橋本 秋人の不動産投資コラム

シリーズ連載: 実践派コンサルタントが見たFP的不動産投資事情

LIFULL HOME'S 不動産投資コラム

結局、「2022年問題」は賃貸市場に影響を与えるのか?

不動産投資に関心がある人であれば「2022年問題」に注目してきた人も多いのではないでしょうか。その2022年がいよいよ到来しました。果たしてこの「2022年問題」では何が起きるのか、また、賃貸市場にどのような影響を与えることになるのでしょうか。

生産緑地の約9割が特定生産緑地へ

2022年問題については、筆者も本コラムで2017年に「20××年、ノストラダムスの大予言はあるのか?」「『2022年問題』はソフトランディングするのか?」と2回にわたり解説しています。
コラムの詳細についてはお読みいただければと思いますが、前者は生産緑地の仕組みと2022年問題の影響について、後者は、2022年問題の対策として国が新たに設けた特定生産緑地などの緩和措置についての解説です。

今年2月、国土交通省は2021年末時点での特定生産緑地の指定意向の調査結果を公表しました。それによると、全体で86%の農地が特定生産緑地に指定済みまたは指定見込みとなっています。

特定生産緑地の指定意向調査結果(令和3年12月末時点)

出所:国土交通省「特定生産緑地指定の手引き」2022年4月

グラフの通り、86%が今後10年間は宅地化されず農地として継続される一方、指定の意向がない生産緑地はわずか7%でした。まだ決まっていない・把握していないという生産緑地が7%あり、最終的には特定生産緑地が9割を超える可能性もあります。
また、都道府県別に見ると、三大都市圏の生産緑地の4分の1を占め、2022年問題の影響も大きいとされていた東京都の指定・指定見込みは92%とすでに9割を超えています。

特定生産緑地の指定見込み(都道府県別・令和3年12月末現在)

出所:国土交通省「特定生産緑地の指定見込み(都道府県別)」

ざっくりと、当面「宅地化されない農地」が9割、「宅地化される農地」となるのが1割ということになります。

不動産市場への放出は30年前の25分の1

2021年末時点で、三大都市圏の生産緑地の面積は11,837ヘクタールありますが、このうち9割が特定生産緑地に指定された場合、「宅地化される農地」は残り1割の1,200ヘクタール程度と見込まれます。
30年前の1992年には、三大都市圏の特定市の農地約4.5万ヘクタールのうち、生産緑地に指定されず「宅地化される農地」となったのは3万ヘクタール強もありました。
今後1,200ヘクタールの農地が宅地として市場に放出されたとしても、その面積は30年前の25分の1にしかなりません。
予測されていた宅地の大量放出による地価の急激かつ大幅な下落も、現実味が薄れてきました。

また、東京都の生産緑地は約2,951ヘクタール、92%が特定生産緑地になると、10年以内に宅地として市場に出る可能性がある農地は8%の約236ヘクタールになりますが、これは1992年のなんと129分の1です。
東京区部に関しては、練馬区、世田谷区は生産緑地面積も大きいため宅地の供給増と若干の価格下落もあり得ますが、もともと23区の過半数の12区には生産緑地が存在しないため、当面は土地の在庫・供給不足による地価上昇も継続するでしょう。

また、賃貸住宅の供給増加についても、30年間の賃貸市場の変化に伴い大手の建築会社もエリアや規模を絞っており、無謀な賃貸住宅の建築は減少すると思われます。
これらのことから、2022年問題が賃貸市場に与える影響は軽微なものになりそうです。

結果的に国の対策、特に10年間の猶予期間がある特定生産緑地制度を設けたことも功を奏し、2022年問題のソフトランディングに成功したと言えるでしょう。

「ノストラダムスの大予言」の1999年7月のように、2022年も何ごともなく過ぎていくことになりそうです。

それでも賃貸市場の競争は激化する

4月15日に総務省が発表した人口推計では、昨年10月時点での1年間の人口減少は過去最大の64万人となっており、人口減少は11年続いています。
そして世帯数のピークも近々やって来るでしょう。
また、足元では金利の上昇も懸念されており、賃貸系においても経営体力の格差が広がると予測しています。
これからも進む賃貸市場全体の縮小と崩れる需給バランス、金利上昇などの環境の元で、生き残る賃貸経営を真剣に目指す必要性が増すでしょう。

【このコラムの著者】

橋本 秋人

FPオフィス ノーサイド代表
CFP®認定者、1級FP技能士、終活アドバイザー
公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー

1961年東京都出身
早稲田大学商学部卒業後、住宅メーカーに入社。
長年、顧客の相続対策や資産運用として賃貸住宅建築などによる不動産活用を担当。
また、自らも在職中より投資物件購入や土地購入新築など不動産投資を始め、
早期退職を実現した元サラリーマン大家でもある。
現在は、FP、不動産コンサルタントとしてコンサルティング、セミナー、執筆等の活動を行っている。

NPO法人ら・し・さ(終活アドバイザー協会)副理事長
埼玉県定期借地借家権推進機構 理事
東京電子専門学校 非常勤理事

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