュームが小さいことと、トレンドが継続しない可能性も考えられることです。また地方移住については、不動産購入を前提にするケースも多く、賃貸需要が大きく喚起される可能性は小さいでしょう。

いずれにしても、不動産投資エリアの選択においては、引き続き一定の市場規模、長く続くトレンドかどうかの見極め、入居需要の減退が少ないエリアの選択が基本になるでしょう。

今回の地価公示も、いろいろなデータに目を通しながら、投資検討エリアと重ね合わせるとヒントが見えてくると思います。

【このコラムの著者】

橋本 秋人

FPオフィス ノーサイド代表
CFP®認定者、1級FP技能士、終活アドバイザー
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。
長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、
早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。
現在は、FP、不動産コンサルタントとしてコンサルティング、セミナー、執筆等の活動を行っている。

NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)副理事長
埼玉県定期借地借家権推進機構 理事
東京電子専門学校 非常勤理事

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